「Amazonの購入履歴で社会貢献」オンラインショッピング履歴を“寄付”に変えてしまうプラットフォーム

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たとえば、あなたが2018年の2月1日に通販サイト「Amazon(アマゾン)」で、新しいヨガマットとホームパーティー用のホットプレート、当月分のトイレットペーパーを購入したとする。
知っていましたか? あなたは、購入した商品だけでなくその「履歴」の所有者でもあることを。そして、その購入履歴に金銭的な価値がある、ということを。

「売れるショッピング履歴」で、30秒で社会貢献?

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 ふと「地域や社会にもっと貢献したいな」と思うことがある。本当は毎日そんなふうに考えられたらいいのかもしれないが、社会貢献という言葉が私の頭を過ぎる頻度は「ふと」「たまに」と表現するのが適切だと思う。そのタイミングで行動を起こすというのは、なかなか難しい。
  
「ぼくらもそうでした。時間に余裕がなかったり、金銭的な余裕がなかったり、はたまたその両方だったり。だから、寄付する側にとって、負担の少ないやり方はないかを考えたんです」。そう話すのはミレニアル起業家のスコット・ステインバーグ氏。
 もともと「顧客データを扱う仕事をしていた」という彼は、この時代にオンラインショッピングの個人の履歴情報がどれだけ価値のあるものかを知っていた。しかし、「多くの消費者は、自身の購入履歴のオーナーシップを持っていることも、その履歴に金銭的な価値があることすら知らずいることに気づきました。そして、この『Data Does Good(データ・ダズ・グッド、以下DDG)』というプラットフォームをつくることを思いついたんです」。

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 DDGは、Amazon上の自分の購入履歴を同社に“売る”ことで、お気に入りの社会貢献団体に「寄付」ができるというユニークなプラットフォームだ。使い方は簡単で、ユーザーはDDGのウェブサイトから自身のAmazonアカウントをリンクさせて、次に支援したいチャリティ団体を選択するだけ。しかも、このプロセスは「30秒もかかりません」という。

 これにより、Amazonで買い物をすると購入履歴がDDGに自動で収集されるようになり、ユーザーの年間の総合購入金額の1パーセントが、選択したチャリティ団体に寄付される。なぜ1パーセントなのかというと「それが現在の購入履歴データの価値として適切な値だから」とのことで、たとえば、年間にAmazonで10万円分の買い物をした場合、1,000円が寄付されることになる。  
 この仕組みにおいて特筆すべきは、生活に余裕のある人もそうでない人もオンランショッピングをする人なら誰もが社会貢献に参加できる、ということ。これにより、より多くの寄付金が集まることはもちろん、より多くの人の「社会貢献をしたい」という想いを30秒で叶えることにも繋がる。
 

白熱!データの売り買い合戦。ところで、セキュリティ面は?

 

 いままで持っていたけど「金銭的な価値があるなんて知らなかった!」と、なんだか棚からボタモチみたいな話で、利用できるものを、有益に利用しましょうという取り組みはすばらしい。だが、気になるのは「個人情報の漏えいなど、安全性やセキュリティについて」だろう。
 それについて、匿名データとして収集しているのでセキュリティ面は問題ないという。曰く、「自動で収集される段階で、名前、住所、電話番号といった個人情報は取り除かれる」。よって、スパムメールが届いたりやセールスコールがかかってくる心配もない、と。
    
 また、DDGが集めたデータでどのくらい儲けているのかも気になる。これについては回答を得られなかったのだが、彼らのようにオンライン上のユーザーのデータを集めて分析し、企業やブランド、広告会社に売る人たちはデータ・ブローカーと呼ばれ、そのデータ収集・分析市場は2017年時点で、世界で年間16兆円規模以上、2020年までに20兆円を超えるといわれている(International Data Corporation調べ)。

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 消費者の知らない間に、閲覧履歴や購入履歴と行ったデータが売り買いされており、その市場がいつのまにかに巨大マーケットになっていたという事実。このように企業がユーザーのデータを集めて売る行為自体は合法。というもの、データを売る方も買う方も「より消費者のニーズにあったモノやサービスを提供していくこと」を目的に掲げている以上、“顧客にとってもビジネスにとっても双方に有益”という理屈は通る。
  
「購入履歴のおもしろいところは、データの数が集まれば集まるほど、その価値も上がること。ビッグデータになるほど、より貴重な情報へと変化するんです」とスコット氏。つまり、DDGにより多くの人が参加すれば、各々の履歴の価値も上がる。そうなれば、Amazonの購入履歴を使って、各チャリティ団体へ「毎年数千万円の寄付も可能になります」
 2017年は参加者約2,500-3,000人程度で、日本円にして400万円以上の寄付を実現したそう。参加者の数は「毎月10〜13パーセントの伸び率で増加している」という。ゆくゆくは、Amazonに限らず他のサイトでの購入履歴や検索・閲覧履歴なども「ユーザーが自分のデータをどう使うか、自分で選べる社会を目指しています」。日々膨大に生まれるデータによって簡単に社会貢献、か。“オンライン・フィランソロピー”の新時代がきている。

Interview with Scott Steinberg 

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Text by Chiyo Yamauchi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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