制作者は〈ホモ・ルーデンス=遊ぶ人〉。ソウル発、現代社会を生きる人類が忘れかけていた「遊び」をアート作品でもう一度

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韓国、首都ソウルのベッドタウンの一つである果川(クァチョン)市。市民の憩いの場・ソウル大公園に位置する国立現代美術館(The National Museum of Modern and Contemporary Art, Korea、通称MMCA)の果川館では、国際的に評価されている作家の作品から若手作家の作品まで、近現代の美術作品を中心とした所蔵品が並ぶ。その数、およそ9,000点だ。今週のSUNDAY ART SCROLLでは、そんな同館で現在開催中の展示『SWITCH THINGS UP』を紹介する。

本展『SWITCH THINGS UP』の日本語名は、『遊ぶもの』展。オランダの歴史家・文化理論家であるヨハン・ホイジンガが人類を「ホモ・ルーデンス=遊ぶ人」と呼んだことに由来している。ホイジンガの著書『ホモ・ルーデンス』では、「これまで人類が育んできた文化は『遊び』という行為から生まれたものであり、『遊び』こそが人類の本質である」とされ、さまざまなことの効率化が進む現代社会には人間が本来持っている遊び心を取りもどす必要性があると唱えられた。

本展では参加アーティストを制作者(maker)であるとともに「ホモ・ルーデンス=遊ぶ人」と位置づけ、アーティストたちの巧みな技術と素材の特性を生かした私的な「遊び」という行為とその作業プロセスを、美術館という公の場に持ち込んだ。イ・グァンホの『Obsession Series』やソ・ジョンファによる『Structure for use』は、ナイロン、PVC、アルミなどさまざまな素材を用い、「反復的」なプロセスによって構成される新しい分野のインスタレーション作品。ある行動の繰り返しによって作られる秩序を表現している。NOLによる本展の空間デザインも見所の一つである。展示会場は一面シルバー。作品を展示する壁や床もメタリック。会場丸ごと作品としてたのしめる。

見る人に新しい「遊び」の領域を再発見させ、「遊び」から離れた人類の生活がいかにつまらないものであるかを実感させる本展。大人になってからというもの、自分の生活のなかにおいて忘れかけていた「遊び」の側面を作品を通して、見つけてみたい。



Hyun Kwanghun, Heartbeat 3, 2021, brass,
120 x 100 x 55 (mm)


Lee Hunchung, Souvenir, 2016, glazed ceramic,
gold leaf, 812 x 61 x 61 (cm)


Lee Joona, Trace with the time, 2021, yarn, knitted band, dimensions variable


Lee Kwangho, Obsession Series, 2020-2021, nylon, PVC, electric wire, plastic, aluminum, sponge foam, dimensions variable


Shin Healim, As time goes rain falls-PLANE, 2021, thread, stainless steel, aluminum, Oregon pine, walnut, dimensions variable


Lee-Sangmin


MMCA Switch things up_Exhibition view


MMCA Switch things up_Exhibition view


MMCA Switch things up_Exhibition view


MMCA Switch things up_Exhibition view

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Text by Ayumi Sugiura
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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