WeWorkのリテール版が登場「オンラインブランドのシェア小売店」ネット界の“いま”を実店舗で再現

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目指すのはシェアオフィス大手WeWork(ウィーワーク)のリテール版!」。キャッチーな宣言とキュートなルックスも然ることながら、日本円にして約2.4億円のシードファンディングに成功したことでも注目を集める、シェアリテールのスタートアップ「ブリティン(Bulletin)。そのサービスは、実店舗を持たないオンラインブランドのために、人通りの多い目抜き通りのリテールスペースを確保し、月単位で貸し出すというものだ。

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Bulletin CCO, Ali Kriegsman(アリ・クリエグスマン、26)

オンラインブランドのための、おしゃれな“シェア小売店”

 実店舗を持たず、あえてオンラインのみを貫いて、時々、ポップアップを行う。それが「いまっぽく」「クールなスタイル」だったりするのかと思いきや…。「実店舗販売、できることならやりたいですよ。ただ、スペースの賃貸料はどこも高すぎるし、要求される契約期間も長い。それに、従来のフリーマーケットも微妙だし…」。そんなブランドの声を汲み取ったのだという。

 昨年11月にオープンした元祖ヒップスターの聖地、ブルックリンのウィリアムズバーグの一号店を皮切りに、マンハッタンのトレンド発信地ソーホー(ポップアップ終了)やノリータといった人通りの多い人気エリアに路面店を次々とオープンさせている。

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 ミレニアルピンクとホワイトを基調にしたフォトジェニックなショップには、アクセサリー、キャップ、Tシャツ、スリッパ、バイブレーターなど、常時約40ブランドのカラフルな「小物」がズラリ。これらはすべて実店舗を持たないオンラインブランドの商品だ。

 パッと見は、近隣のお洒落なセレクトショップのよう。だが、彼女たちは「ブランドのキュレートはしますが、そのブランドがブリティンにどの商品をディスプレイするかや、それをいくらで販売するかといった決定権は各ブランドに委ねています」という。少量ながら店内での在庫も管理しているので、ショールームストアとは異なるが、ブランドのオムニチャネル戦略を支援している点では似ているかもしれない。ミッションはあくまでも「オンラインブランドの成功する確率を高めるためのプラットフォームを提供すること」。顧客の目に触れさせ、見ていいと思った商品に「即座に手に触れる機会」を創出する。

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 ブランドは、ひと月300ドル〜(約3万3,000円)と、ひと月単位でスペースをレンタルできるので「新商品をリリースしたとき」や「ホリデーシーズン中だけ」といったフレキシブルな使い方が可能だ。ちなみに、ニューヨークで人気の某フリーマーケットの1ブースのレンタル料は、週末2日間だけで150ドルから(約16,500円)となっている。各ブランドの売り上げの20パーセントはブリティンに、10パーセントは人工妊娠中絶や避妊薬の処方などを行う医療サービスNPOに寄付される。

どうやって人気エリアの路面店を確保しているのか?

 気になるのは、スタートアップでありながらニューヨークの人気エリアのバカ高い路面店を、どうやって確保しているのかだ。「私も最初は難しいと思っていたんですが、都市部の不動産って、意外と知られていないことが多くて」。そう話すのはCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)のアリ・クリエグスマン(26)。
 なんでも、人気エリアの賃料は高額すぎて、一度空きが出ると次のテナントの長期契約が決まるまで、数ヶ月から1年ほど空っぽの状態が続くことも少なくないのだそう。「ブローカーも、空き状態にして物件の価値を下げてしまうより、うまく活用して物件の価値をあげたい。なので、私たちのような、短期でも良いので人通りの多い路面店を探している、という企業に低料金で貸してくれるんです」。
 
 今後、シードファンディングで獲得した約2.4億円を使って、今年中にニューヨーク内にもう2店舗、来年3月までロサンゼルスにも2店舗をオープン予定だ。

「最初はEコマース狙いだったんだけど」

 CEOのアラーナ・ブランストン(30)とアリは、サイドプロジェクトとして、元々はオンライン雑誌のビジネス化を考えていた。その内容は「ハンドメイドの小物を月に6つキュレートし、カッコいい写真とインタビュー記事を作成してeコマースに繋げる」というものだった。だが、二人は早々に「必要なプラットフォームは、飽和状態のEコマースではなく実店舗だ」と判断。まずはキュレートしたオンラインブランドを集め、週末に駐車場でフリーマーケットを行い「従来のフリーマーケットをどう改善できるかを探りはじめた」。

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 結果、ビンテージのブースの横に、キャンドル屋があって、その横にビーフジャーキー屋があって…という無法地帯だと「作品の良さもクラフターの魅力もわかりにくく、お客さんもぼんやり通り過ぎてしまう」。オンラインショッピングに慣れたデジタル世代にとって魅力的なリテールとは「ここにいくと、どんなものがみつかるか」がある程度明確であり、さらに、「オススメ機能」のように類似商品もみれるとなお良い、と分析。こうしてトライアンドエラーを繰り返して生まれたのが、各店舗ごとコンセプトを明確にしたシェアリテールだ。

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「数日前のツイッター発言」アイテムが店頭に。ネットのスピード感を実店舗で

 現在、「フェミニズム」を店のコンセプトにしているのは「タイムリーだから」と話す。「一号店をオープンしてすぐ、まさかの大統領選結果に唖然。女性として一致団結して声をあげる必要性を感じたから」。

 店内には、リベラルな女性の心を代弁してくれるメッセージ性の強いTシャツなどがあるのだが、特筆すべきは、たった数日前に物議を醸した大統領のツイッター発言を皮肉ったロゴアイテムがすでに店頭に並んでいることだ。ブランドの作り手と密に繋がっていなければ、こんなタイムリーな商品展開は難しいだろう。つまり、彼女のいう「タイムリー」とは単に、流行に敏感だということではない。世の中のいま、この瞬間を見極めてセレクションをしている、という意味なのだ。ネットの世界のスピード感を実店舗でも再現する。今日の時点では無名のブランドでも、もし明日、ひょんなことからセレブリティがリグラムでもすれば、翌日には完売し生産が追いつかなくなるご時世だ。店頭の商品が明日には金に化けるかもしれない。

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 彼女たちが積極的に募集しているのは「ソーシャルフォロワーをすでに持っているブランド」で、そのフォロワーたちをブリティンの実店舗に呼び込めたら、と話す。とはいえ、具体的なSNS上のフォロワー数の要求はなく、1Kに満たないブランドもあれば、50K以上のフォロワーを持つブランドも混在している。それは「何が売れるか未知数だから。時にフォロワー数より時事に合っていることの方が重要になったりもしますので」。

Interview with Ali Kriegsman from Bulletin

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Photos by Kohei Kawashima
Text by Chiyo Yamauchi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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