凸凹とシワはアイデンティティ! 犬“鼻認証”で、迷子と盗難から見つけ出す。愛犬の鼻をスマホでスキャンしておこう

スタートアップの活動や新しいプロジェクトから読みとく、バラエティにとんだいま。HEAPSの(だいたい)週1レポート
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新しいプロジェクトからは、バラエティにとんだいまが見えてくる。ふつふつと醸成されはじめたニーズへの迅速な一手、世界各地の独自のやり方が光る課題へのアプローチ、表立って見えていない社会の隙間にある暮らしへの応え、時代の感性をありのままに表現しようとする振る舞いから生まれるものたち。
投資額や売り上げの数字ではなく、時代と社会とその文化への接続を尺度に。新しいプロジェクトとその背景と考察を通していまをのぞこう、HEAPSの(だいたい)週1のスタートアップ記事をどうぞ。

パンデミック以降、リモートワークにおける家電消費の拡大やリモート教育の格差、自主隔離下の孤独のなど、さまざまな課題が発生したわけだが、実はこんな問題も多発していた。それは「犬の迷子」と「犬の盗難」の増加。そして開発された解決策とは「犬の鼻」で彼らを探し出すこと。

指紋ならぬ“鼻紋”。スマホひとつで迷子犬を見つけ出す

 パンデミック生活に疲れ、癒しを求めペットを飼いはじめた人は少なくないだろう。しかしこの飼い犬や飼い猫の増加に伴い、ペットの盗難件数がいま世界中で増加している。

 英国ではロックダウンの開始以来、犬の盗難が170%も増加(Dog Lost、2021年)。2月にはレディー・ガガの愛犬2匹が強奪されたニュースが話題になっていた。そういえば今年は、街中やインスタグラム上で目にする「Lost dog(迷子犬)」ポスターがやけに多かった気がする。米国では毎年約1,000万匹のペットが迷子や盗難に遭い、数千匹が動物シェルターに送られているが、こうしたペットの迷子や盗難が深刻化しているのだ。

(出典:NOSEiD Official Website)

「すべての犬は、飼い主にとってかけがえのない特別な存在です」。こう話すのは、米国のペットケアブランドIAMS(アイムス)。今年4月にテネシー州のナッシュビルで、増加する盗難や失踪から愛犬を守るアプリ「NOSEiD(ノーズアイディー)」を開発した。

 同アプリのキーになるのが、指紋ならぬ「鼻紋」。鼻紋とは鼻の紋様のことで、人間の指紋と同様2つとして同じものが存在しないため、個体を識別できるのだという。その鼻紋をスマホアプリで認証する鼻認証機能を用いて、迷子犬を見つけ出し、飼い主のもとに返す。

 飼い主は、アプリをダウンロードし愛犬の鼻紋をスマホカメラでスキャンして、犬の特徴や自身の飼い主情報を含めて登録しておく。すると、他のアプリユーザーが街で迷子犬を見かけたら、同アプリで犬の鼻をスキャンし、アプリ内に該当する情報があれば飼い主を特定できる。
 なるほど、愛犬をもつ飼い主同士、犬をケアする人たちのネットワークや協力があってこそ成り立つ仕組みのようだ。
 
 ここで気になるのが、その正確さ。人間の顔認証技術においては、特に有色人種や女性の誤認識率が高いという問題が指摘されていた。鼻認証にも犬種によっては誤検知がありえるのか..? どうやらその心配は極めて低そうだ。犬の鼻のしわは誤検知を回避できるほど独特で、ノーズアイディーではしわの深さ、位置、向きをそれぞれ分析し検出してくれる。あのデコボコに、そんなにアイデンティティがあったとは。

 迷子犬特定サービスはほかにもある。首輪にIDを付け、迷子犬を見つけた他ユーザーがアプリで首輪のIDをスキャンし、犬の飼い主を特定する「PetHub(ペットハブ)」や、失踪したペットの特徴や行動習慣を手掛かりにペットを探し出す非営利団体「Missing Animal Response(ミッシング・アニマル・レスポンス)」。近年では、盗難や迷子防止に犬の体へのマイクロチップの埋め込みなども進むが「ペットが可哀想」「費用がかかる」などの理由から、なかなか普及していないのが現状。また、首輪のIDスキャンで見つける盗難と迷子防止対策もあるものの、首輪が紛失してしまえば追跡できない。それに対し、ノーズアイディーはスマホだけでできる手軽さと、犬個体そのものを特定し追跡できる点においても、利便性・信頼性ともに高いといえる。アプリストアには実際に「このアプリで我が家の犬が見つかった!」との声も寄せられている。

飼い主じゃなくても。コミュニティで犬を守る

 このノーズアイディーのアプリは「コミュニティリソースとして設計している」という点も興味深い。犬を飼っている人だけでなくコミュニティの人々が広く利用することで、生活地域内の迷い犬を事故や盗難に遭わせることなく飼い主と再会させることができるのだ。現在アプリはベータ版でローンチエリア付近のみ対象地域だが、今後、拡大していく予定だ。
 近所の子どもたちをコミュニティ全体で見守るように、近所の犬たちもみんなで見守る。犬と暮らす人にとって、安心できる暮らしとは、無論、愛犬だって含まれるのだから。

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Eyecatch Image Illustration by Kana Motojima
Text by Ayumi Sugiura
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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