「もうVOGUEはいいんじゃない?」美の基準という“社会のシミ”を消したい。自主制作・広告一切なしで挑むインディペンデントマガジン

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自分らしさや美の多様性。無意識に眺めるSNSにはそんな主張をはらんだポストが毎日いくつも流れ、周りの誰かが毎日一度は話題にする時代になったとは思う。しかし一度社会に染みついた「美しさの基準」という名の“シミ”は、なかなか消し去ることができない。見た目が一番ものをいうファッション業界であれば、なおのことだ。

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もうVOGUEはいいんじゃない?」そうため息をつく女性がいる。ロンドン在住の写真家ロナン・マッケンジー(Ronan Mckenzie)だ。メインストリームファッション誌が掲げるいわゆる美の基準に真っ向から闘うため、自主制作で広告一切なし&圧巻300ページのマガジン『HARD EARS(ハード・イアーズ)』を昨年末に出版した。ちなみに、以前本誌で紹介した『A BLACK BODY』(黒人の多様性を写真に切り取ったシリーズ)も彼女だ。

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「気づいたの。どの雑誌を見ても、自分がアウトサイダーだって」。VOGUEやアメリカンアパレルなどの大手クライアントを相手にファッション撮影をしているロナンは、制作側の目線からこうも話す。
「ファッション誌の撮影に行けど、毎度“ニューフェイス”なんていわれる13、14歳の子たちがバレンシアガのスーツを着させられているわけ。そういう“人目を引くためだけ”のものに疲れちゃって」

 ファッション業界のリアリティを目の当たりにし辟易。そのはけ口かのように出版した第一号のテーマは「OLD(オールド):年齢」。ニューカマーが日々入れ替わり立ち替わり、若さに取り憑かれたファッション業界に疑問を投げかける。誌面には、彼女の一番の理解者にしてインスピレーション源である実の母の姿をおさめたのはもちろんこと、表紙を飾る黒人少年、アジア人家族のポートレイトなど、年齢も肌の色も民族も多様な被写体の姿が。今号では、彼女の作品のみでなく、売れっ子も無名も関係ない彼女の意思に共鳴した作家たちが寄稿して作られているのだ。

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 スラッとした手足にサラサラの髪、キメ細かい白い肌など、多様な社会においてもなおこびりつく社会の“シミ”に争うロナンは、今年で23歳。思わず「へえ、そんな若いの…」が口をつくかもしれない。年齢を聞いて抱いた先入観も、彼女が払拭したい“シミ”だ。

Hard Ears

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All images via Ronan Mckenzie
Text by Shimpei Nakagawa
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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