世界にたった一人だけの人へ。他と絶対かぶらないプレゼント、「オリジナルソング」を代わりに作ってくれるサービスが流行中

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古代より、人は叙情あふれる詩歌を作る文化を築いてきた。愛する人へ、神や仏へ、想いを歌にのせて…。その習性は、現代に生きる私たちにもまだ、遺伝子レベル残っているのかもしれない。

「Songfinch(ソングフィンチ)」
は、あなたの大切な人のために、世界に一つだけのオリジナルソングを作ってくれるサービス。2016年10月に米国シカゴで創業し、昨年のクリスマスシーズンから急成長中だ。「約3ヶ月で250のオリジナル曲の作りました」ということは、毎月、80曲以上の新曲を出していることになる。

やっぱり人は、特別な体験、ロマンティックを欲している?

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 誕生日や母の日、ウェディング、クリスマスやバレンタインデーなど、特別な日やイベントに、大切な人へ「オリジナルソング」を贈るというのは、なかなか古典的でロマンティック。
 ただ、私はロマンティックなことに縁がないせいか、そんなサービスがウケていることにやや驚いた。「想いは手紙かメールで伝えればいいだろうよ?」と。だが、ふと思った。時代はシンプルを求めているといいつつ、「ロマンティック」も欲しているのではないか。

 消費者がブランドとの間に、アーティストがファンとの間に、個人同士の間に、つまりは誰もが「パーソナルな交流、つながり」を求めるようになって久しい。大切な人への贈り物も、高価であることより、他にはない「パーソナルなもの」が良いと考える人が増えていたり、お金がないからではなく、あ・え・て時間をかけて手作りすることに「価値を感じる」とか。これらの「パーソナルなつながり」って、頭に「ロマンティックな」がついている気がしないだろうか。

 巷では、いろんな “手作り” が流行っているが、「ラブソング」をイチから作るのは、どうもハードルが高い。楽器の経験がある人でも「もうすぐ母の日か…。そうだ、オリジナルの曲をつくってプレゼントしよう」とはなかなか思わないだろう。そこで「Songfinch(ソングフィンチ)」https://www.songfinch.com/が簡単で便利だ、という話。
 ウェブサイトにいくと、まず以下の質問を答えるところからはじまる。

I want to give _____(person, relationship)
a song for _____ (occasion)
that will make _____ (desired reaction)

「自分とどんな関係の誰」に、「いつ、どんな日に」曲を贈りたいか。
 また、その人を笑わせたいのか、感動して泣かせたいのか、元気づけたいのか、など、どんなリアクションが欲しいのかを明確にする作業からスタート。

 ウェブサイトで流れるサンプルを見てみるとこんな感じだ。

花嫁へ。
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ぼくらの結婚式の日の朝のために。彼女に、美しいとそして愛されていると感じてほしい。

ボスへ。
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彼の退職の日のために。思いでを振り返って、笑ってほしい。

 あとは、その人との具体的な「思い出」や「会話」「二人だけのジョーク」「メッセージ」などを伝えるだけ。発注ボタンをポチってから一週間以内に、超パーソナルな歌詞付きオリジナル曲が届く。曲のジャンルは指定できないが、ボーカルは選べるそう。料金は一曲200ドル(約2万2000円)。どんな曲があるのか気になった人は、ここから聴ける。

 共同創始者のひとり、John Williamson(ジョン・ウィリアムソン)は、同サービスのニーズを感じた瞬間をこう振り返る。
「兄弟の結婚式がきっかけです。ぼくはスピーチを任されていて、それなりに感動的なスピーチを披露したつもりだったのですが、ゲストたちの反応はイマイチで…。一方、ミュージシャンに作ってもらったオリジナル曲には、目に涙を浮かべる人もいた..。非常に反応が良かったんです。
演奏したミュージシャンは、僕が仕事を頼んだ人たちで、新郎新婦にとってはあくまでも他人ですよ。それでも、親族である僕のスピーチより、彼らはゲストを感動させることができた。この時、オリジナルソングの持つポテンシャルに気づきました」

 ソングフィンチが曲を作ってきた実際のシーンを一部紹介しよう。

妻と子どもたちへ。
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クリスマスの朝、プレゼントを開ける前に。みんなでニコニコして、笑って、家族の絆を感じてほしい。

息子へ。
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四度目の配属(軍隊)のとき。私たちが彼を愛していて、いつでも思っていて、そして応援していると感じられるように。

ビジネスパートナーへ。
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会社設立7年記念。彼(ビジネスパートナーであり友人)に喜んで、そして自分を誇りに思ってほしい。

 ソングフィンチは依頼に応じてミュージシャンを探し発注するという、個人とミュージシャンをつなぐエージェントの役割を担う。売り上げは、会社に50パーセント、ミュージシャンに50パーセントとという半分個制度。個人的には、もっとミュージシャンに支払われるべきでは? とも思うが、もうひとりの創始者Rob Lindquist(ロブ・リンドクヴィスト)は「むしろミュージシャンからは、ポジティブな反応が多い」と話す。

 たとえば、「ウーバーの運転手やレストランで生活費を稼いでいたが、音楽で収入を得られるチャンスが増えて良かった」「たとえ知らない人でも、誰かを幸せにするために曲を書くのはやりがいがある」「支払いがはやいのが嬉しい」など。依頼内容にもよるが、ミュージシャンの一曲あたりの制作時間は約3〜4時間。3〜4時間で100ドル(約1万1000円)の収入と考えると、まぁ、時給は悪くない? それになんといっても、誰かを喜ばせている、いい仕事をしているという充実感がポジティブな体験に繋がるのだろう。

 最初は、「無名のミュージシャンが作る曲に、200ドル(約2万2000円)も払う人がいるのだろうか?」という疑問もあったが、サンプル曲をいくつか聞いてみて印象が変わった。とても短時間でつくったとは思えない完成度。音質も良い。それに、スマホにダウンロードすれば、自分だけの曲をいつでも持ち歩ける。なかなかいいサービスかも?

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Photos Via Songfinch
Text by Chiyo Yamauchi

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