メルマガ飽和中に「メール郵送します」世界的メルマガ配信のメールチンプ、次は〈追跡可能なハガキ〉を郵便受けに

「古風なマーケティング方法に、“現代風のツイスト”を利かせました」。一日10億件のメールを配信する彼らは〈ハガキ郵送サービス〉を開始した。
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Eメール受信箱から郵便受けに。ダイレクトメール(広告ハガキ)に原点回帰

 昨日整理したのに、受信箱にはすでに20件。放っておくと50件、100件とふくれあがる受信メール、その未開封の多くは、あれもこれも「メルマガ」。キャンペーン情報に新着ニュースなどは、見られることなく積み重なる。みんなの受信箱が“メルマガ飽和状態”になるなかで、ある大手メルマガ配信ツールは、“意外な方法”に立ち返った。それが、ハガキ郵送の〈ダイレクトメール〉だ。

 2001年に有料のデジタルマーケティング・プラットフォームとして登場し、これまでメール配信サービスを提供してきた「メールチンプ(Mailchimp)」。小規模な企業をターゲットにしたサービスで、メルマガを配信したいユーザー(企業)は、用意されたテンプレートに従って画像ドラッグ&ドロップ、文言&リンク挿入などでサクサクと一通のメルマガをデザインし、あとは登録された顧客リストにザザーっと配信する仕組みだ。

 09年には、無料で配信できるプラン(メールアドレス登録数2,000、月間1万2,000通以内)を追加。操作画面はすべて英語にも関わらず、簡単で便利な機能から、現在世界で30万社以上の企業・1,200万人以上が愛用中だ。毎日10億件という膨大な数の電子メールを配信している最中で、先月からアナログな新サービス「ダイレクトメールを好きなようにデザインしてください。私たちが印刷して、郵送します」をはじめたというのだ。


(出典:Mailchimp Official Website
*一枚あたりの郵送料は、米国内では量に応じて75セントから99セント(約85円から113円)、
米国外では量と目的地に応じて80セントから1.51ドル(約90円から170円)だ。

 今回開始するダイレクトメールサービスでは、メールチンプユーザーは、これまで同じようなデザインツールを使用し、画像と文章を自由自在にレイアウト。いままでのメルマガをデザインする要領で、新店舗のお知らせやセール情報、クーポン、新サービスやプロダクトの告知、「Hello!」「Thank You!」などの挨拶や日頃のお礼メッセージなど、ダイレクトメールをカスタマイズできる。

「古風なマーケティング方法に、“現代風のツイスト”を利かせました」。ハガキ郵送という古風なやり方に、“カスタムデザイン”と便利な“ワンクリック郵送”が現代風のツイストだ。さらに、もうひとツイスト、なんと「トラッキング機能」もついてくる。いままでのメルマガ配信よりも面倒くさくなればユーザーも顔が渋くなる。既存のデータベースに住所が登録されている顧客には、デザインを終えたらクリックひとつで郵送してくれ、顧客の住所を知らない場合、有料プランに入っていれば、メールチンプが住所探しを代行してくれるらしい。
 郵送されたダイレクトメールは、米国郵便公社を通じてオンラインでトラッキングでき、さらにハガキに含めたクーポンコードが使用されたどうかも追跡でき、そのアナログなダイレクトメールが売り上げにどれほど効果的だったかをも教えてくれる。これまで存在したダイレクトメール用プラットフォームの多くは追跡や顧客の行動が把握できず、デジタルマーケティングツールに比べて時代遅れ感があったといわれている。そこにきてメールチンプの新サービス、アナログとデジタルのいいとこ取りじゃあないか。

ダイレクトメールはいわばインスタ? 現代SNSとの意外な共通点

 ところで。このデジタル時代に、メルマガ配信の大手がなぜいまさらダイレクトメールサービスを?「独自の調査によって、私たちのユーザー(メルマガを配信する企業)は、いまだに紙ベースでのマーケティングや、ダイレクトメールを使用していることがわかりました」と、メールチンプの製品開発部長ジョン氏。

 デジタル時代真っ盛りだが、実はダイレクトメールはいまだ根強い需要がある。ダイレクトマーケティング協会の調査(2013年)によると、ダイレクトメールを受け取ったことによって約3分の2の顧客が商品を購入、さらに、ダイレクトメールは疎遠になっていた顧客の70パーセントを取り戻したケースもあるという。
 デジタルコミュニケーションが当たり前のミレニアル世代も、実はダイレクトメール好き。米国郵便公社のアンケート(2018年)では、75パーセントのミレニアルズが、「郵便は特別感があっていい」と回答したそうだ。ちなみにジョン氏、メールチンプのダイレクトメールに使用するハガキのスタイルや重さ、用紙の種類を決めるにあたり、これまでウン百を超えるサンプルを郵便で受け取っていたらしい(郵便受けが毎日いっぱいだったんじゃ…)。

 それから、ダイレクトメールは“意外なもの”と似ているという。SNSのポストだ。たとえば、「インスタグラムの投稿を考えてみてください。画像と、テキストと、場合によってはテキスト中にクーポンコードも挿入します。そして『URLはプロフィールから』でしめくくるでしょう? これ、基本的にダイレクトメールと同じ構造なんですよね」。おぉ、確かに。毎日眺めるSNSと根強い人気の古典的なマーケティングツールには、意外な共通点があったのか。

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Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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