「ねえ君の口の中で」ベッドで発せられた熱い一言を収集『CHATTY BOYS(おしゃべりな男たち)』

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したあとの会話をピロートーク。ところで、“最中の会話”ってなんていうんだっけ。どちらの会話も一連において非常に重要とされ—この手のスキルは語り尽くされているが、名台詞といえばこれだろう「それから、くるぶしは好き?(et les chilles, tu les aimes?)」
ゴダールの映画『軽蔑』(Le Mérpis 1963)で、ブリジッド・バルドー演じるカミーユが自分への好意を体のパーツをあげながらたずね、男はその度にウィと答えていく。“くるぶし”への愛情で確かめるやり取りが可愛らしく、特別でもないベッドにすんなりと染みている。

 とね、いい言葉を紡げればね、ベッドでの名台詞で愛も盛りあがるんだけどね、現実には空回りしてしまうこともそりゃあある(インターネットという大海原から掬い上げた誰かのアドバイスを鵜呑みにして)。ベッドで交わす言葉も、人とベッドとそれから行為の数だけあるのだ。そんな“ベッドで”ならではの親密で時々妙な会話を集めたたジン『CHATTY BOYS(おしゃべりな男たち)』がおもしろい。

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 作り手はパリ在住で、趣味はマリファナを吸い部屋の窓から夕日を見るふりをしながら人間観察、というアンスー(Aintsoa。発音はAnne Sue。アン スーね。発音とスペルを毎日誰かしらに正してるの)。
「セックスをしているときにこそ、天気やお金のことではなく、自分たちが何が好きで、お互いを喜ばせたいと思いながら会話ができていると気づいたのよね」。出掛けがてら歩いているときとも食事をしているテーブルとも違う会話がベッドにはある。確かに、服も脱いで奔放に互いの存在に集中しているシーンって、ベッドくらいか(ん、ベッドとは限らない)。となると最も近くなったような距離で言葉を交わすことができる(距離を計り損ねて失敗することも、だからある)。

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君の口の中でイっていい?ねえ、いい?いい?
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生理なんて気にしないよ。さ、おいで。

 これまでのアンスーが経験したベッドでの名台詞を聞いてみる。「まず、ワーストから。『これがいいのか、ビッチ?』ね。いつもだったら汚い言葉も叩かれるのも、どうだどうだと聞かれるのも好きなんだけど、これは…ナシ。ちょっと我にかえる感じというか、90歳のおじいちゃんが急にラップしはじめるのと同じくらい違和感あるし、脈絡がないもの」。いま振り返ると、そのワードを使うには早すぎたのかも、とのこと。ちなみにこの発言で彼に対する気持ちが一気に変わった(冷めた)そう。「セックス中の会話が良くなるか悪くなるかは、どんな言葉を使うかではなくて、お互いの歩調が合っていることだと思うわね」。うむ、やはり互いの距離を正しく測れということですね。

 それじゃあお待ちかねのベストワード。「ンフフ、実はベストワードはね、“私から”の言葉よ」と前置きして、あるひと夏の恋人とのストーリーを教えてくれた(その夏の恋人というのがとっても素晴らしくて“何度も叫ぶハメになった”)。2度目の最高潮がもうそこまできているとき。「その時、ルームメイトがいたから控えめにしなくちゃならなかったの。だからね、それまでなにかしらを囁いていたんだけどセンテンスが終わるにつれて(いよいよ最高潮)、もう最後の方はこうだった『もうダメ、ごめんなさいすんごくうるさくなっちゃううううう(I am abou to come I am sorry I am going to be blooooody nooooooisy)」。
「まさに見事なクレッシェンド(だんだん強く)だったわ!誇らしくなるくらい」。ベッドでの会話を饒舌にする一冊になって欲しいわ、というアンスー(友だちやママと共有してもいいと思うの。Aha)。恋人同士、したあとのくしゃくしゃのシーツにくるまって笑えるジンもなかなかない。

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Photos via Aintsoa
Text by Tetora Poe
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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