「Marijuana:マリファナ(大麻)」と聞いて、あなたの頭には何が浮かぶだろうか?
緑の葉っぱ、あの特有の匂いや恍惚とした表情を思い出す人。たちまち否応無しに「ダメ、絶対」が頭の中を駆け巡る人もいるかもしれない。
もしくはドレッドヘアにラスタ・カラーを纏う、ラスタマンの代名詞ボブ・マーリー先生とか? はたまたのりピー(これはまた別のお話)だったりして。
これまで何度となくマリファナについて取り上げてきたHEAPSだが、はい、今回もあのグリーンのお話です。
▶︎記事「信じるのは医療大麻の力。修道女がはじめた“吸わないマリファナ”ビジネス」
▶︎記事「『マリファナ価格競争』激化。価格ドッドコム(大麻版)まで登場、民主化はここまできた!」
いつものちょっと怪しい記事とは違うぞ。まずは、これを見ていただきたい。
Photo by Amarett Jans
Photo by Larry Gassan
この気品の高そうなご婦人が手にとり嗜む電子タバコのようなもの、老人が3時のおやつに楽しむチョコレート、実はこれ全部「マリファナ」。
1万8000点の、美しいマリファナ写真素材
こちら米国では、マリファナ愛好家を指す「pothead(ポットヘッド)」という語がある。そう聞くと、やはり前述のように大きなドレッドヘアを召したラスタマンが煙をふかすイメージを持つ人、多いのではなかろうか。
そんなマリファナに対する偏りを文字通りイメージで変えようとするのが、既出のような「え、これマリファナなの?」な写真を大量にストックする、カンナビス専門の写真素材サイト「StockPot Images(ストックポット・イメージズ、以下ストックポット)」だ。
Photo by Linka A Odom
「マリファナ消費者にはいまや、若者だけでなく中高年、そして老人もいる。性別、肌の色、職業だって様々。なのに、ネットにある写真素材はその実状を見せるものがない」。語るのはストックポット(カリフォルニア州・ロサンゼルスを拠点)を2015年に立ち上げた、Ophelia Chong(オフィーリア・チョン)。
2015年4月20日(大麻文化を祝う祝日)に23人のコントリビュートフォトグラファーが撮った3000枚のマリファナに関連するイメージとともに口火を切る。現在では180人のコントリビュートフォトグラファーを擁し、1万8000枚以上のイメージを保有する世界で唯一のマリファナ専門写真素材サイトとなった。
Photo by Steff Fleur
おばあちゃん、軍人、猫まで、みんなポットヘッド
ストックポットのラインナップはこれまであったマリファナに対する偏りとは対照的なものばかり。85歳マリファナ栽培家の中国人のおばあちゃん、ミレニアル世代の女性がワイン片手に談笑を楽しみながらマリファナを嗜む姿や、PSTD(心的外傷後ストレス障害)患者であるアメリカ軍兵士など目を疑うようなイメージの数々が並ぶ。そしてこのすべて、作り上げられた偽物ではなく、実際の消費者なのだ。
「ストックポットを立ち上げた理由は、消費者のリアルな姿、マリファナコミュニティのリアルな顔を伝え、マリファナに対する偏見を変えるため。だからここに写る人々はすべてホンモノよ」。
一体、どうやって被写体を集めるのか。それはストックポットが保有する180人のコントリビュートフォトグラファーあってこそのこと。25〜60歳までいるそのフォトグラファーたち全員、写真家である以前にマリファナ愛好家なのだ。しかもその半数以上は「女性」だそうだ。
Photo by Amarett Jans
「私たちのフォトグラファーはマリファナを熟知している。マリファナへのアクセス方法を知っていて、コミュニティの実態がどういうものっていうことに理解がある。だから決して、写真に対して何かを要求することもない。彼らの好きなよう撮ってもらうの」
180人のフォトグラファーが撮りたいように撮る。それぞれ自分のスタイルでマリファナを撮るから、ストックポットに多様性が生まれていく。
Photo by Bettina Chavez
マリファナ産業に続々参入する「女性」
オフィーリアも所属する、マリファナ産業に参入する女性を支援する団体「Woman Grow(ウーマン・グロウ)」などもあるのだが、そこに見て取れるのは「女性」のマリファナ産業の進出だ。現在、マリファナ産業における、女性が運営する会社の割合は他の産業に比べて36パーセントもも多い。
「マリファナ産業は、まだ真っ白で新しい土壌。いまならマリファナ産業界のFacebookやGoogleにだってなれる。いま、誰もがそれを目指して必死よ。だから男性だけでなく女性もハングリーに参入してきているのね」
Photo by Seagrass Photography
また先月8日、世界を仰天させたアメリカ大統領選挙の裏側では新たに3つの州で、医療用目的でのマリファナ使用は合法となった。この事実は、マリファナ産業への新規参入をさらに加速させるだろう。
画像使用料、1枚3万も。それでも納得の理由
料金は一枚につき35ドル(約3800円)から。高いものだと250ドル(約27,500円)を超えるものも。画像素材にしては決して安いとはいえない価格だ。それで納得の理由がある。
Photo by Seagrass Photography
マリファナ関連イメージにおいて、大手画像素材サイトには単一的かつステレオタイプ的なイメージしかなく、「ある一枚の画像はこれまでに100回以上見た」なんてザラだ。
注目の一大産業とされ、あらゆる分野からの新規参入者が続々と増え続け、ディスペンサリー(大麻薬局:合法でマリファナを販売する薬局)が次から次へと開局される中、それにあてがうだけの多様なイメージが、存在しなかったのだ。その抜け目を上手に突いたストックポット、来年度にはヨーロッパでのディストリビューションも決まっている。
Photo by Bettina Chavez
アメリカにおける急進的なマリファナ合法化が一人歩きし、民間レベルでのマリファナに対する認識は遅れをとっていた。それゆえのイメージの偏りを、イメージを通し視覚から変えようとする。それは認識という点だけではなく、マリファナ産業においても、大きな大きな追い風と言えよう。
「ダメ、絶対」な日本に在住の読者のみなさんも、ここに並ぶストックポットのイメージを見て「ひょっとしたら?」なんて思ったりするかもしれない。
そう、それはまさにストックポットイメージの意図するところだ。
Photo by Bettina Chavez
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Text by Shimpei Nakagawa