スイス国立博物館を構成する三館のうちの一つ、プランジャン城。18世紀に建設されたこの城は、国内で一般公開される城のなかで最大を誇る。大きな家庭菜園が隣接する緑豊かな城内の美術館では現在、18世紀の愛と性に関する展覧会「『A Matter of Affinity – Love and Sexuality in the 18th Century』」が開催中だ。
今日のセックスといえば、子孫を残す行為にくわえ、自らの快楽や悦びを探求する行為として人々は大切にする。マーケティング用語にも「Sex Sells(セックスは売れる)」とあるように、経済にも影響力は大きい。いまから300年ほど前ではどうだったのだろう。教会の影響力が衰え、道徳が再定義されつつあった時代だ。性に関するものへの罰則や、善悪の境界線などが揺れ動いていたという背景がある。
同展では、スイスの歴史画家ルドウィック・ボーゲルの絵画や、スイスの彫刻家フランツ・アントン・ブステッリの陶器といった芸術や調度品のコレクションが公開。18世紀の愛と性のあり方や表現の仕方を暴いていく。
また興味深いのは、当時の書物から性のエキスパートたちをフィーチャーしているところ。たとえば生涯で1,000人の女性と夜をともにしたというヴェネツィアの作家ジャコモ・カサノヴァは、スイスでの旅路で経験した数々の性的な出会いを記録。さらにスイスの有名医師サミュエル・オーギュスト・ティソは書籍『オナニスム』にて、自慰行為の悪影響について医学的に記している。
プロテスタント主義により、夫婦間での性行為以外は犯罪とされていた17世紀。ポルノ作品の登場や、個人の思考・欲求を描くロマン主義が絵画に反映されはじめた18世紀。300年以上を経て、性に対する自由と歓びへの渇望はこうもさまざまに変化していったのだ。
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Text by Rin Takagi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine