ポロックら抽象表現主義の渦に、フィリップ・ガストン。政治のことも個人のことも、鮮やかな抽象・具象に落としこんで

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今回紹介する展示は、米国ワシントンD.C.にある国立美術館、ワシントン・ナショナル・ギャラリーで開催予定の『Philip Guston Now』。カナダ系アメリカ人画家、フィリップ・ガストン(1913–1980)の作品展だ。50年というキャリアのなかで独自の視線を通し「個人と政治」、「抽象と具象」、「ユーモアと悲劇」を結びつけた、生き生きとしてインパクトのある世界観が広がる。

ジャクソン・ポロックら抽象表現主義の画家たちと同時期に活動した、米国で最も偉大な現代画家の1人と称されるガストンだが、美術大学を3ヶ月で退学。以来イタリアやメキシコに留学し、独学で絵画史を研究した。活動初期は現実をありのままに捉えるリアリズムの絵画を描いていたが、次第に具体的な題材を持たず感情を表現する抽象表現主義へと転向。その後の作品では、コミカルな具象表現が見受けられる。なかでも、特に政治問題を積極的に題材とし、たとえば白人至上主義団体(KKK)や、ホロコーストなどをテーマやモチーフとしてを作品を制作した。

同展では、約117の絵画と118のデッサン画を展示。有名作品はもちろん、これまで公開されることのなかった貴重な作品も。スペイン内戦の残虐行為を新聞で読んだ後に手がけた1930年代の油絵や、1970年代に描いたリチャード・ニクソン元米大統領の風刺画など、ガストンの半世紀にわたるテーマへの模索と作風の変化をたのしめる。

同展は本日6月7日から開催予定だったが、現在は新型コロナウイルス感染対策のため一時閉館中。そんななか公式ウェブサイトでは、すでに開催中の展覧会をビデオツアーとして体験できたり、アーティストやキュレーターによる講義を聞くことができたりと工夫がなされている。同展の詳細も随時更新するとのことなので、ぜひともウェブサイトで確認してほしい。

Philip Guston
Blackboard, 1969
oil on canvas
overall: 201.93 × 284.48 cm (79 1/2 × 112 in.)
Philip Guston Estate
© The Estate of Philip Guston

Philip Guston
The Return, 1956-1958
oil on canvas
overall: 178.12 × 199.07 cm (70 1/8 × 78 3/8 in.)
Tate, London
© The Estate of Philip Guston / © Tate, London 2019

Philip Guston
Bombardment, 1937
oil on panel
diameter: 106.68 cm (42 in.)
Philadelphia Museum of Art
© The Estate of Philip Guston

Philip Guston
Nude Philosopher in Space-Time, 1935
oil on canvas
overall: 116.21 × 62.87 cm (45 3/4 × 24 3/4 in.)
Philip Guston Estate
© The Estate of Philip Guston



Philip Guston
Painting, Smoking, Eating, 1973
oil on canvas
overall: 196.85 × 262.89 cm (77 1/2 × 103 1/2 in.)
Stedelijk Museum, Amsterdam
© The Estate of Philip Guston

Philip Guston
Black Sea, 1977
oil on canvas
other: 173.04 × 297.18 cm (68 1/8 × 117 in.)
Tate, London
© The Estate of Philip Guston / © Tate, London 2019

Philip Guston
Untitled (Shoe), 1968-1973
oil on panel
overall: 24.77 × 30.48 cm (9 3/4 × 12 in.)
Philip Guston Estate
© The Estate of Philip Guston

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Text by Aya Sakai
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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