ジンを使っての授業をする大学もあるんだって(ボストンにある私立シモンズ大学)。「ジンには一般的な資料に欠落しがちな個人の声が反映されていて、研究結果をまとめるレポートの見本になる」との理由から参考資料として活用されている。また、個人やグループプロジェクトの制作課題としてジンが指定されることも。学生が読者(教授)を意識して、おもしろいレポートの書き方を工夫するという狙い。調べる・考える・書く・まとめるのステップどれにも共通するもんな。
世界一敷居の低い文芸で、ルールが存在しない世界一自由な文芸「ジン(ZINE)」。今月紹介するのは、ちょっと不思議な視点でユニークなスピリチュアルなので「不思議チュアル」がテーマの3冊。ヘタなシャレでごめんね。ところで、さそり座のあなたは「ボルケーノ・タコ(激辛タコス)」。辛口で、自虐キャラらしいです。
7年間、魔術を独学してウィッカに改宗。
魔女信者による「死」の知識集『Death Witchcraft』
12歳で魔女の虜になった作者。以来、台所で薬草の調合に勤しんだり、黒魔術の勉強に励んだり。『Death Witchcraft: (デス・ウィッチクラフト)』は、そんなド級の魔女信者が作ったジン。作者が独学で得た魔術と死の関係についての知識が、44ページにたっぷり。
———ズバリ、魔女の魅力とは?
なんといっても魔術の力。魔術を使えば、さまざまな状況をコントロールできるから。たとえば、仕事でチャンスが舞い込んでくるように仕組んだり。
———へえ(本当にできるの?)…魔女って邪悪なイメージがあったけど、魔術を使って自身をプラスの方向に導くこともできるんだ。
そう。最初は興味本位で魔女についてググったり真似たりしてただけだったんだけど、いまでは趣味の領域をとっくに超えちゃった。それに、魔女の魔術は生と死の世界をつなげることだってできる。それを知ってからはもう完全に魔女の虜。
———え。じゃあ、魔術を使えば死んだ人とも会えると?
ギリシャ神話の神「ハデス」に祈りを捧げ、死の魔術の訓練をすれば、死んだ人と話せるようになる。昔は死に対して恐怖心があったけど、いまではそれもなくなった。死は終わりじゃない。また違うカタチで生まれ変われるって知ったから。
———魔術はどうやって勉強したの?
親友に教えてもらった。彼女、エンパシー能力(人の痛みや感情がわかる力)や未来予知など、いろんなスピリチュアルな能力が使えることで有名なロマーニ民族の出身だったの。
———ほぅ。
でも私はカトリックだったから、魔女に憧れてるなんてのはタブー。だから家族に内緒で7年間こっそり魔術を勉強。独学でね。いまは魔女の実践を復興する宗教、ウィッカに改宗したんだ。
「さそり座のあなたは、ボルケーノ・タコ(激辛タコス)」。
タコベルと星占いを合体『Taco Bell Zodiac Zine』
幼い頃から米ファストフードチェーン「タコベル」のタコスと星占いが大好きだった作者。その共通点のなさそうなふたつをコラボさせ完成したのが『Taco Bell Zodiac Zine(タコベル・ゾディアック・ジン)』。星座ごとの特性を、タコベルのメニューでたとえたジンだ。
———タコベルと星占いってまた、斬新な組み合わせ。
ジンを作ろうと思ったとき、自分の大好きなものをテーマにしたかったんだよね。で、降臨したのがこのタコベル×星占いのコラボレーション。
———タコスと星占い、それぞれどこらへんが好き?
小さいころ、よく家族でタコベルに行っててさ。正直、超おいしいってわけじゃないんだけど、安いし手軽に食べれるじゃん?
———星占いは?
母がよく友だちと占いやタロットをやってて、星占いの正確さにびっくり。科学的に証明されたものじゃないんだけど、すごい当たってたの!
———で、星座ごとの特徴や性質をタコベルのメニューにあてはめてみた、と。
そうそう。母にも手伝ってもらってね。まず、すべての星座の特徴、性質を調べ上げた。たとえばさそり座は燃え上がりやすく、みずがめ座は大胆。そういうのを、タコベルのメニューを見ながら、割りあてていったって感じ。
———個人的にこのアイデア好きっす。自分の星座がおいしそうなメニューだったら上がりますもん。
前にイベントでジンを販売したことがあるんだけど、みんな自分の星座とメニューがどれだけ当たってるか興味津々で、「お、私のお兄ちゃん〇〇だ」とかワイワイたのしそうに話してるのがうれしかったな。
———えっと、私は水瓶座だから、ハンバーガーの「ベル・ビーファー」か。特徴は「ALWAYS RIGHT(いつだって正しい)」。当たってんのかな。
「仮装するだけの日じゃない!」
わたしたち4人組流、ハロウィンのたのしみ方『Four Corners Halloween Zine』
人々がこぞって仮装し街を練り歩く日、ハロウィン。悪魔崇拝やらサタニズムの傾倒やら噂されるなか「仮装するだけがハロウィンじゃない!」と作者4人組流のたのしみかたを綴じたのが「Four Corners Halloween Zine(フォー・コーナーズ・ハロウィン)」。今回は作者の1人、レッタさんに質問。読破すればハロウィンを倍たのしめる、かも?
———ハロウィンはいつもどんな気分で迎えるんです?
そもそもハロウィンって、亡くなった人を思い出す日だと思ってるの。だから、その亡くなった人たちに敬意を示すことが大前提ね。あとは、もうすぐ冬がくる!ってワクワクする。
———アイルランドでは死者の霊が家に戻ってくる日らしいですからね。日本でいう、お盆みたいな。ハロウィンの定番の過ごし方を教えてください。
秋の食材で作った料理を、家族や友人と一緒に食べる。あと、近所の子どもたちにキャンディーをあげたり。
———ハロウィンは本来、秋の収穫を祝う日ですもんね。いまではすっかり仮装パーティとして定着、クリスマスやバレンタインデー並みに盛り上がりを見せる。ちなみにレッタさん、仮装するんですか?
もちろん!これまでの一番のお気に入りは、第26代大統領のセオドア・ルーズベルトの仮装。昨年はタコ足女。ちなみにジンに載ってるのは作者のひとり、アリソン。彼女のクオリティに比べたら私なんてまだまだね。
———ジンでは仮装だけではなく、タロット占いや祭壇の作り方、気分を上げる映画トップ10なんかを紹介。おすすめのハロウィン映画、トップ3教えて!
人造人間が登場することで有名なホラー・ミュージカル映画『ロッキー・ホラー・ショー』
魔女が子どもたちが繰り広げる闘いを描いたファンタジー映画『フォーカス・ポーカス』
ティム・バートンのホラー映画『スリーピー・ホロウ』
——ほかにはどんなことについて書かれているんでしょう?
4人で分担して作ったんだけど、私はソウルケーキのレシピやハロウィンの神話について書いた。
———ソウルケーキと神話かあ。いいっすね。
Eye Catch Image via
Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine