子どもの頃に大好きだったあの味!健康志向の世代のシリアル「甘くてカラフルで健康的」とっておきの隠し味は、ノスタルジー

大人向けの、甘くて派手なシリアルのサブスクリプション。「“あの頃のあの味”を再現しつつも、現代の消費者が好むよう健康面を改善しました」
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砂糖たっぷり味◎、人工着色料たっぷり見た目◎。朝食の定番、だけど「体によくない」とのことで近年は人気下降のシリアル。だが。
「あのノスタルジックな甘い味を再現しながら、いまの消費者が求める健康的なシリアルの実現を叶えます」

健康志向ゆえに遠ざかった人たちに、もう一度食べてもらいたいと登場した新しいシリアル。味と見た目はそのままに、原料を厳選。あの頃のキッズ、つまり大人に向けた、“あの頃のあの味”。

砂糖・人工着色料・罪悪感無し。ノスタルジーに浸らせる、大人が欲するシリアル

 日本の朝食といえば白米と味噌汁であるように、米国の朝食といえばシリアルが定番だ。その証拠に、米国キッズは年間約100杯のシリアルを食べているという。シリアルブランドの代名詞と呼び声高いのが、ケロッグ社の「フルートループ(Floot Loop)」。甘くて癖になる味と、黄・ピンク・紫などのカラフルな見た目、心踊らせるポップでド派手なパッケージデザインは、80年代の米国キッズに大きな人気を博した(ケロッグの「チョコワ」は、日本でもCMでよく流れていたなあ。)

 しかし近年、米国でのシリアルの売上は下降状態。理由は当時のキッズたち、つまり現在のミレニアルズ世代がシリアルを食べない傾向にあるからという見方だ。食の安全に敏感で健康志向が強いミレニアルズは砂糖・人工着色料・炭水化物を多く含むシリアルよりも、栄養価の高いヨーグルトやスムージー、オートミールやグラノーラを好む。

 そこに昨年新しく登場したのが、「“あの頃のあの味”を再現しつつも、現代の消費者が好むよう健康面を改善しました」というシリアル「Magic Spoon(マジック・スプーン)」だ。シリアルを食べて育ったガビ・ルイスとグレッグ・セウィッツのミレニアルズ2人組が、1年以上をかけ開発した、大人向けの“ノスタルジーに浸らせるシリアル”。懐かしい、は空腹に劣らないほどのおいしいスパイスになるのだ。

 味はフルーツ、フロスト、ココア、ブルーベリーに加え、先週新たに仲間入りしたピーナッツバターとはちみつの6種類。大人たちが離れていったかつての看板シリアル、先述のフルーツ・ループは原料に砂糖や人工着色料が使われているのに対し、マジック・スプーンは砂糖も人工着色料も一切不使用。さらに、従来のシリアルに比べ低炭水化物、低カロリー、高タンパク質。また、グルテンフリーでグレインフリー(穀物不使用)だから、穀物アレルギーの人でも食べられる。

 甘さもデザインも控えめなグラノーラやオートミールと違い、マジック・スプーンは体にわるそうな甘さも、あの頃のド派手なパッケージデザインも健在。タコにまたがる男性やゾウをおぶる女性など、ユニークなキャラクターがカラフルに描かれる。箱を開けてボウルに入れるときのあのワクワク感も、当時のままなのである…!

 ウェブサイトのレビューには「晩ご飯にシリアルを食べたのは大学生ぶり。それくらい美味しい(栄養士)」「家にあるのはマジック・スプーンだけ。このおいしさは他ブランドとは比べものにならない(ウェルネス企業の創設者)」と上々の様子。その人気は、発売後数週間で在庫切れになるほどだったという。

スーパーに行かずとも、毎月玄関に届くシリアル

 マジック・スプーンが買えるのは、月額制のサブスクリプションでのみ。スーパーに行かずとも毎月玄関に届くから、忙しい社会人にも栄養が偏りがちの若者にもうれしい。

 月々35.1ドル(約3,800円)で、4箱届く。1箱約9ドル(約1,000円)と、従来のシリアルの倍という攻めた値段設定。だが、一食あたりに換算すると1.25ドル(約134円)。ランチでサラダに10ドル(約1,100円)払う米国のミレニアルズからすれば、「健康面でもOKだし」と納得の値段だといえる。大人になったいまだからありつける極上のシリアル感があってまたよし? 

 子どもの頃に好きだった味というのは、たとえそれが不健康極まりなくとも代えのきかない“おいしい体験”を持っている。そういえば以前、クラフト・フードが急増したときに、ピザ、ハンバーガー、サンドイッチ、カップケーキ、ドーナッツなど、共通点は「米国人が子どもの頃から慣れ親しんでいるコンフォートフード」であるという持論があったっけ。昔慣れ親しんだ味を、大人になったいま「よりおいしく食したい(そして、健康的に)」という心理が働いている、と。

「おふくろの味」が、この国(米国)では「スーパーの味」「ドライブスルーの味」であり、それはとりもなおさず化学調味料と防腐剤を駆使して最新鋭の大量調理機器で急速(インスタント)にこしらえた人工加工食品なのだ。つきつめると、クラフト・フードとは、アメリカ版「おふくろの味」(加工品)を一度分解して、材料をなるべく天然に戻し、「手作り再生した料理」に他ならない。
記事▶︎今ふと、クラフト より。

 読者諸君がノスタルジーに駆られる味とは何だろう? 筆者は、エースコックのワンタンメンです(卵を入れると尚良し)。

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Eyecatch Graphic via Midori Hongo
Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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