見える消毒液。感染予防の落とし穴「本当に消毒できている?」透明な消毒液を可視化する“青いハイライト”

50パーセントが消毒できていなかった。「ハイライトは、感染予防の新しい“基準”です」
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コロナウイルスの急速な拡大により、世界中の人々が改めて日々の生活における衛生面の見直しを試みている真っただ中。「いままで、私たちは衛生管理を正しくおこなうことができていたのか?」。そう再度考えさせてくれるのがニューヨーク発のスタートアップ「Kinnos(キノス)」。既存の消毒液を鮮やかな青にし、きちんと消毒ができているのか一目でわからせる“着色料”を開発する。

感染拡大や院内感染を防ぐ、“青いハイライト”

「消毒液が透明なのって、危なくないのか?」。2014年、西アフリカ諸国でのエボラ出血熱の流行。
 当時、ニューヨークのコロンビア大学で生物医工学を学んでいた学生3人組が、エボラ最前線で治療にあたる医師たちが大きなリスクを負っていることに気づいた。

 消毒液や漂白剤、アルコールが透明であると、消毒をほどこしても医師たちの着用する衣服がきちんと消毒できているのかがわからないということ。また、消毒剤を有効にするためには「接触時間」というものを取らなくてはいけないのが落とし穴だ。消毒剤は速攻的でなく、効果を示すには適切な一定以上の時間を経過させる必要がある。この時間が終わらぬうちに、消毒した部分を乾いたもので拭き取ってしまったり触ってしまったりすると、まだ生きている病原体が蔓延してしまう。

 そこで3人が思いついたのが、「消毒液に色をつける」というシンプルなアイデアだ。既存の消毒液に混ぜて使用する粉状の「ハイライト・パウダー」と、既存の消毒ワイプに液体で色をつけてくれるディスペンサー「ハイライト・ワイプ」を開発。色付きの消毒液を作るのではなく、着色剤を作ったため、汎用性が高い。色がついているから、物体に吹きかけた際、どこの部分にきちんと吹きかけられているか一目瞭然。接触時間が終わったら青が透明になるので、菌やウイルスがきちんと消毒されたことも確認できる。



(出典:Kinnos Official Website

 粉状のハイライト・パウダーは、エボラ大流行の際に、リベリアやギニア、ウガンダなどの現地で人道支援をする団体に実際に使用された。また、コロナウイルスが拡大する中国にも届けたという。

 一方、液体のハイライト・ワイプは、主に米国内の医療施設で導入され、院内感染の防止に一役買おうとしている。というのも、キノスによると、毎日、患者の25人に1人が院内感染をおこしているとのこと。この問題に打撃をあたえるのが、コロナウイルスの感染だ。米国内感染者は33万人を超え、死者は8,000人以上にのぼる(今年1月21日から4月6日現在までの合計数)。ただでさえ深刻だった院内感染という問題は、病院がコロナウイルス患者であふれかえっている状況で深刻化するだろう。そんな状況下で、ハイライト・ワイプは、院内感染を少しでも食い止めることに期待されている。


表面の50%はきちんと拭かれていなかった。消毒剤への過信と盲点

 キノスの創立者の一人、カン氏はこう話す。「消毒剤を吹きかけた表面の50パーセントは、きちんと吹きかけられていない、あるいはきちんと消毒されていないんです。消毒を強化するだけで、80パーセントの感染を防ぐことができると考えられています。これだけで、医療コストを数十億をも抑えることができます」。また「清掃の落ち度のほとんどは人為的なもの」であって「消毒は、自己防衛のなかで最も重要であるが、正しく使用するのは容易ではない」とも。

 コロナウイルスの感染経路が未だに不明なものが大多数を占めるなか、みんなができることは、それぞれの消毒。消毒剤を吹きかければ大丈夫という過信を、しっかりと拭い去る。

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Eyecatch Image by Midori Hongo
All images via Kinnos Press Kit
Text by Aya Sakai
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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