編集部が選ぶ今月のZINE3冊。テーマは〈冬の植物と星〉冬の植物、赤い超巨星ベテルギウス。寒い日の一人をご機嫌に過ごそう

植物観察、薬草で冬のクスリ箱作り、ホットティーのアレンジ、肉眼で見える星をのんびり観察(毛布を忘れずに)。
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「フリーペーパーとジンの違いって、なんだっけ?」。ふと気になりググった(いまになって)。フリーペーパーはその名の通り無料で、主な掲載内容は広告。一方ジンは無料から有料まであり、広告はない。有料といっても数百円のものが多く、利益目的ではない作者が多い。世界一敷居の低い文芸で、ルールが存在しない世界一自由な文芸「ジン(ZINE)」。

今月紹介するのは「冬だからこそ」がテーマの3冊。冬の屈強な植物、薬草で作る冬のクスリ箱、冬の星座ガイドブック。自然界にある冬の薬草の効果は抜群らしい。そういえば小さい頃、ばぁちゃんにゆずのクリームを顔に塗ってもらったら、少しの間ぽかぽかしてたなあ。

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凍てつく寒さのなかで生きる。
冬の屈強な植物たち『Winter Wild

作った人:Kristyna Baczynski(クリスティーナ・バチンスキ)

Image via Kristyna Baczynski

極寒、多くの植物は葉を落とし、花は萎んでしまうことが多い。が、雨にも負けず、風にも負けず、雪のなかでも花を咲かせる植物がいるんだって。そんな冬に生命力を放つ植物を10種まとめたコミック風の図鑑ジンが、『Winter Wild(ウィンター・ワイルド』。冬の寒さを言い訳に家にこもってダラダラしがちなそこの君(そして筆者)、屈強な植物を見て英気を養おう(一緒に)。

———冬って、なんだか気が滅入っちゃう。昨日なんて一日中引きこもってたもん。

日が短くて薄暗いしね。3年前の冬、クリエイティビティも湧かず少し虚しい気分で毎日を過ごしてた日に、冬の植物について調べてみたんだ。そしたらモチベーションが出てきて、近くの森に向かって、そこで見つけた冬の植物たちを観察して、イラストを描いてみたんだ。

———そのとき描いたイラストに、植物の詳細を添えてジンにしたってわけだね。

ジンを作るにあたって、中古の植物本や古い植物ガイドを集めてリサーチしたよ。ジンはコンパクトだから、ポケットに入れて植物観察に持って行けるから、いいよ。

———ジンに載っているのは、近所の森だけでなく国外で見つけた植物もあるんだよね。

英国と南ヨーロッパ。寒い地域だから、冬の植物がたくさん見ることができるんだ。他の地域の冬の植物ジンも、もっと作りたい。このジンを読んだら、布団にくるまって冬を過ごすだけじゃなく、外に出てみるのもアリかなって思えるはずだよ。

———いろんな地域でたくさんの植物を観てきたんだ。そんななかから10種に厳選するの、悩んだんじゃない?

見た目が美しいもの、名前の由来に一風変わったストーリーがあるもの、植物自体に言い伝えや神話があるもの…を選んだよ。

———なかでも1番のお気に入り、聞いちゃお。

お気に入りは「コガネニカワタケ(シロキクラゲ属のキノコ。キノコ自体は黄色」。古い木に生える、不気味でぬるぬるしたキノコ。別名「Witch’s Butter(魔女のバター)」。私、魔女を描くのも好きなんだよね。

———うわぁ、黄色いキクラゲみたいだね。このキクラゲキノコにも通ずる、冬の植物の魅力は?

冬の植物の魅力は、寒くて暗いという厳しい環境で育つということ。冬を生きる植物のサバイバル方法には本当に感心する。ジンを読んでくれた人にも、冬の植物の素晴らしさが届くといいな。

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体も髪の毛も、いろんな調子を整えてくれる。
Winter Herbal Zine』で薬草の〈冬のクスリ箱〉作ってみる?

作った人:Nora Harrington(ノラ・ハリントン)

Image via Nora Harrington

薬草、薬用に用いられる植物のこと。専門の薬剤師が調剤する漢方とは違い、資格がなくとも個人が簡単な加工をして使用できる(時にはそのままでも使用)。『Winter Herbal Zine(ウィンター・ハーバル・ジン)』は、元・薬草農家が冬の薬草について綴じたジン。効能、レシピ、活用法などが詳しく書かれている。作者いわく、その「効果は抜群」らしいぞ。

———なんで薬草にハマったの?

25歳の頃、何を試しても体調が良くならなくて。そんな時、薬草を試したらエネルギーがみなぎって!以来、自然界のパワーに魅了されてさ。

———薬草を栽培する農家を営んでたんだってね。

2012年から植物を使って病気を治療するための勉強をはじめて、14年には地域支援型農業※で薬草の栽培を開始。でもこのビジネスは自分に合わなくて、結局辞めちゃった。地域支援型農業を営むなかで一番たのしかったのが、薬草の定期購入者に送るためのジン作りだったんだ。私がイラストとデザインを担当して、友人が薬草を使ったレシピの執筆や製本作業を手伝ってくれた。

※消費者が農家に代金を前払いし、定期的に作物を受け取る仕組みの農業ビジネス。

———農家をしながらジンを作ってたんだ。

定期購入者に送るだけでなく、オンラインや地元の本屋、ハーブ専門店でも販売してたよ。

———コンテンツは冬の薬草の効能、レシピ、活用法など内容盛りだくさん。

たくさんの人が〈冬のクスリ箱〉を作れるようになったらいいなって。農家を営んでいた当時の目標は「手と手を取り合い、みんなで美しい薬草のクスリ箱を作ろう」。薬草の使用法を知ってもらい、日常で実用的に使ってもらいたかったんだ。

———その効能やレシピ、少しだけ教えてもらっちゃおうかな。

霊芝(れいし)とカバノアナタケ(両方ともキノコの一種):
これらをティーポットに入れ熱湯を注いで飲むと、体の調子を整えてくれる。オートミルクを少し加えると、とってもおいしい。

エルダーフラワー(ヨーロッパ各地で初夏に咲く花の一種):
個人的に、免疫を高めてくれる最高のアイテムだと思ってる。ハチミツとオートミルクを加えてティーとして飲むのが好き。体調が優れないと思ったら、すぐに飲むのがベスト。

ツルドクダミ(中国原産つる性の草):
ストレス性の薄毛に悩んでいる人にオススメ。これはミネラルを血液に流し、新しい髪を作るために必要な栄養素をあたえてくれる。

———こうした知識を頭に入れておけば、市販の薬に頼らなくてもいいこともあるね。薬草の方が体にやさしい?

薬草は健康を促進するため、市販の薬は悪化を防ぐために使用する。どちらもそれぞれいいところがあるし、両方必要。でも薬草の方が慢性的な症状を抱えている人に適していることもあるし、サステナブルよね。

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「冬は赤い超巨星ベテルギウスがよく見える」
冬の星座ガイドブック(初級編)『Sparkling Winter Skies

作った人:Briley Lewis(ブライリー・ルーイス)

Image via Briley Lewis

米国に引っ越したばかりの頃、こっちの人は血液型ではなく星座で性格診断するのが多いことに驚いたっけ。そんな話はさておき。天文学者の作者が綴じた冬の星座ガイドブックが、『Sparkling Winter Skies (スパークリング・ウィンター・スカイズ)』。星座に馴染みのない人にも肉眼で観察しながらたのしめる、星の基本情報が詰まっている。

———天文学者なんだね。

UCLA(米国の名門大学)の大学院で天文学を専攻。太陽系外惑星の研究をしているよ。天文学者としての知識を共有することで、みんなが天文学に興味を持ってくれるといいなと思ってジンを作ったんだ。

———冬の夜空に見える星座のジン、素敵。

ジンでは冬の北半球から見える星の基本情報を綴っている。ほら、インターネット上の情報って多過ぎてよくわからなくなるでしょう。
地球は太陽の周りを1年かけて回転するから、夜空に映る景色は季節によって変化する。だから季節ごとの夜空についてのジンも出してるよ。

———春夏秋冬バージョンがあるんだ。四季によって比べてみるのもおもしろそう。いつ頃から天文学に興味を持ちはじめたの?

子どもの頃から。当時はよく裏庭から星を眺めてたな~。星って、夜空をナビゲートするためのランドマークみたいなものなんだよね。冬は特にオリオン座、おうし座、ぎょしゃ座を探してみるのがオススメ。

———冬の星座の特徴ってある?

冬とその他の季節の夜空との違いは、見上げれば一目瞭然。オリオン座はすごく高い位置にあるから綺麗だし、赤い超巨星ベテルギウス(オリオン座の一等星)がよく見える。

———星座を見るときって、やっぱり望遠鏡は用意するべき? 初心者だからさっぱりで…(笑)

特に何も用意しなくて大丈夫。肉眼でも十分見えるよ! 強いて言うなら、椅子とブランケットがあれば最高。

Eye Catch Image via Christine Liu
Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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