300万人のドライバーの生活と、国の空気を変える。国民の足「バイクタクシー」の電動化ですすめる、東アフリカの前進

まずは、今日明日のこと。アフリカ、300万人の一人ひとりの生活を変えていく、電動バイク。
Share
Tweet

主要な交通手段が、「バイクタクシー」の国で。アフリカの都市や暮らしの向上を見据える”アフリカ発・アフリカのためのスタートアップ”が着手したのは、首都から縦横無尽に走るバイクの「電動システム化」だ。排ガスを減らすという環境観点の目的もあるが、それ以前に、東アフリカにおける300万人のバイクタクシーのドライバーたち一人ひとりの生活向上がかかっている。

バイクタクシー運転手の収入を、いままでの2.8倍

 舞台は、アフリカ大陸の中心から少し東(東アフリカ)に位置する内陸国、ルワンダ。映画『ホテル・ルワンダ』などで描かれる内戦や虐殺、紛争というイメージが強くあるが、今回は国民の生活シーンに目を向けてみる。
 まず目に入るのが、道を縦横無尽に走る「バイクタクシー」。その名の通り、乗客が運転手の後ろに乗車し、目的地まで連れて行ってもらうバイク版タクシーのこと。ルワンダだけでなく東アフリカの近隣諸国でも一般的な交通手段で、これを収入源に生計を立てる人は多い。同一帯で、バイクタクシー運転手は300万人ほどいるといわれている。

 タンザニアではピキピキ、ウガンダではボダボダという呼び名で、渋滞の合間や狭い道もお手の物。歩くのには遠いな…という目的地へは、電話一本で運ちゃん登場。近年では、“バイクタクシー配車アプリ”が激戦を繰り広げている。

 ルワンダに話を戻そう。同国では「モト」と呼ばれるバイクタクシー(運転手は「モーターズ」)は、街中をうじゃうじゃ走り、道路にある乗り物の半分以上はモト状態。首都キガリを走る台数は約2万から3万で、その数はニューヨークを走るイエローキャブの数より多い。となれば、バイクのおもな燃料であるガソリンの排気量が凄まじいことは想像に難くない。長年の問題視の末、昨年2019年8月には同国のポール・カガメ大統領により「国内すべてのバイクを電動式に移行する計画」が発足され、現在進行中だ。同年に創立したルワンダ発の電動バイクタクシースタートアップ「Ampersand(アンパーサンド)」も、そのミッションを背負う。すでに政府から「5,000台の電動バイクを走らせること」という課題をあたえられている。アンパーサンドの電動バイクは充電式で走行するため、ガソリン式と比較すると、温室効果ガスの排出を約75パーセントも削減することが可能だ。


(出典:Ampersand Official Website

「ルワンダをはじめとする東アフリカの300万人のモーターズ(ドライバー)たちのために、手の届く電動車と充電システムを作ることです」。1台1台のバイクを電動式へと変えていくことで環境問題の解決へ貢献するアンパーサンドだが、ここで注目したいのは、電動バイクが実現する「モーターズの生活向上」。削減しているのは排気ガスのみならず、「モーターズが日々、負担していたコスト」もなのだ。

一日走った稼ぎ、約195円。生活費は185円

 まず、ルワンダの国民の生活状況を見てみよう。ルワンダにおける平均的な生活にかかる費用は、1日に約185円*、年間にして約7万5,000円。これに対し、モーターズが走らせるガソリン式バイクにかかる燃料費は1日に約540円。ここにバイクのレンタル代がだいたい650円かかるため、モーターズの手元に残る額は、稼ぎから差し引いて1日たったの約195円(年間、約5万3,600円)。一日めいっぱい仕事をして今日を暮らせる、という状況だ。

*1994年の大虐殺以降、カガメ大統領の改革により、ルワンダの経済は徐々に回復を遂げているものの、いまだに貧困から脱することができていない。

 ここにて救世主アンパーサンドの登場だ。同社の電動バイクであれば、走行後には街に設置される「バッテリー交換所」で新しいバッテリーを受け取ればいい仕組みで、燃料費だけでも一日約300円が浮く。年間にしておよそ約9万7,000円を抑えることができる。バイクのレンタル代もガソリン式のものと比べて1日215円ほど安い。して、アンパーサンドのモーターズの一日あたりの収入は1日470円、年間15万円ほど。つまり、ガソリン式のバイクでモーターズをするよりも、2.5倍から2.8倍近く稼げることができるのだ。

 電動バイクはレンタルのみならず、購入することも可能(長い目でみればより経済的)。また、一度で約60キロメートルの走行が可能で、これはガソリン式のものより長距離となる。燃料交換の頻度も下がれば、お客を取る効率化も計れる。ドライバー自身の工夫次第で、さらなる生活向上の設計も期待できる。


(出典:Ampersand Official Website

 国のおもな交通機関であり、多くの人々の収入源であったにも関わらず、これまであまり改善がなされていなかった様子の東アフリカ・バイクタクシー市場。アンパーサンドの進出により、ガソリン式バイクから電動バイクへの移行は、首都のキガリで20台ほどだが(2020年2月時点)、今年中には500台まで増やす見通しだ。アンパーサンドのバイクは、口コミのみで1,300人ほどに伝わり、現在7,000人ものモーターズが順番待ちであるほど評判上々。近い将来、ウガンダとケニアにもサービスを拡大する予定だ。

「アフリカを前進させるため、電動バイク市場を大衆化したい」。いまの時代、会社や団体の活動や製品に、環境問題への配慮はマストだ。アンパーサンドは、その時代の要求に応えるとともに、その現場の担い手となるモーターズの今日明日の生活を向上させる。それはすなわち、地に足を着けながら大きな視野で、“アフリカの前進”を加速させている。

—————
Eyecatch Image by Midori Hongo
Text by Aya Sakai
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

Share
Tweet
default
 
 
 
 
 

Latest

All articles loaded
No more articles to load