〈わたしの職場〉はこんなところ。働く女性、一人ひとりが「★」と「実体験」で評価。急成長する、女性の職場レビューサイト

大きなリサーチ結果からは見えてこない。大手企業から近所の小さなお店まで、”わたし”の評価。
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世界中の女性クリエイターと世界的ブランドを繋ぐウェブコミュニティ「ガールゲイズ・ネットワーク」に、女性起業家の企業のみキュレーションするVCサイト「ザ・ヘルム」。活躍する女性のためのウェブサービスは、ここ数年で急激に進化している。

ここに追加したいのが、女性のための企業レビューサイト「InHerSight(インハーサイト)」。「女性が働きやすい仕事環境か」を議題に、働く女性たちが、グーグルやアマゾンなど大手企業から、地元のデリやローカル店まで10万以上の“わたしの職場”を評価している。

この会社は「★★★★★」“ぶっちゃけコメント”も。女性のための企業レビューサイト

 2020年までに、わたしたちの働き方は一体どれだけ変わるのか。内閣府男女共同参画局は「2020年までに、指導的地位につく女性の割合を少なくとも30パーセント程度になるよう期待する」と宣言。米国では、女性参政権が認められてから100周年を迎え、女性のさらなる社会・雇用における権利平等に意識もさらに高くなる。そんな大きな動きはあるものの、日常茶飯で聞かれる女性の声はというと、「あれ、この会社、有給で産休取れないの?」「男性と同じ地位はで働けないんだ…」(米国の民間企業で有給の産休休暇を提供しているのは14パーセント。全米収入ランキング上位500社における女性のCEOはたったの4パーセント)。まだまだ改善の余地ありな現状では、一人ひとりの女性にとっての企業選びが重要になる。

「職場でのジェンダー格差を経験しているのは私だけなのかな?」
「もっと女性にやさしい職場はないの?」
「わたしのこの職場での体験を、他の女性とシェアできたらいいのに」

 そんな思いを抱く女性たちが集まるのが米国発企業レビューサイト「InHerSight(インハーサイト)」。2015年に同サイトをローンチした開発者兼CEOのウルスラ氏は、こう話す。「働く女性が最高の職場を見つけるための、レビューサイトをずっと探していたんです。トリップアドバイザー(旅行口コミサイト)やイェルプ(店舗レビューサイト)のようなアプリを。一向に見つかる気配がないので、作ることにしました」。


(出典:InHerSight Official Website

 使い方は、通常のレビューサイトと同じ。検索エンジンに知りたい企業の名前を入力すると、本拠地や業種、従業員数などの基本情報とともに、どれだけ女性にとってグッドな企業なのかが「★」で表示される。評価するのは、過去にそこで働いていた女性、あるいは現在そこで働いている匿名の女性ユーザーたちだ。
「給与満足度」「フレキシブルな勤務時間」「産前・産後休暇」「男女平等な機会があたえられているか」「女性社員がリーダーシップを取れる機会があるか」「家族ケア(授乳室など)があるか」など、15の指標にわかれており、これらの平均スコアとして星1つから5つでレートされている仕組みだ。

 登録されている企業は、フェイスブックやグーグルなど世界的企業から政府機関や非営利団体、大学などの教育機関、小さなコンサル企業まで、大中小を問わない。地元のデリショップ(個人経営のよろず屋)まで網羅する幅広さだ。19年時点で書き込まれているレビューはすでに10万社を超え、70万人以上のアクティブユーザーを持つ。

 ユーザーは、★での評価だけでなく、コメントを書きこむことも可能だ。たとえば、同サイト上で「平均スコアが高い企業14位」にランキングしている、ネットフリックス。★の数は3.9。まあまあの高得点。コメントには「4年半勤務しました。働くママとしてこんなにいい職場はなかった。自分がすべき仕事を終えられる限り、働く場所も時間もすごくフレキシブルだったから」「いままで働いてきた職場の中で、一番良い育児休暇制度が導入されていたと思う。あと、幹部のメンバーにも女性が多かった。ただエンジニア部門は、まだ女性が少ない印象だったかな」。従業員にしかわからない正直な意見だ。

 ちなみにアップルは星3.5、グーグルは星3.8。アマゾンは「育休・産休」の指標で3.8と高得点を獲得しているのだが、「フレキシブルな労働時間」の項目は2.6、「女性のリーダーシップ」も3.1とかなり低いため、全体スコアは3.0。コメント欄には、「女性社員が昇進することはかなり難しく、昇進しても女性のリーダーシップを尊重してくれません」「女性社員のアイデアがいかによく練られ論理的なものであっても、無視されたり却下されたりすることが多々あります」と厳しいお言葉が。平均された星の数からは見えてこない個人の体験から、一個人の女性の声が見えてくる。




特定の会社だけでなく、自分が重視する指標のスコアだけで検索もできる。たとえば、経営者を目指しているユーザーの場合。「マネジメント業務」の指標だけで絞って検索し、この指標のみで会社を比べることも可能。レビューを書き込みたい場合、またはこのサイトで公開されている求人情報を見たい場合だけ無料登録が必要。
(出典:InHerSight Official Website

#MeTooから登録企業数、急増。働く女性たちの“21世紀最大級の井戸端会議”?

 ローンチから約4年間で、働く女性の声が集まる場として浸透したインハーサイト。当初は登録企業数は数百から数千社ほどだったというが、2017年には3万1,000、18年には6万5,000と勢いよく成長し、現在は10万以上。「メディア露出やイベントでサイトを知った女性たちが率先してレビューしています。また先進的な企業は、自ら女性社員にレビューを呼びかけているところもありますね。それを踏まえたとしても、驚くほど急速に成長しています」。17年以降の爆発的な広がりの裏にあるのは、同年の終わり頃からはじまった「#MeToo運動」だろう。ツイッターという匿名の空間で、女性たちが次々と沈黙を破り、いままで自身が経験したセクシャルハラスメントを告白するようになったのがはじまりだ。毎秒2、3の#metooツイートが投稿されるという驚異のスピードで、女性コミュニティのなかから自然と広がっていった。同時期に、働く女性コミュニティ内でのオーガニックな情報拡散能力がサイトの拡大を促したのか。


(出典:InHerSight Official Website

 ちなみに、インハーサイトは一方通行にレビューを書く・読むだけではなく、プロフィール(匿名可)を作成してさまざまなキャリアで活躍する全世界の女性たちと繋がることができる。職場では押し殺している本音。職場の同僚には、話せない実体験や悩み。女性たちが自ら“わたしの職場”について情報共有する様子は、なんだか女性特有のカルチャー“井戸端会議”のようでもある。

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Eyecatch graphic by Haruka Shibata
Text by Haruka Shibata
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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