世界都市ニューヨークでは、ストリートで遭遇する一期一会の人々をうつすコンテンツが人気だ。なんといっても「いろんな人」が暮らす街、一人の個人にフォーカスをあてればそれだけでストーリーが生まれてしまう(というかつくれてしまう)。市井の人のライフストーリーをポートレート写真を添えて紹介する『ヒューマンズ・オブ・ニューヨーク』。ニューヨーク出身のコメディアン、ビリー・アイクナーが歩行者にクイズを出題するコメディ番組『ビリー・オン・ザ・ストリート』(時に有名人たちに出演してもらうことも)。
最近、人気上昇中の『Sidetalk(サイドトーク)』もまた、ニューヨークの路上にいる雑多な人々との出会いに焦点を当てたシリーズだ。が、映された人々の「人間味」が格別に違う。「はい、じゃ、撮りますねー」と、もしかすると美化し盛って語ったかもしれないマイ・ライフストーリーとポートレートが語るものとはそもそも種類が違うのだが、度合いも違う。
突如、街頭でマイクを向けられ、笑う・黙る・怒る・まくし立てる。作り込みや物語のおもしろさではない。不意に飛び出す瞬間的な人間っぽさがリアルでおもしろい。ああ、そうだ、街頭インタビューっていうのはこれだからおもしろいんだよ。製作しているのは現役大学生の二人組みだ。HEAPSは今回、その製作現場に立ち会いながら取材をしようと思う。
無言で苦笑するおっさん。マイクを振り払う女性。本気で怒る男。
あたりにいる人々の様子をじっくり観察する。「あ、この人」。直感的に狙いを定めたらそそくさと駆け寄り、マイクを向け、挨拶なんて置いといて単刀直入に質問を投げかける。
2019年9月にスタートした、街頭インタビューシリーズ「サイドトーク(Sidetalk)」。毎度1つのお題について、ニューヨークにいるいろんな人たちにインタビューする1分間の動画シリーズだ。運営するのはニューヨーク大学(通称NYU)2年生の二人組。MC担当のトレント・シモニアンと、撮影担当のジャック・バーン。放課後になると街に繰り出し、撮影し、編集し、インスタグラムに投稿する。動画1本の再生回数は平均10万超え(最高38万超え)。全51エピソード(1月下旬時点)をかいつまんでみるとこんな感じ。
・エピソード1「ニューヨークファッションウィーク」 :道行く人に、ファッションについて質問。
🎤1:「そのバレンシアガいけてんじゃん!」とスニーカーを指差し冗談を飛ばすと「そうじゃろ、駅で拾ったんじゃ」とうれしそうに返すホームレスの男性(もちろんバレンシアガでは、ない)。
🎤2:質問しようと近づく。「なにごとよ!」と、マイクを振り払う女性。
・エピソード7「気候変動」:気候変動デモがおこなわれたワシントン・スクエア公園でインタビュー。
🎤1:「気候変動に賛成か反対か」と聞く。無言で苦笑するおっさん。
🎤2:「気候変動は嘘か本当か?」と聞く。「1ドルくれたら答える」という男性(ちゃんと払った)。
・エピソード20「ユダヤ教の祭プーリーム」:仮装してパーティーを楽しむという、ユダヤ教の祝日。
🎤1:「今日の予定は?」と聞くと「フルルルー」と喉を鳴らす、ラビ(教師的存在)らしき年配男性。
🎤2:ホームパーティに潜入。マイクを奪い「トランプ2020!」と叫び踊る、超正統派ユダヤ教徒男性。
・エピソード23「トラヴィス・スコット・バーガー」:マクドナルドが限定で販売していたトラヴィス・スコット(ラッパー)とのコラボバーガーを配り、感想を聞く。
