シンガポール郊外にあるデンプシー・ヒル地区。近年人気のこの観光エリアにあるカフェレストランSPRMRKTにて現在開催中なのが、シンガポールを拠点に活動する画家リーオゥ・ウェイ・リーの個展『Homemade』だ。モノの素材に強い関心を持つリーオゥが創り出す作品。その特徴は、材料の独創性だ。
柔らかな光が差し込む店内に飾られる16枚の正方形の絵画作品。キャンバスに乗る素材は、ただの絵具ではない。小麦粉、接着剤、ひまわりの種、米、石膏、木材、キャンドル、ローズティーの葉、石鹸、ターメリックパウダー、ナプキン、シャンプーなど。すべてシンガポールのスーパーマーケットや金物店で手に入る日用品から作られている。
どれも腹を満たしたり、身体をきれいにしたり、物を作ったり直したりするもの。毎日使うものなのに、それらに想いを馳せることは案外少ない。『Homemade』では日用品をアートへと昇華することで、日用品や日用品を生産する労働者への愛を辿り、あたりまえに消費する日用品を祝福する。リーオゥは2018年にもコーヒーパウダーで描いた絵画作品を制作したりと、日用品の重要性を探究している。
開催期間は7月12日までの予定だったが、8月2日まで延長決定。コロナ禍のいま、渡航はまだまだ厳しい状態だが、SPRMRKTのフェイスブックページでは本展の準備風景や作品のディテールを映した動画が閲覧可能だ。16枚の絵画作品から、アートとしての日用品のうつくしさを感じ取ってほしい。
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Text by Rin Takagi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine