鉄のカーテンの裏で繰り広げられていた。ソ連・アイロニーとブラックユーモアで塗りたくられたアート作品と表現

SUNDAY ART SCROLL -リアルタイムで芸術速報/世界の名画から新進気鋭クリエイター最新作まで、各地ギャラリーより「現在展示中(時々、ついこの前まで)」をお届け中。
Share
Tweet

米国のサウスカロライナ州。その州都であるコロンビアの活気あふれるダウンタウンストリートの角を曲がると、世界中からアートが集まる場所がある。コロンビア博物館(The Columbia Museum of Art)だ。今回紹介するのは、同館で開催されている『The Ironic Curtain -Art from the Soviet Underground-』。ソビエト連邦が崩壊する直前の数十年間、政治的抑圧の下においても、その反骨心を指先と筆先に込め続けたアーティストたちの作品に注目する。

ソ連が崩壊へと向かっていった1980年代後半。政府が市民をコントロール下に置くことを画策する傍らで、同展に見られるアーティストたちは芸術に自由を求め、独自の実験的なアートを秘密裏に生み出していた。その中には、ソ連の“公式な”アートを謳った作品もあったという。この時代に政治的な意味合いを帯びたアート作品を手がけることには危険が伴い、「国家に対する犯罪」であるとして投獄されたアーティストさえもいた。しかし、そのような抑圧に屈することなく創り出されたアートは、ワイルドかつブラックな機知に富んでいた。それらの作品においてソビエト政府のシンボルは、政府の権力を祝福するものではなく、皮肉にもその力をパロディー化するために使用されていたのだ。

同展で展示されている作品は、絵画や写真、彫刻など多岐に渡る。さまざまな姿のアートに埋め込まれているのはイデオロギー的なイメージであり、スターリンやレーニンなどの象徴的な人物が登場することもある。モスクワ生まれの写真家イーゴリ・ムキンの写真作品『Leningrad』は、街角でヒップな若者にシャッターを切ったものであり、 ロシアの現代アーティストであるフランシスコ・インファンテ・アラナの作品『Artefact』に見られる星のイメージはソ連の国旗を連想させる。

いままで社会に露出することが抑制され、ほとんど知られることのなかったこれらの作品の中には、今回の展示が米国初公開のものある。冷たき時代に生み出されたのは、決して冷ますことのできない創作欲を持つアーティストによる、確かに血の通った芸術だった。会期は9月12日まで。

Igor Moukhin
Russian, born 1961 Leningrad, from the series The City, 1987
Photograph
Collection of Neil K. Rector

Francisco Infante-Arana
Russian, born 1943 Artefact, from the series The Play of Gestures, 1977
Cibachrome print, edition 2/5
Collection of Neil K. Rector

Oleg Vassiliev
Russian, 1931–2013 Remembrance of Things Past, 1993
Oil and graphite on canvas
Collection of Neil K. Rector

Mikhail Ladeishikov
Sarkil (Worker’s Union), 1987
Photograph
Collection of Neil K. Rector

Mark Shteinbock
Russian, born 1944 Television Came to the Village, 1980
Photograph
Collection of Neil K. Rector

Vladimir Syomin
Russian, born 1938 Untitled, n.d.
Photograph
Collection of Neil K. Rector

Oleg Vassiliev
Russian, 1931–2013 Lusja with Tulips, 1967
Oil on canvas
Collection of Neil K. Rector

—————
Text by Iori Inohara
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

Share
Tweet
default
 
 
 
 
 

Latest

All articles loaded
No more articles to load