「ベッドルームでの嗜好やファンタジーを、思いっきり表現してください」
SMプレイにコスプレ、野外プレイ…。そんな一風変わったセックスを健全にたのしみたい人たちが真剣に恋人を探すためにつくられた「フェチマッチングアプリ」がある。毎日2,600万以上のマッチを生んでいる「ティンダー」や、レディファーストなマッチングアプリ「バンブル」とも一味違う。もっと“刺激を求める人”のためのマッチングアプリだ。
「SM好き、コスプレ好きに健全に出会える」マッチの基準は、己の“性癖”
人間の三大欲求のひとつ、性欲。程度に差はあれど、みな同様にあるものと言われている。性的快感の感じ方、つまり興奮するところも人それぞれで、世の中には少し過激な性的嗜好を持ち合わせている人も少なくはない。たとえば、SMプレイ、コスプレに野外プレイなどなど…。英大手コンドーム会社デュレックスの調査によると、米国では36パーセント、世界では20パーセントが、目隠しや拘束、マスクをかぶるなどのSMプレイの経験があるという。しかし。たとえばSMプレイを試してみたくても「そんな性癖への興味をカミングアウトして、理解してもらえなかったらどうしよう」という思いを理由に、留まる人は多いだろう。
そこで「最初から自分の“性癖”を公表した状態で、恋人探しをしてみては?」という、また一つ角度を変えた合理主義のマッチングアプリが登場している。昨年、米国の男子大学生兄弟によって開発された、オンラインマッチングアプリ「Waves(ウェイブス)」だ。
(出典:Waves Official Website)
マッチングアプリといえば、定番のティンダーやバンブルなどのように「プロフィール写真と自己紹介をもとに恋人探しをする」もの。しかし、ウェイブスが焦点を当てているのは「性癖」。ただおしなべた自己紹介をするのではなく、「性行為におけるフェチや好みを詳細にプロフィール化」し、それをもとに「アルゴリズムが似たような性癖を持っている人同士をマッチ」するという仕組みだ。マッチングが成立した後で、直接やり取りができるようになる。フェチにはアナルセックス、噛み癖、目隠し、首絞め、コスプレ、女装、SMプレイ、野外セックス、食べ物を使ったプレイなど、ピンからキリまで揃っている。マッチング方法は以下のようだ。
1、ウェイブスをインストールする。
2、アプリを開けると、25以上の性癖がずらりと並ぶページに。「あなたの性癖を5つ選んでください!」との指示が。自分の性癖を5つ選択する。そのあと、自己紹介プロフィールを作成。
3、アルゴリズムが選抜した候補者をスワイプ。候補者のプロフィールには「あなたと3つの性癖がマッチ」など、相手が自分の性癖をもっているかを一目で確認。晴れてマッチしたらメッセージの交換を開始。
デーティングアプリを利用する上で、多くの人が不安に感じているのがプライバシーの確保だろう。しかもウェイブスにおいては、性癖というハイクラスなプライバシーだ。「自分の性癖を不特定多数の人に見られるのはいやだ」と思うだろうが、自分のプロフィールの詳細は、自身で相手を許可するまで公開されないようになっているので大丈夫。
(出典:Waves Official Website)
謎のアイスクリームキャラがたびたび登場。性癖の“タブー”を“ポップ”に塗りかえる
これまでも、自身のフェチを充実させるセックスライフを送りたい人をターゲットに作られたマッチングアプリはいくつか存在している。たとえば「Feter(フェター)」や「whiplr(ホイップラー)」など。しかしこれらのアプリをのぞいてみると、色の基調は黒に赤。“SMにフォーカスしている大人の出会い系”といった感じで、少しアンダーグラウンドなアヤしいビジュアル。フェチ初心者には、少々敷居が高そうだ。
一方、ウェイブスのビジュアルは180度違う。「これ、子ども向けアプリなんじゃ?」って一瞬思っちゃうくらいのポップさ。ピンクやオレンジのパステルカラーに、たびたび登場する謎キャラのアイスクリームちゃん。性癖を選ぶ画面では「Choose your favorite flavors!(好きなフレーバーを選んで!)」と、あたかも、アイスクリームのフレーバーを選ぶようなノリ。蓋を開ければ、アナルだの野外プレイなど過激な内容なのだが、このポップな見た目が濃ゆい中身とのバランスを取っている。
また、ポップでかわいらしいビジュアルになったことで、フェチに興味がある女性が利用しやすくなったのではないかと思う。スマホにインストールされていても、まわりの人にはまさかフェチマッチングアプリだと気づかれることも少なそう。
気になってる人に「どんなセックスが好き?」「SとかMとかある?」とはなかなか聞きづらいし(性や恋愛関係に関する話題が超敏感なご時世ならなおのこと)、本気で好きなのに「セックスにばっかり興味があるのかな?」なんて思われちゃったら悲しい。交際をはじめてから、セックスについてオープンに話をすることもだいぶ勇気がいる。ましてや性癖となると…。ウェイブスは、フェチや性癖をもつ人の安全で健全なプラットフォームを設け、性癖を気兼ねなくオープンにできる居場所を提供している。
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Eyecatch Image by Midori Hongo
Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine