“農場から冷凍庫へ”の「ファーム・フローズン」って知ってる?働く女性の新しい冷凍食品

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冷凍食品は、健康によくないというのは本当なのか?「いいえ。冷凍でもファーマーズマーケットと同等の栄養価と鮮度を保つことは可能です」。そう話すのは、ニューヨーク在住の起業家で2児の母、レイチェル・ドローリ。彼女が立ち上げた、冷凍食品の定期購入サービスが意識の高い女性たちに支持されバカ売れしている。なんでも、消費者の冷凍食品への抵抗感「それさえなくなれば『時短』と『健康』の両立は可能」なのだという。

有名セレブも「冷凍フードポルノ」なスムージーをサポート!

 定期購入型のフードビジネス。そのビジネス自体に目新しさはないかもしれない。だが、激戦の定期購入フードサービスの中で急成長をみせているのは、消費者たちの何らかのニーズをすくいとっているからに違いない。人は「いいな」と思う感情に従ってモノを買う。そうした人の心を掴む価値ある体験をいかにして提供しているのか。

 ニューヨーク生まれの「デイリー・ハーベスト(Daily Harvest)」がユニークなのは、ヘルシーブランドを謳いながら、一見ヘルシーと相反する「フローズンフード(冷凍食品)」で勝負しているところだろう。

 スムージーブランドとしての創業したのは約一年半前、全米への配送をはじめたのは昨年から。オスカー女優のグウィネス・パルトローや、プロテニスプレーヤーのセリーナ・ウィリアムズといった有名セレブリティたちが投資したことで注目を集め、現在は、スムージーの他、冷凍のスープやサンデーなども提供する。

インスタに載せてもかわいい冷凍食品

 冷凍食品は手軽に食べられるジャンクフード。この「冷凍食品=健康によくない」という固定概念を覆すことが「もっとも大きな課題だった」と話す。冷凍食品のイメージを一新をはかり、ソーシャルメディアマーケティング、とりわけビジュアル戦略にも力を入れる。インスタグラムには、プロのフォトグラファーを雇いスタジオを借りて撮影したと思しきこだわり写真やGIFがずらり。フォロワー数はあっという間に100Kを越え、現在もその数を増やし続けている。

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こんなのも。

 レイチェル曰く、デイリー・ハーベストが提供する冷凍食材は「スーパーなどに陳列されているものよりも鮮度も栄養価も高い」のだとか。というのも、どんなに「地元で採れた」「オーガニック」の農作物も、「収穫されてから3日も経てば、栄養価は収穫してすぐに冷凍したものの3分の1以下に落ちてしまう」から。一方、デイリー・ハーベストは、旬の時期に収穫された野菜や果物を、農家で下処理を行い、すぐに冷凍しているので、ベストな状態から栄養も鮮度も落ちないのだという。また、冷凍することで細菌の繁殖を抑えることも可能だそうだ。
 とまぁ、冷凍食品の立場を全力で擁護する彼女なのだが、なぜ、そこまで冷凍食品推しなのか。その理由は「冷凍食品への抵抗感を拭うことで、劇的に効率的なヘルシーライフが手に入るから」だ。起業したばかりで、まだ彼女自身の手で商品を箱詰めしていた頃「私は妊娠8ヶ月目でした。また、いつもより忙しい分、十分な栄養も取らなければならない。けれど、毎週ファーマーズマーケットで生産者の顔を見ながらじっくり野菜を選んでいる余裕はなかった」と振り返る。せっかくファーマーズマーケットで買ったオーガニックケールも使い切れずに、冷蔵庫の中で萎れている—仕事や育児に忙しい「働く女性」は同じ悩みを抱えているに違いない。

 冷凍食品の粗悪なイメージを「忙しい生活を支えてくれるにパートナー」に変えていきたい。農家で収穫後にベストな状態で冷凍された食材を、「ファーム・フローズン(Farm-Frozen)」と称し、定期購入型サービスで冷凍食品の新しいブランディングを試みた。

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「農家からテーブルへ」ならぬ、「農家から冷凍庫へ」というブランディング

   

 イメージ戦略もさることながら、もう一つ、ブランディングにおいての決定打があった。それは、スーパーの冷凍食品コーナーに並べるのではなく消費者の自宅の冷凍庫へ直接届けるようにすれば「冷凍食品を購買する罪悪感から、消費者を解放できるのではないか」。ヨミは正しかった。
 
「サービスを利用さえしてもらえれば、商品の魅力を実感してもらえると信じていたので」。その言葉通り、スムージーが自宅で30秒で作れる便利さと美味しさがユーザーの間で話題になるまでに時間はかからなかった。

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 容器を開けて中身の冷凍食材をミキサーに入れ、ミルクを加えてスイッチを入れる。できあがったものを、また容器に戻して蓋をしてストローをさせば、そのまま飲みながら出勤することもできる。食材をいちいち洗って切る必要も、また残りの食材をジップロックにしまう必要もないうえ、味や栄養価はオーガニックのジュースストアでオーダーしてその場で作ってもらうものと同等。それでいて、外で買うよりも安い。スープなど他の商品もコンセプトは同じで、あらかじめ下ごしらえしてある冷凍食品を鍋に入れて煮込めば良いだけだという。  
 実際、彼女がいう「オーガニックでヘルシー」な冷凍食品は今までにもそれなりに存在していた。ただ、スーパーの冷凍食品コーナーに陳列されるか、されないかで、注目のされ方にここまで差がでたのは興味深い。冷凍食品をただのフローズンフードから“ファーム・フローズン”というヘルシーでオーガニックな聞こえにし、冷凍食品らしからぬビジュアルによって、いまどきの意識の高い女性たちを味方につけたインパクトの大きさも。

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Daily Harvest
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All images via Dairy Harvest
Text by Chiyo Yamauchi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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