【今週のZINE】思春期ど真ん中のクィア女子、本音炸裂。ちょっと過激にエッセイジン『Not Straight Not White Not Male』

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思春期といえば人生におけるもっとも多感な時期。「自分はいったいぜんたい何者なんだ」とアイデンティティは揺らぐ。

いまから4年前に作られたジン『Not Straight Not White Not Male(ノットストレート・ノットホワイト・ノットメイル:ストレートでも、白人でも男でもなく)』。
作者はロサンゼルスに住むベトナム系アメリカ人女子、Rosi Vo(ロズィ・ボオ)。

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 絵も色もなし、文字だけで綴られたこのジンには、アジア系アメリカ人、女性、そしてクィアとして3つのアイデンティティの間で揺れた思春期真っ只中の、極私的な感情がそのままに書きとめられている(というか、ぶちまけられている)。

 エッセイのタイトルを覗いてみると、どれもストレートで少々アグレッシブ。
「サイアク人種差別主義者が私に言い放ったこと」
「ごめんね、母さん。ベトナム系アメリカ人としてアメリカに生きることって、クソ苛立つ」
「性的コンプレックスで服も選べない」

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 ジンを作る背景には、当時傾倒していた音楽シーンがあったのだとか。

「ストレート・エッジ(*)シーンでは、有色人種や女性、セクシャリマイノリティに対して決して寛容ではなかった」
 自分の居心地よいコミュニティなはずなのに、居心地が悪い。そんな状況にもアイデンティティの葛藤があったそうだ。

 *ロック音楽などにおける思想・概念・ライフスタイルであり、ハードコア・パンクのサブジャンル。「喫煙しない」「麻薬を使用しない」「アルコールを摂取しない」「快楽目的のみのセックスをしない」というのが基本的な理念。

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「当時のやり場のない気持ちをただただ書き綴ったの。4年という歳月を経て成長したいまは、あの時の私とは違う。でも未だにこのジンに共感する人も多くいるから、求めている人がいる限り届け続けるわ」
 
 思春期特有の悩みや不安定さに加えて、アジア系アメリカ人と同性愛者というふたつのマイノリティに悩む一人の女子が、怒りもやるせなさもボカすことなく書いたジン。
 ただ「自分のため」に綴った言葉は、4年経ったいま誰かの胸に突き刺さる。

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All images via Rosi Vo
Text by HEAPS, editorial assistant: Shimpei Nakagawa

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