旅に出たとき、あなたは旅人(traveller)だろうか。それとも観光客(tourist)だろうか。
自分の知らない地へ訪れるという点では同じであっても、二者の目的とスタンスはまるで違う。それだから、カメラにおさまる写真たちも必然的にがらりと顔を変える。
今回は、ある一人の女性が“旅人”としての体験を1冊にまとめたジンを紹介したい。
『Rio(リオ)』。旅先はブラジル・リオデジャネイロだ。
シンプルに題されたモノクロフォト・ジン、作者はオーストリア在住のドイツ人Eva Weber(エヴァ・ウェーバー)。
昨年現地に住む友人を訪ねた彼女。自分の知らぬ土地で友人が過ごす「日常」に触れ、込み上げた想いをアナログフォトとして残した。
「旅は私の人生に新たな視点を与えてくれるわ。旅に出る上で、いつも心がけているのは、その土地に溶け込むこと」
現地の日常に溶け込む友人を通してエヴァが見た旅先での景色は、観光本には決して載らないものばかり。
路地に、電線に、通りを歩くリオの民。どれも旅人・エヴァの視点がくっきりと残されたフォトたちで、リオの突き抜けるような青い空がモノクロで映されているのもなんだか新鮮だ。
お札や広告の切り抜きなんかも、ぺたっと。
旅先であれもこれもと多くを得ようとしたり、多くを見ようとすればするほど意外と何も見えなかったりすることってないだろうか。
観光地のことは一旦忘れて、旅先に広がる「日常」にとことん身を浸してみるのもいい。そんな風に思わせてくれるジンだ。
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All images via Eva Weber
Text by Shimpei Nakagawa and HEAPS