🎤1:おばあちゃん路上パフォーマー(上半身裸)が、おっぱいを揺らして応援(モザイクあり)。
🎤2:「トラヴィス・スコットの味がしますか?」に「ファック・ヤー、トラヴィス・スコット・オールナイト・ロング」と、ノリよく答える男性。
・エピソード30「ニューヨークは死んでない」:コロナで元気のないニューヨークは本当に死んでいるのか、タイムズスクエアにてインタビュー。
🎤1:「はぁ? 見てみろよ」と言い、人があふれるタイムズスクエアを指差す青年(横から友だちが即興ラップ)。「今晩はなにしているんですか?」の問いには「チルして、売春婦探してる」
🎤2:上半身裸で胸筋をリズミカルに動かしている男性。「お名前は?」の問いに「ビッグ・チョコレート・ダディー」と瞳孔を開かせながら、自己紹介。「女性諸君、スターバックスに行ってもこんなホットチョコレートは手に入れられないぜ」
・エピソード35「トランプラリー」:タイムズスクエアで行われたトランプラリーにて。
🎤1:「トランプを応援するために来た」と熱弁ふるう男性にインタビュー中に、「ふざけんな!」と割って入る女性。
🎤2:「フェイクニュースに騙されるな」とトランプ支持派の男性に、討論を持ち掛ける青年(理由は不明だが、その後トランプ支持派の男性は逮捕された)。
🎤3:「選挙なんて俺には関係ねぇ。金を稼ぐためにハスリンしてるんだ」とのたまい、混乱の様子をスマホで撮影する男性。
どうだろう、インタビュー相手のキャラの濃さったら。「なんでその人に聞いた?」と突っ込みたくなる人選がツボをつき、仕込まれた安定のおもしろさではなく、不意に出る瞬間的で多様な人間らしさがクセになる(やらせなしのぶっつけ本番だから、中にはマジで怒られたり罵倒を浴びせらる動画も)。
人種やセクシュアリティなどの観点から「多様性」が叫ばれる昨今だが、サイドトークを見ると、社会性や時代性などを抜きにして純粋に「いろんな人がいるもんだなぁ」「強烈キャラでも多種多様あるんだなぁ」とつくづく思う。というか、思い出す感覚さえある。
彼らが撮る街頭インタビュー動画のおもしろをもっと探りたい。連絡してみると「月曜日は授業があるから、それ以外ならOK」とのこと。放課後によく行くという大学前の公園で落ち合うことにした。若い2人だし遅れてくるかもしれないな、と色眼鏡で見ていたことを謝罪したい。お揃いのサイドトーク・オリジナルフーディーを着て、約束の5分前に来てくれたのだから。
HEAPS(以下、H):お揃いのフーディー。いま売り切れ中の人気アイテムですね。
Trent Simonian(以下、T):そうそう、だからいま追加オーダー中。次のはね、バックプリントにインスタグラム名を入れてみた。(写真を見せながら)どう?
H:イカしてます。NYU2年生なんですよね、二人とも。トレントはフィルム専攻で、ジャックはビジネスとエンタメ専攻。大学で知り合ったんです?
T:ううん、大学入学前からジャックのことは知ってたんだ。僕はカリフォルニア出身なんだけど、ジャックがなぜか僕の兄と知り合いで。それでインスタグラムを通してまず繋がった。
H:「サイドトーク」をはじめようと思ったのはいつ頃なんでしょう。
T:大学入学時にはすでにサイドトークのアイデアがあったんだ。僕もジャックもイケてるものをつくるのが好きで、大学がはじまるときにはニューヨークで会えるし、じゃあ一緒になにかしようって流れでサイドトークをやることになった。大学1年のときに始動したんだ。
H:二人とも番組づくりや撮影の経験はあった?
T:高校時代、「シャークTV」っていう街頭インタビュー形式の番組をつくってたんだ。ホストをしたり、編集をしたり。それがすっごくたのしくて、せっかくニューヨークに行くんだし、この経験をレベルアップさせてなにかやってみたいなって。
Jack Byrne(以下、J):J:僕は14歳のときに「ザ・ファット・ジューイッシュ」で働きはじめたんだよ。ミーム(ネット上で拡散されるネタ画像や動画)を投稿する、フォロワー1,000万人越えのインスタグラマーね。やっていたことは、いまみたいにビデオグラファーではなくて、コンテンツのアイデアを考えたり、人とのコネクションをつくったり。おかげでいろんなことが学べたよ。ちなみにいまも彼のもとで働いている。
T:ジャックはインスタグラムに精通しているし、僕は編集が得意。 お互い、サイドトークをつくるための知識と経験はじゅうぶんに持ちあわせていたんだ。
H:トレントはMC専門かと思いきや、編集もするんですね。
T:するよ。
J:トレントはクリップの使い方が上手いからね。
T:どっちかがするというより、二人で一緒にしているンダ。「この人入れた方がいいかな、それともこの人を2、3秒入れた方がいいかな?」って感じで、お互いの意見を話し合う。
H:二人のコミュニケーションがキー。
T:その通り。「どちらかがおもしろい」と思うものじゃなく「二人ともがおもしろい」と思うクリップを使う。
J:その方がいい動画に仕上がるから。自分のユーモアの物差しだけでなく、他人のユーモアの物差しも時には必要だと思うし。
H:信頼しているから物差しを交えられるんでしょうね。おもしろさ、バッチリ伝わってきます。いま、サイドトークは、一週間どんな具合で活動しているの?
T:ジャックは授業の数が少ないけど、僕は月曜から木曜までほぼ毎日授業がある。まだまだコロナ禍だけど、なるべく街に繰り出して撮影や編集をしているよ。最近はサイドトークを成長させるため、けっこうな時間を費やしている。
H:けっこうな時間って、どれくらい?
J: 週6くらいで活動してる。
H:ほぼ毎日。スタートから約1年半が経つけど、どのエピソードを投稿したあたりから「認知されてきたかも」って感じはじめた?
T:滑り出しはスローだったよね。
J:うん。はじめた当初は、動画を投稿しても1日にフォロワーが5人増えるくらい。
T:バズったのは突然。キッカケはエピソード9の『ジョナ・ヒルの誕生日』。
H:俳優/映画監督ジョナ・ヒルの誕生日を道行く人と祝った回だ。自分、コメディ映画『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(2007年)からのファンなのであがりました。
J:ジョナ本人が動画を見てくれたらしく、DMが届いたんだ。「最高に笑わせてもらった。ありがとう」って。
T:この動画でフォロワー数が800人から1,500人に増えて、軌道に乗るキッカケになった。それから話題になってたくさんの人が動画を共有してくれたンダ。
J:ニューヨークには、写真家、ビデオグラファー、ジャーナリストなんかが集まる巨大なクリエイティブコミュニティがあるんだけど、少しでも話題なると、そのコミュニティの人たちと一気に繋がることができる。実際に、1週間で20人のニューヨークタイムズの記者たちがサイドトークをフォローしてくれたことがあった。
T:極めつけは、エピソード20の『ユダヤ教の祭プーリーム』。この動画でガツンと知名度が上がった。見てくれた?
H:もちろん! 再生回数約15万回の人気エピソードです。謎多き超正統派ユダヤ教徒と一緒に踊り狂うという、異様な光景を納めたレア動画。これ、無許可で自宅パーティに潜入したって聞いたんですけど、マジ?
T:マジ。文字通り無許可で潜入。
H:わぁ。
T:招待なんてされてないし、そもそも知り合いも皆無だから。本当、勢いで潜入した。
H:厳格な戒律を守って慎みを重んじる、それがユダヤ教。そんな彼らの神聖なコミュニティに、勢いで潜入したと。
J:だから、すぐに追い出されちゃったよ。僕らがそこにいれたのはたったの45秒。
T:ひと通り踊った後は「オケ、バイッ!」て感じでソッコー強制退出。
H:一緒に踊っちゃう正統派たちがいたのが意外でしたよ。
T:あ、そうだ、それでこの動画が僕らが知られるようになった極めつけなわけだけど、そもそもこれを撮ろうとなったことにもきっかけの人がいてさ。ニューヨーク・ニコって知ってる?
H:知ってますよ。彼もニューヨークのおもしろいローカルな人を紹介する動画をつくってますよね。以前HEAPSでも取材した、路地裏でスイングする有名ゴルフおやじタイガー・フッドが「俺の知名度が上がったのはニコのおかげだ」って言ってました。
T:ニコが僕らのことを知っていてくれて、ユダヤ教の祭プーリームのことを教えてくれたんだ。で、ニコはこの動画を自分のインスタグラムに「この動画はおもしろい」と投稿。それでフォロワーが激増した。
J:一気に5,000人くらい増えたっけ。
T:でもタイミング悪くてさ。その動画がバズったすぐにコロナが直撃。しばらく動画を撮ることができなかったんだ。
H:あちゃー。しかしロックダウンの期間を乗り越え、現在ではフォロワー17万人超え。
T:みんなこういった類の動画を共有するの、好きだしね。
J:それにテーマもいい感じだからじゃないかな。
H:テーマ、カオスです。「リス」、「公園」、「バレンタインデー」といった当たり障りのないものから、「ペンステーションの嬢王(マンハッタンのペンシルベニア駅に頻出するホームレス女性)」、「選挙の夜のトランプタワー前」、「ヤムズの日(ハーレム出身のヒップホップクルー、エイサップ・モブのメンバーであるヤムズの命日)」といった、ニューヨークをレペゼンしてるものまで。
J:なるべくニューヨークのバイブスを伝えられるようなコンテンツづくりを意識している。ここで大事なのが、インタビュー相手選びなんだ。
H:サイドトークのおもしろみの一つは、間違いなく「人選」ですね。たとえば「ニューヨークファッションウィーク」では、ホームレスの男性や旅行者に話しかけ、「気候変動」では気候変動に関心のなさそうなおっさんにインタビュー。こうしたあえての人選って、わざと?
T:うん、わざと。インタビュー相手を選ぶときは、人間観察にたっぷり時間を費やす。じっくり見極めてから、おもしろいことを言ってくれそうな人のもとに駆け寄る。
H:おもしろいってのは、予想の範囲をハズレそうってことですね。
T:だって、普通の人に普通のことを聞いたって、普通の答えしか返ってこないじゃん。サイドトークでは、人とは違うおもしろい答えを引き出したい。
J:これでもかってくらい観察するよ。これ、なによりも大事だと思ってる。
T:興味深く、おもしろく、何より「違った」ことを言ってほしいからね。
H:人選もしかり、もうひとつのおもしろみは、作り込みのおもしろさではなく、怒ったり、なにも発言できなかったり、恥ずかしそうにしたり、と瞬間的な人間の反応を捉えているところ。人間性を捉えることを意識してる?
J:もちろん。これはサイドトークにとって重要な要素だからね。不意に出ちゃう人間性を引き出すために、インタビュー相手には「調子はどう?」といった他愛もない質問からしていく。それが出てくるまで30分ほど粘る、なんて日常茶飯事。それを僕ら1分間に編集してるというわけ。
T:「どうせこう答えてって頼んでるんだろ」って言われることもあるんだけど、そんなわけない。やらせなんて一切ない。そうそう、昨日いいクリップが撮れたから見せてあげる。
彼、テンション上がっていきなりバク転したの、夜の11時に。
H:突然のバク転(笑)サイドトークには「いまそれ言っちゃう?」みたいな人とか、マシンガンのようにまくし立てる人とか、けっこういるよね。そういう「リアルな人っぽさ」が出ててるところがとても好きなんですが、期待通りの回答をくれそうな人とか、なんとなくわかるもんなんですか?
T:僕らはほぼ毎日インタビューしてるから、おもしろさを引き出せそうな人の見極めは得意だよ。慣れてない人には難しいと思う。「この人おもしろそうだから話を聞こう!」っていう、化学反応みたいな感じ。やり続けてきたからこそ備わったものだよ。
J:周囲からはよく「この人おもしろいからインタビューしたほうがいいよ」とアイデアを貰う。でもそういうのに限って、99パーセントの確率でいいのが撮れない。
H:そういう人たちって、2人にインタビューされるとわかってるから、おもしろい答えを返そうと構えに入っちゃうわけだもんね。それじゃあサイドトークが一番引き出したい、不意に出る人間味ではなくなってしまう。
J:うん、その通り。
H:動画にはNYのクリエイティブ界隈やSNSインフルエンサーも出演していますね。タイムズスクエア名物の裸ギター男、マンハッタン出身のラッパーリーキー・バンズ、マンハッタン出身の俳優マイケル・ラパポートなど、NYのクリエイティブ界隈やSNSインフルエンサーも出演。彼らには積極的に出演依頼をしているとのことだけど、もともと横の繋がりがあったり?
T:僕は2019年に大学のためにニューヨークに来たから、横の繋がりなんて全然なかった。インフルエンサーたちとはサイドトークで繋がったんだ。彼らが快く出演してくれるのは、僕らがサイドトークに取り組む姿勢やコンテンツ内容を気に入ってくれているからだと思う。
H:インフルエンサーたちの回ももちろんおもしろいんですが、やっぱりサイドトークの街頭インタビューって一般人だからこそのおもしろ味がある。このおもしろさって、なんだと思う?
T:多くの人が実はクレイジーな面をもっているんだよね。でもそれを見せる機会がいつもあるわけではない。そんななか、キッズ(自分たちのこと)がマイクとカメラを構えて近づいてきたら、おもしろくなるしかない。
H:なるほど。過激さをとらえることもありますよね。“アンチマスク派”がマスクに火をつけた「アンチマスクラリー」には驚いた。度を越して公開できなかった動画っていうのもこれまであった?
T:たくさんあるよ。見る人が不快になるような下ネタ、性的なネタなんかはカットする。あと“お母さんには見せられない”ような、行き過ぎたおもしろさもNG。
J:それから、人種差別発言があるものは絶対載せない。
H:インタビュー中にヒートアップしちゃって、相手の暴走トークが止まらないなんてこともあると思う。そんなときの対応術、ある?
T:聞き流しながら「次の質問!」と話題を変える。ジャックがカメラの後ろからアイデアをくれるんだ。一度、通りに停まっていたアイスクリームトラックを指差してくれて、僕は「ところで好きなアイスクリームの味は?」って切り替えられたんだ。
H:いいチームワーク。ときに、仕込みなしだからこそ邪険に扱われていることもあるじゃないですか。「ニューヨークファッションウィーク」の回ではベンダーのおばちゃんにマイクを振り払われ、「リス」の回では歩行者に「どけクソ」と暴言を吐かれて。正直、時々、辛くないですか。
T:そういう状況にならないように注意はしているんだよ。インタビュー前の観察時点で、暴力を振るわない程度にクレイジーな人であることを確かめるようにしている。でもたまにそうやって怒られることもある。一度、追っかけられたこともあったな。そういう時は落ち着くように話をするよ。
J:波風立てないようにね。
T:とはいえそういう状況には滅多にならなないけどね。カメラに向かって話すのが好きな人の方が多いし。声をかけた9割には無視されたり断られてしまうから、正直、拒否されることには慣れちゃった。
H:知名度がグンと上がった二人、これから身バレすることもあると思う。インタビュー相手が自分を良く見せようと構えてしまって、人間味が引き出せないこととかを考えたりする?
J:すでに身バレすることも少なくない。でも僕ら、すでにサイドトークを知っているような人にはインタビューしないんだ。インタビュー相手の9割は、インスタグラムさえ持ってないような人たちだから。
H:サイドトークから見える多様性には、当たり前に「いろんな人がいる」ということを思い出します。人種や性といったことから語らずとも、ストーリーや背景ではなく、その時の反応や瞬間の発露にある個性、その人間らしさが現れていて、そういやいろんな人がいるよな、そうだよな、と。
J:僕らのインタビュー相手は、働き者の普通の市民。そこに、さまざまな個性があらわになっているんだ。
T:工事現場の作業員だったり、仕事を終えた人たちだったり、普通の仕事をしている人たち。本当の意味でニューヨークらしい人たちや、ニューヨークを支えている人たちなんだ。ニューヨークシティで生きて、毎日さまざまな経験をしている人たちに、濃いキャラクターがあるんだと思う。ちなみにファーストレスポンダー(警察官・消防士・救急隊員など,事故などの現場に最初に到着する緊急対応要員)たちは、なぜか決まっていつもおもしろいんだ。
J:この人間的な雑多さがなかったら、サイドトークはこれほどおもしろくなってなかったんじゃないかな。
Interview with Trent Simonian and Jack Byrne
Photos by Kohei Kawashima
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine