青二才、十五人目「いま仲いい子はみんなネット繋がり。黒人でクィアとしての活動仲間も、はじめての仕事相手も」

【連載】日本のゆとりが訊く。世界の新生態系ミレニアルズは「青二才」のあれこれ。青二才シリーズ、十五人目。
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「最近の若いのは…」これ、いわれ続けて数千年。歴史をたどれば古代エジプトにまで遡るらしい。みんな、元「最近の若者は……」だったわけで。誰もが一度は通る、青二才。ゆとり世代ど真ん中でスクスク育った日本産の青二才が、夏の冷やし中華はじめましたくらいの感じではじめます。お悩み、失敗談、お仕事の話から恋愛事情まで、プライベートに突っ込んで米国から世界各地の青二才たちにいろいろ訊くシリーズ。

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青二才、十五人目「いま仲いい子は、みんなネットで繋がった!黒人でクィアとしての活動仲間も、はじめての仕事も」

毎度、ご無沙汰しております、青二才シリーズでございます。今回は、半年ぶりに舞い戻ってきましたよ。2020年一発目、記念すべき十五人目は(やっぱり漢字見にくいな…)、クリエイティブディレクターのセージ・アダムス(Sage Adams)、22歳。第60回グラミー賞で女性最多5部門にノミネート、日本デビューも果たした大人気R&BシンガーSZA(シザ)のデビュー・アルバム『Ctrl(コントロール)』のカバーとプロモーションビデオを撮影したのが、彼女。ほかにも、友人とともに、黒人クィアアーティストのためのプラットフォーム「アート・ホー・コレクティブ(Art Hoe Collective)」を立ち上げたり、ナイキ・エアー・マックス・270・リアクトのデザインを手がけたり、自信のペインティング作品に精を出したり。クリエイティブディレクターの肩書きにとらわれることなく、アートを軸に自由奔放に活動中。

インスタで「セージのこと、もっと知りたい」とDMすると、一つ返事で「いいよ」。が、取材当日「ごめん、スカイプにログインできない。明日の同じ時間にリスケでっ」。翌日午前8時、支度準備中のセージとフェイスタイム。メイクしながらなのでなかなか目線が合わないセージと、お喋りしてきました。いきましょう、「青二才・クリエイティブディレクター、セージのあれこれ」。


Sage Adams

HEAPS(以下、H):メイク中だ。

Sage Adams(以下、S):うん、このあと出掛けなくちゃで。大丈夫?

H:いいです。むしろ朝の時間にありがとう。さて、クリエイティブディレクターのセージ。小さい頃から絵を描いたり、物作りが好きだった?

S:全っ然。

H:あら。

S:美術の授業では、ひどい絵ばっかり描いてた。うまくなりたいって向上心はあったけど、センスのカケラもなかったみたい。アート系の学校にも通ったことはない。

H:ちょっと思ったこと言っていいですか? セージの声、好きです。低くて、落ち着いていて、自信がある印象。

S:えっ、まじ?ありがとう。普通にうれしい(照)。

H:19歳でクリエイティブディレクターとして仕事をする前に、16歳の頃に、友人とともに黒人クィアアーティストのためのプラットフォーム「アート・ホー」を創設。セージはいつ、自分がクィアだとわかったの?

S:気づいたのは高校生の終盤ごろかな。ずっと、女の子も男の子も好きだった。当時通っていたのが、ゲイの女性によって創設された学校だったから、クィアとしてのアイデンティティはわりと身近にあった。だから、自分がクィアだって気づいたあとも別に気まずいとかもなかったし。

H:私の好きなネットフリックスドラマでね、黒人ゲイ役の女性がカミングアウトしたとき、お母さんがホロホロ泣いてたんです。

S:ははは。うちの母は驚かなかったな〜。弟と一緒に「何で彼氏の一人もいないの?」ってしつこく聞いてきたりはしてたけど、私の男子っぽい性格とか、女子っぽくない喋り方とかで薄っすら気づいてたみたいだったから、自然と理解してくれていた。

H:セージのまわりにも、同じように黒人でクィアの子っていた?

S:いっぱいいた。だからあらためて「実は私クィアなんだ」って、かしこまってカミングアウトなんてしなかったし。カミングアウトって、白人のすることってイメージ。

H:そうなのか、セージの友だちではカミングアウトをする子がいなかったんだね。ネットで繋がった友だちも多いよね?

S:14歳からネット使ってて、いま仲良い子はみ〜んなネットで繋がった! 当時からどこ行くにもノートパソコン持ち歩いていたから、母には不思議がられてた。18歳のとき、4回しか会ったことなかった友だちと一緒に住もうってことになって、家族のもとを離れて引っ越ししたし。

H:ネットでのセージはというと、インスタではいろんな自分を出していますよね。メイクばっちりのキメ顔もあれば、すっぴんの泣き顔や、とっ散らかった部屋でのセルフィ、上裸写真(乳首はしっかり隠してある)とか。

S:“ネット上のセージ”しか知らないフォロワーに、勘違いしてほしくなくって。いい生活してるって思ってる人もいるかもしれないけど、私はプライベートジェットに乗ってなければ、ファッションウィークにも行ったことない。盛った自分じゃなくて、“等身大のリアルな自分”を表現したいんだよね。実際、クリエイティブディレクター以外に、普通に9時から5時の仕事もしてるしね。

H:じゃあいま、出勤前の支度してるんだ。

ここで化粧から髪型セットに移ったセージ。歯ブラシとジェルを器用に使い、前髪の産毛にウェーブを作る。

(なるほど、こうやってウェーブを作るのか)

S:もしも〜し。ハロー?

H:あっ、すみません。えっと、いま、9-5時のお仕事しながら、拠点はLA。

S:うん、いまは友だち2人と3人暮らし。自分の生存確認をしてくれる人が身近にいるってありがたい(笑)。私、姉妹がいなかったから、ルームメイトたちとふざけあうのが新鮮な感じがして好き。

H:生まれも育ちもブルックリンなんだよね。なぜLAに?

S:友だちに、アルバム制作のプロジェクトチームに入ってほしいってお願いされて。で、彼女の為に引っ越した。19歳のとき。

H:その友だちって、SZAのこと?

S:そうそう。それまでLAに行ったことすらなかった。

H:てか、どうやってSZAと友だちに?やっぱりネット?

S:3年前、インスタでたまたま見つけて「あなたのファッション好き」ってDMした。そしたら「私もあなたのファッション好きだよ」って返信があって。で、そこから遊ぶようになった。

H:普通に返信きたんだ?3年前って、SZAはすでにレーベル「トップ・ドッグ・エンターテインメント」の紅一点として活躍していて大人気だったよね。

S:SZAがそんなに有名なシンガーだって、知らなかったんだよね。

H:へっ?

S:SZAの曲、聞いたことなかった。

H:ウソだ。

S:本当。ジャスティン・ビーバーとワン・ダイレクション一筋だったから、SZAがどれくらい有名かなんて全然、知らなかった。

H:てっきりいまの曲をディグりまくっているのかと。

S:流行りの音楽って、ついていけない。よくわかんないだもん。

H:じゃあ、純粋にSZAのファッションが好きでDMしたんだ?

S:ファッションもそうだし、肌の色や髪型に感性とか、自分と共通する部分が多かったのね。SNSから伝わる彼女の性格も、とっても魅力的で。返信が来るかはわかんなかったけど、彼女のこともっと知りたいって思ってDMした。

H:で、遊ぶまでの仲に。実際に会ったとき、緊張しなかった?

S:全然。もっかい言うけど、彼女がそんなに有名だなんて知らなかったから。でも、知らなくてよかった。だってもし知ってたら、興奮して気が狂ってたと思うし。

H:初めて遊んだ日、何したの?

S:別の友だちももう1人参加して、3人で夜ご飯食べに行った。自分のこと話してたときに、「セージの世界観が好き。やりたいこと、一緒にかたちにしよう」と言ってくれて、アルバム制作に誘ってくれた。それからこんなアルバムにしたいって言うアイデアを話し合った。

H:どうしてSZAはセージに仕事を頼んだろう?

S:本当そうだよね。当時はクリエイティブディレクターの経験なんて一切なかったのに。

H:えっ!じゃあ、SZA以前にアーティストの制作をしたことも、クリエイティブディレクターとして仕事をしたことはなかったんだ。

S:なかった。でもそれが逆によかったのかもしれない。素人の私には“断固として譲れない自分流の仕事のプロセス”みたいな、いわゆる堅いものが一切なかったから。一緒に仕事がしやすいと思ってくれたんじゃないかな。

H:初仕事がSZAのアルバムカバーとビデオ撮影だったなんて。大役です。

S:ぶっちゃけ、制作開始当初は大役だなんて感じてなかった。クリエイティブディレクターって肩書きは、アルバム完成時にオマケでついてきたって感じ。

H:謙遜しちゃって。

S:マジで! 彼女の中には、彼女が作りたい明確な世界観があった。私のやっていたことといえば、どこに行くにも彼女にくっついて、彼女の一言一句をノートにメモって、彼女の作りたいものを全力で作ったこと。

H:アルバム『Cntrl(コントロール)』は、タイム誌では2017年の年間ベスト・アルバムに選出。ローリングストーン誌やビルボード誌の選出によるベスト・アルバム・トップ10にもランクインするなど、高い評価を受けました。そのアルバムカバーもアイコニックで、芝生の上に乱雑に置かれた廃棄コンピューターの前に、キョトンと座るSZAが印象的な仕上がり。このアイデアはどこから?

S:これはね、SZAのアイデア。ちなみにお堅い会議なんかは一切なく、彼女との自然な会話の中で作りあげたよ。

H:2人の仕事のはじまりは友人関係からだったけど、仕事となると、まぁ他にもたくさんの大人が関わってくるよね。SZAのまわりの大人たちともスムースに仕事が進んだ?

S:正直怖かったよ。当時はまだ19歳だったし、知らない大人たちに囲まれて。そしてここでやっとSZAの人気を知ったから、余計に緊張。何で自分はこの現場にいるんだろうとか、自分はこの場にふさわしくないんじゃないかとか、ずっとモヤモヤ考えてた。でも彼女は「セージがここにいるのには理由がある。信じてるから、動揺しないで」って声をかけてくれて。

H:SZA、めっちゃやさしい。

S:ほんとに。彼女は私の大切な親友の一人。マジでその言葉に救われた。

H:それにしても、よくこんな数の廃棄コンピューターを見つけてきたね。

S:探すの、だいっぶ苦労した!まずは友だち宅の庭で仮セットを組んだのね。で、SZAに写メを送ったら「コンピューター、全然足りない。もっと必要だから探して」って。「マジかーっ」てなった。

H:それで、それで?

S:プロダクションチームに速攻電話。それでも見つかならかったから、フィラデルフィアで自分が通っていた大学にお願いして、大量の廃棄コンピューターを借りた。

H:おぉ。

S:で、本セットを組んでいざ撮影。これが私史上初の本格的な撮影だった。

H:おぉ!

S:こんなに大所帯のチームの中でシャッターを切ったことがなかった。とんでもなく怖かったよ。ミスったらどうしようとか、でも、ミスっても世界の終わりではないしなって思ってる自分もいたり。

H:そして無事撮影終了。完成したアルバムカバーに対する、周囲の反応とは?

S:SZAも私も最高に気に入ってる。フォトグラファーの友だちが多いんだけど、彼らからは「何で呼んでくれなかったの?」って言われることが多かったな。大学時代の友だちはすごくサポートしてくれたし。

H:自分の人生は自分でコントロールしたい、という意味を込めてつけられたアルバムタイトル。収録曲には、本当はコントロールしたいのにできない、どうしようもない感情を切り取った曲なんかも。友だちのセージだからこそできた、クリエイティブディレクターとしての仕事ってなんだと思う?

S:うーん、私だからできたことって、別にないと思う。私はSZAの声に耳を傾け、彼女のアイデアを理解しようと努力していただけ。それって多分、みんなできることじゃん? 友だちじゃなかったとしても。でも強いて言うなら、彼女のことが大好きだから、尽くせたのかも。彼女のために、自分ができることは全力でやったって言い切れる。

H:SZAのクリエイティブディレクターとして仕事をして、わかったことってある?

S:人が提案するアイデアに、常にオープンでいるべきってことかな。当時の私はコンセプトを聞いてすぐに理解するって能力がなかったから、まずはリサーチや会話することで探っていった。オープンでいることが、仕事を進める一番の近道だなって思った。

H:ちょっと話は戻るんだけど、16歳で友人とはじめた、黒人クィアアーティストのためのプラットフォーム「アート・ホー」。これは、どうやってはじまったんだっけ?


@arthoecollective

S:えーとね、これもネットで繋がった7人の黒人クィアの友だちとはじめたんだ。「若い黒人アーティストっていっぱいいるけど、スポットライト当たりにくいよね」って話をしてて。スポットライトが当たるのは、いつもコネクションのある白人の人たちって印象だったから。

H:それはなんでだろう?

S:そもそも、黒人がアート学校に通うということに、敷居が高かったように感じた。私の家族もそうだけど、両親が移民としてアメリカに来た家族は多いと思う。両親は、私に絵を書いたり写真を撮らせるために汗水垂らして働いているわけじゃないからね。アーティストとして生計を立てるという選択肢が、白人に比べて少ない。じゃあこの状況、変えてみない?ってなって、私たちに何ができるかグループチャットで話し合った。

H:チャット会議。

S:いまのアート界に必要なのって何だろうと考えたときに出た答えが、オンラインギャラリー。早速インスタでアカウントを作って、アーティストの作品を募集。

H:どれくらいの応募があったの?

S:当時は14〜27歳のZ世代・ミレニアル世代から、月に数百件の応募があった。けどいまは私たちも成長して各々のやりたいことに集中しはじめてインスタの投稿数も減ったから、月に50件前後かな。創設メンバーは自分を含め14〜25歳だったから、全然オーガナイズできてなかったなあ(笑)

H:もう5年も続いているのがすごい。この5年で見えた変化ってある?

S:サブミッションされるアート作風に関しては、いまも変わらずペインティングが圧倒的に多いんだけど、当初は原色多様、線はボールド、大胆なカットアンドペーストを使った力強い作品が多かったかな。いまは、より繊細なスタイルが多い。

H:インスタだけでなく、実際にギャラリーで展示会を開催もしているよね。他にも、アーティスト向けのワークショップもおこなっていると聞いた。

S:そうそう。ワークショップでは、クライアントから届いたメールの正しい返信文の書き方だったり、請求書の送り方だったり、こういった学校では教えてくれない内容にフォーカス。未来のアーティストにとって、絶対に必要な知識じゃない?

H:ちょっとプライベートなことも聞いちゃおうかな。いま、パートナーっている?

S:いなーい。

H:な〜んにもない休みの日って、何してる?

S:午前中は絵を描いたり洗濯をして、午後からは友だちと遊ぶことが多いかな。

H:いま、お気に入りのアーティストは?

S:ラームっていう黒人アーティスト。彼の描く、美しくて色鮮やかな肖像画が大好き。あ、あとリル・ウェインも大好き。

H:(ジャスティン・ビーバー、ワン・ダイレクションとは正反対のラッパー…)セージにとってアートってどんなもの?

S:私にとってアートはバランス。ストレスと不安を取り除いて、癒しと安心をあたえてくれるもの。

H:アートやってなかったら、いまごろ何してたかな?

S:う〜ん。多分、政治関連の仕事をしてたと思う。実は昔、政治アナリストになりたかったんだ。

H:でも、現実のいまといえば。SZAとの新しいプロジェクト、持続可能な生地を使ったファッションライン「コントロール・フィッシング・カンパニー」を目下進行中。

S:イエース。また一緒に仕事することになったのは、お互いに信頼と尊敬があるから。でもいまはまだ詳しいことは秘密。実はもう何枚か写真は撮ってあるんだ。たのしみに待ってて!

Aonisai015 : Sage

セージ・アダムス(Sage Adams)

1998年生まれ。
16歳のとき、友人と共に、黒人クィアアーティストのためのプラットフォーム「アート・ホー・コレクティブ」を創設。19歳のとき、クリエイティブディレクターとしてR&BシンガーSZAのデビュー・アルバム『コントロール』のカバーとプロモーションビデオを撮影。21歳のとき、ナイキ・エアー・マックス・270・リアクトのデザインを手がける。自身のアート制作にも精力的に活動。

@sageaflocka

Eye catch image by Midori Hongo
Portrait images via @sageaflocka
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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