子どもたちがよりたのしく自宅で学習をするには? 一人ではなかなか集中できない「課題」を動画に撮って、クラスメートや友だちとシェアしたらどうだろう。
家にあるもので、“火山”を作ってみよう
新型コロナウイルスの拡大を防ぐために、小中学校を含む教育期間が休校へ。世界のあちこちで、緊急事態宣言とともに休校が相次ぎ、子どもたちの学習がリモート化した。まだまだ感染拡大の続く米国では、3月13日にトランプ大統領により緊急事態宣言が出されて以降、州ごとに細かな日程は違うものの休校が相次ぎすぐにリモート授業が開始。ニューヨーク州では、今学期いっぱい(8月末まで)学校の閉鎖が決定している。
休校が続くとなると、学生たちの学習の遅れはまぬがれない。日本では、ICT(情報通信技術)化の遅れから、一部の地域でしかリモート授業が実施されていなかったり、学習プリントを渡すのみの対応に留まったりなど、遠隔教育における質の低さが露呈することとなった。オンライン学習が進んでいる海外の学校でも状況は芳しくなく、ロサンゼルスのある高校では、オンライン授業の出席率は半分だという報道もあった。
コロナの影響下、自宅での学習・教育にはまだまだ課題がある。どうしたら子どもたちがより集中して、より意欲的に、たのしく学習ができるのか。その解決に向けて今年創立したスタートアップが、「Zigazoo(ジガズー)」だ。創始者のザック・リンゲルスタインも、いま世界中で多くの親が抱えている問題に悩んでいた1人。ジガズーが開発したのは「子どものためのティックトック」と呼ばれる教育用動画シェアアプリだ。
「ジガズーは、究極の“エデュテーメント(教育+エンターテインメントの造語)”アプリです。たのしみながらプロジェクトベースの学習に従事することができます」。
アプリをダウンロードして、読み書き、科学、数学、美術、音楽などの科目から好きなものを選択して学習していく。おもしろいのはその課題の提出方法。課題を30秒の動画に撮って、共有するのだ。
読み書きの「好きななぞなぞは?」、数学の「買い物袋の中身を計算してみよう」などの課題から好きなものを選び、その答えを30秒ほどの動画にして撮り、アプリでシェア。科学では「家庭にある重曹で、火山をつくってみよう」「これは沈む? それとも浮く?」などもあり、それも動画に撮ってシェアだ。課題は、就学前から中学生レベルまで適用している。課題を動画に撮ることによって、学習をしている実感もより湧く。リモート以前であればクラス内でできた、宿題の見せ合いっこや発表など「自分がやり遂げたこと」を見せる場があることも大きい。
自宅で集中することが難しい宿題・課題に、「動画に撮ってシェア」という、いまや当たり前の行為でアプローチ。ジガズーが子どものためのティックトックと呼ばれる所以だろう。
プライバシーの観点から、アプリの持ち主は保護者であることが勧められているが、子どもが使用する際にも安全にするため、動画の共有方法も工夫している。誰でもフォローをすることができるティックトックなどの動画アプリとは違い、フェイスブックのように“友だち”として承認しあう。アプリの友だちと動画をシェアし、同じ問題に挑戦した子どもたち同士でいいね!やコメントを残すことができる。
ローンチから1ヶ月で、およそ10万アップロードを超えた。最近では、アメリカ教師連盟と提携し、学校の学習プロセスに導入しようという計画もある。
動画で学習、が普通の感覚?
Z世代においては、学習の形態も、「聞く」「見る」より「実際におこなう」という実践的な方法を好み、たんに授業を聞くだけの受け身の学習を嫌い、試験のために暗記をすることにはまったく興味がないということが判明している(バーンズ・アンド・ノーブル・カレッジ、2015年)。つまり、Z世代の学習意欲は必ずしも教室で生まれるわけではなく、方法を工夫すれば、家でも外でも、どこでもいつでも生まれるということ。ジガズーは、Z世代の新しい学びの習性を上手く作用し、教室外での“エデュテーメント”を促す、いま最適な教育アプリだ。
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All images via Gigazoo
Eyecath Graphic by Midori Hongo
Text by Aya Sakai
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine