開館から89年ものあいだ、4度の移転を経てニューヨークのハドソン川沿いに腰を据えた、ホイットニー美術館。米国の近代・現代美術作品を多く収蔵することで知られる同館がフィーチャーしているのが、展覧会『Making Knowing: Craft in Art, 1950–2019』。過去70年間、ビジュアルアーティストたちがどのようにクラフトの素材や製作方法を探求してきたのかを紹介する。
クラフトとは、工芸品や民芸品といった手づくりの作品のこと。絵画や彫刻とは違い、女性的で家庭的な印象を持つ性質もあることから、長らくアートとして見なされることはなかった。しかし19世紀後半、芸術と工芸と生活を一致させようとイギリスで興ったアーツ・アンド・クラフツ運動などを機に、クラフトがアートの概念を揺さぶった。
戦後の米国で活躍した日系アメリカ人彫刻家ルース・アサワのワイヤーを使ったオブジェや、ドイツ人現代美術家エヴァ・ヘスが死ぬ間際に友人の協力のもと制作したロープを使った作品など、展示されるのは60以上のアーティストによる80以上の作品。なかには60年代に「前衛の女王」の異名をとった日本を代表するアーティスト、草間彌生による作品も。「セックスは汚いもの」と教えられて育った草間が、白い布を使いユーモラスな形で男根を表現したソフト(柔らかい)彫刻作品『アキュミレーション』などもラインナップに。自身が抱える性や男根への恐怖をユーモアのあるものに変えることで克服しようとした。
残念ながら現在は新型コロナウイルス感染対策のため一時閉館中。再開の目処はたっていないが、展覧会は来年1月31日まで。それまでヒープスのウェブ上でこれらの作品を眺め、自宅やスタジオでの“クラフト”のインスピレーションにしてほしい。
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Text by Rin Takagi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine