北極に六角形の氷をつくる。1ヶ月で25メートルプール1個分。ホッキョクグマや生態系を守る巨大製氷プロジェクト

現在計画段階。実現すれば、六角形の氷が北極海に浮かび、ハチの巣のように連なって氷河となる。
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氷河が溶けている北極に、巨大な製氷機で「氷」をつくろうという試みのアイデアがあるらしい。気候変動の影響により進んでいるとされる北極の氷河の融解を食い止めたいということだが、果たしてどれだけ現実的なのか。

1ヶ月で25メートルプール1個分。氷をつくる潜水艦

 例年より暖かい日が多く、温暖化の進行を痛感する。調査によると、早ければ2030年には世界の平均気温は1.5度上昇するという。たかが1.5度、されど1.5度。これにより、世界中の海洋環境を支えるサンゴ礁は最大99パーセント減少すると予測されている。そして、気温の上昇がダイレクトに影響を及ぼすとされるのが、北極の氷河の融解問題。

 地球上でもっとも温暖化が進むとされるのが、北極だ。そしてそれは、氷の融解に直結するといわれている。すでにこの10年間で、毎年2520億トンの氷が溶けている(これは、90年代に比べて7倍の量だという)。そしていま、「20年後には消滅するのでは」と予想されている。

 氷河が溶け、海氷が減ることによって大打撃を受けるのが北極に生きる動物たちだ。海氷のうえで狩りをするホッキョクグマは十分に狩りができなくなり、ここ10年で約4割減少。ナショナルジオグラフィック誌による「餓死寸前のホッキョクグマ」の動画で衝撃を受けた人も多いだろう。
 他にも北極の生態系の多くが絶滅危惧種に指定されている。ホッキョクギツネや太平洋セイウチ、シロイルカやシロハヤブサなど、多くの動物が段々と命を落としている。

 これまでにも北極の氷河融解問題にはさまざまな案が出されてきたが、新たに登場したのが「巨大な氷をつくる」アイデア。海水で人工的に氷河をつくり、北極の生態系を救おうという試みで、インドネシアの科学者チームが昨年、「Re-freeze the Arctic(リ・フリーズ・ザ・アークティック、北極圏を再凍結、とでも訳そう)」プロジェクトを開始した。



(出典:ASA EXPERIMENTAL DESIGN COMPETITION Official Website

 氷河づくりに用いるのは、上部に六角形の巨大タンクを設けた特殊な潜水艦。こんな感じで氷をつくって浮かべるのだという。

1、潜水艦が水面下に沈み、六角形のタンクに海水を汲み取る。

2、タンク内で塩分を抽出し、巨大冷凍機で凍結させる。完成すればそのまま北極海に放流。

 約1ヶ月をかけ、直径25メートル、厚さ5メートル、2,027立法メートル(学校にあるプール1個分ほどの大きさ)の巨大氷河がつくれるという。同プロジェクトは昨年タイで開催された、環境保護の観点で建築設計のコンセプトアイデアアイデアを競う「ASA国際デザインコンペティション2019」で第2位を受賞。現在はまだプロトタイプの段階だ。

でも、「潜水艦1,000万隻が必要です」

 このプロジェクト、アイデアとしては斬新で興味深いのだが「現実的なのか?」という疑問の声も多い。というのも、現段階では潜水艦の移動や氷河をつくるのに必要なエネルギーは未発表。二酸化炭素の排出量や電力の供給方法など、不明点が残る。あくまで現段階では「北極の生態系を救う」により焦点をあてたアイデアに留まる印象だ(余談だが、インドネシアのメディアでは政治的話題や宗教論争が報じられることが多く環境問題はあまり取り上げられないため、気候変動に関心を持たない人口が最多の国の一つ)。

 過去40年で溶けたぶんの氷をつくろうとすれば、約1,000万隻というおびただしい数の潜水艦が必要になるとの指摘もある。1,000万隻つくるって大変だし、北極の環境やらエネルギー問題やら別の問題も出てきそうな。しかしながら、巨大製氷機で氷をつくって海に漂わせ、氷河を復活させていこうというアイデアはすごい。これはもう少し未来に、巨大製氷のアイデアがさらに磨かれることを期待しよう。

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Eyecatch Image by Midori Hongo
Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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