30年ものあいだ、ハリウッド映画に中指を立て続け(愉快に)、全米のインディー映画オタクに愛されてきた伝説のファン・ジンがある。
制作は1985年からで、当時いち高校生であったChris Gore(クリス・ゴア)が作り手の『Film Threat(フィルム・スレット)』。
80年代といえばプリンターが普及しはじめた時代で、ジンの黎明期。音楽やスケートジンが巷で出回るなか、無類の映画少年だったクリスはメインストリームからまともな扱いをされないインディー映画をフィーチャーするジンを作り上げた。
誌面では、クエンティン・タランティーノやスパイク・リー、コーエン兄弟、ガス・ヴァン・サントなど、いまではすっかりアカデミー賞常連となった監督たちのインディー時代の足跡が見て取れる。
知る人ぞ知る『フィルム・スレット』だが、この度、2010年よりちょっと長すぎた息抜きを経てカムバックする。しかも、アプリやポッドキャストを携えパワーアップして、だ。
クリス曰く、「ソーシャルメディアがあるいまは、インディーフィルムにとっての新たなゴールデンエイジ」なのだとか。
クラウドファンディングによって誰でも映画制作資金集めができるようになり、より多くのインディーフィルムメーカーが生まれてくる。となれば同時に必要なのは新たなインディー映画が育つ土壌。インディー映画を支え続けその歴史を語り継ぐ、こういうジンみたいなものが必要なのだ。
インディー映画へのアツい思いからジンを生み出したクリス少年は30年経ったいま、あの頃の思いとアティチュードそのままで、もう一度甦らせる。次世代の鬼才は新生・『フィルム・スレット』から生まれるかもしれないので、要チェックだ。
Film Threat
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All images via Chris Gore
Text by Shimpei Nakagawa