「今日なに食べよう?」を、冷蔵庫の中身とただしく相談できる人。事前に隈なくチェックしてなお難しいこれを、スーパーにいってその場で「あれとあれはあるから、あとは…」とは、なかなか難しい。
さらにいま現在は、世紀まれに見る自宅待機や自粛が続く。スーパーの入場制限や、不必要な外出を控える風潮もあり、買い出しに行けば「とりあえず買っておこう」と買い物袋も重くなる。忘れていた食材が、冷蔵庫の奥から下からコンニチハ。キッチンの日の目を見ることなくゴミ箱へ…。そんな食材たちを救うため、冷蔵庫の食材管理を徹底し、余り物レシピを提案してくれるというアプリがあった。
冷蔵庫の中身を日々トラッキング
世界からなかなかなくならない社会問題「食料廃棄」。輸出入や、地方から都心へと食料が運ばれるあいだに傷み、廃棄物になってしまうなど、道中でのロスをいかにするかが改善の一つのキーといわれるが。過剰な仕入れがおこなわれるスーパーや、家庭での賞味期限ぎれでゴミ箱行きになる食料など、小さな売り買いも積み重なって大きなダメージとなる。たとえば米国では、国内の食料の最大4割は食べられることなく廃棄され、その要因には家庭で購入した賞味期限切れもあげられている。この家庭の食料廃棄が深刻で、米国人消費者1人あたりによる1日の食料廃棄量は約450グラム(サッカーボール1個ぶん!年間にして約100〜130キログラムという調べも。アメリカ合衆国農務省、2018年)。
賞味期限切れを解決するには、一人ひとりが買い物上手になるしかない。必要以上に買わない。しかしそれには、なにが必要なのかをきちんと把握することがまず必須だ。でもこれって実はなかなか難しい…。そこにもってこいのお助けアプリが、「Kitche(キッチ)」。2018年に創業した、ロンドン発の食料廃棄撲滅に全力をかけるスタートアップが開発した。食料廃棄を改善のために彼らが着目するのが「家庭のゴミ箱行きの食材」だ。無駄なくお買い物をすれば、食料廃棄も削減できるし、食費の無駄もなくせるよね、というのがミソ。
さて、どんなふうにキッチがヘルプしてくれるのか。買い物の内容と料理で使用した(ちゃんと食べた)ものを日々アップデートしながら、冷蔵庫の中になにがあるのかを把握し、なにを買えばおいしく食べられるのかを教えてくれる。ただし、そのためには自分での努力もそれなりに必要だ。
まず、買い物から帰ってきたら、レシートを撮影しキッチのアプリにアップロード。すると、アプリが食材情報を読み取り、カテゴリーわけ(乳製品、フルーツ、野菜など)をしてくれる。
食材を使うごとにリストを更新。「使い切った」「ほとんど使用した」「半分だけ使用した」「ちょっとだけ」と、細かく記録することが可能だ。そして、入力した消費期限が近づくと「この食材、あと〇日で期限切れです」というリマインダーを送ってくれる。
トマト+キノコ+モッツァレラチーズ=???
これまでも、食料廃棄を防ぐため、家庭の冷蔵庫の中身を管理してくれるアプリはあったが。キッチの最大の特徴は、「余った食材を組み合わせたレシピ」を提供してくれること。その数は、なんと1,000以上にも及ぶのだとか。たとえば、消費期限が迫っている「トマト」「キノコ」「モッツァレラチーズ」をリスト上で選択すると、即座にレシピ一覧が。「かりかりバジルソースとモッツァレラのベイクドマッシュルーム」「じゃがいもとトマト、モッツァレラのトルティーヤ」など、どれもおいしそう。もちろん、サラダなどのシンプルなレシピも教えてくれるから、凝った料理はちょっと苦手な人でも、無理なくたのしく食べられる。今日のご飯なににしようかな、に余りの食材の組み合わせで答えてくれるので、そこに必要なものを買い足すだけでちゃんと食べきることができる。
キッチ考案の背景は「食料の無駄について友だちと公園で話していたときに、考案したんですよ」だそうだ。だから解決策も、肩肘をはらずに「無駄なく買い物をして、ちゃんと食べきる」。「今日、なに食べよう」を、自分の家の冷蔵庫とただしく相談することで、食料廃棄を少しずつ減らしていく。
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Eycatch Image by Midori Hongo
All images via Kitche
Text by Aya Sakai, edited by HEAPS
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine