2000枚の削除ポストを見た。やりたい放題インスタ女子モリー・ソーダと話し合う「過激なセルフィーをポストする女子の心理」

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やりたい放題ポストするお騒がせインスタグラマー、Molly Soda(モリー・ソーダ)。いま、彼女が出版した写真集が話題だ。というのも、そこに載っているのは「実際にインスタに削除された」画像のみ。約300枚、ぜーんぶだ。ところで、「なんで女子って、SNSでやりたい放題(時にエロ)ポストしたがるんだろ?」。ここはひとつ、掲載用に大量の削除画像を吟味してきたモリーちゃんに、(本人含め)彼女たちの心理というものを聞いてみよう。

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Molly Soda, モリーちゃん。

ネットの住人歴14年

「私って何座だと思う?」。アンニュイな表情のセルフィーでフォロワーに問いかけたかと思ったら、お次は口まわりのヒゲもいとわない歯のドアップ(しかも、カレーを食べたのか黄色い)画像に、透け透けパンティから大胆にはみ出すナプキンと陰毛画像。モリーちゃんは自由奔放。「載せたいと思ったものを載せる」彼女のページに、ルールなどない。

 14歳からネットの住人で、現在はデジタルアーティストとして主にオンライン上で活動する彼女。GIF作品がMTVミュージックビデオアワードで発表されたり、コンプレックス誌の「最も重要なアーティスト」のひとりに選出されたりと、割と有名人だったりする。

 そんな彼女が先月、ネット上で出会った友人と出版したのが先に述べた写真集『Pics or It Didn’t Happen: Images Banned From Instagram(インスタに削除されたポスト集)』。インスタに削除された大量のポストを、彼女らが300枚にキュレーションしたもの。内容が内容だけに発売前から注目を集めていた。

 友人まわりからスタートし、世界中から寄せられた大量のポストを見ることとなったモリーちゃんたち。今回、彼女がその制作過程を通して感じたものを語ってもらうべく、図々しくも自宅に押し掛けることに。ブザーを押すと、クシャッとした笑顔と「リサイクルショップで2ドルだった!」激安Tシャツで出迎えてくれた。

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HEAPS(以下、H):お邪魔します!てっきりブルックリンのヒップなところに住んでいるかと思いきや、へんぴな所ですね。

Molly Soda(以下、M):いらっしゃい!私、オンとオフを切り替えたい派なの。ヒップな場所だと、知り合いやフォロワーにばったり会っちゃうかもでしょ? そういうの、疲れちゃうし。ここは部屋も広いし、誰も私のこと知らないし、お気に入り。

H:へぇ、意外です。でも、そのティーシャツの袖から覗く脇毛、脱力感満載のDIYタトゥー。ビジュアルはインスタ通りです。

M:この絵文字タトゥーは友だちに入れてもらったの。

H:過激ポストで有名なモリーちゃんですが。現在、インスタのフォロワーは68K。いち女の子がここまで。すごいです。元々、インスタグラマーになりたかった?

M:「インスタグラマーになりたい!」なんて全然意識したことない。物心ついたときから自分のライフスタイルをネット上でシェアすることが普通だったから、その延長って感じなんだよね。ネットを使うことに違和感も特別感もないデジタルネイティブだし。タンブラーが流行りはじめた2009年頃から「モリー・ソーダ」を名乗りはじめたのね。もちろんモリー・ソーダという名前を自分で作り上げたから、それがオンラインでのもう一つの、いわば“演じる”ペルソナになることはわかっていたけど、ここまでになるとは思わなかった。最初は500人のフォロワーで「やったー!」なんてパーティーしたわ(笑)。

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モリーちゃんのお部屋にて。

H:人気の理由はなんだと思う?

M:えー、わかんない! 自分が投稿したいものを投稿してるだけだから(笑)。はじめた時期がよかったとは思う。タンブラーはリブログできたし、ツイッターもリツイートできた。拡散されやすいつくりになってたから、そのおかげで拡散されて。気がつけば、って感じ。

H:へえ〜。モリーちゃんのセルフィー、自然体でいいなと思ってました。なんかちょっと変さもありますよね。

M:(爆)

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H:あ、いい意味でですよ。なんていうか、力みがないんですよ。どれだけセルフィー載せまくってても「わたしいいでしょ!?」感がないっていうか。

M:ありがとう。いま28歳なんだけどさ、14歳からブログやってるのね。だから「自分のことをシェアする」ってことをもう人生の半分の期間やっている。だから「さっ、インスタポストしよっ」て意気込むんじゃなくて、なんていうんだろ、さささ〜って撮っちゃえるところがあるから、自然体に見せやすいのかも。

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H:いわゆるキメ顔ポストより、ちょっとブレちゃってるようなポストの方が多いですもんね。自分のインスタポストの狙いとかないんですか?

M:「クールに見られたい」っていうのはあるよ。

H:クールに見られたいのに、歯のドアップとか陰毛はみ出てたりとか、下からアングルの二重あごセルフィーを載せるんですか? 悪印象になるかもしれないものも多いですよね。

M:「いつもバッチリキメてる」っていうのがわたしの考えではクールじゃないから。「モリーって人と違ってちょっと変わってるな」って思われたいの。それが私のクールの定義。

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H:なんだか、少し前の主流のセルフィーとは変わってきている感じがします。単純に「かわいく見せたい」とビジュアルにフォーカスしていたのが、「ほのめかす」ところにきているような。「こういうのを取る人」つまりパーソナリティの表現までインスタで行っている。モリーちゃんもそうですよね。今回出版した写真集のために集まった“削除ポスト”では、どういうインスタ写真が多かったんでしょうか?

M:まず、世界から2000枚もポストが集まったのね。で、性別はほぼ女性、年齢は20代前半から30代。細身の白人が大半以上。まさかの、ぽっちゃりさんはあんまり。「自分の身体に自信のある人」が多かった印象がある。

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『Pics or It Didn’t Happen: Images Banned From Instagram』

H:写真集には男性から届いたものも掲載されてましたよね?

M:ええ、全対比は女性からのものが圧倒的に多かったけど、男性からのものもチラホラあったわ。

H:その、ぽっちゃりさんがゼロ、という所ですが。自分に自信があるから載せているんでしょうか? でも、過激なポストしている人はいろーいろ多岐に渡っていると思うのですが。

M:削除のシステムなんだけど、あれってまず「誰かが通報する」のよね。この人のポスト不適切です、不快ですって。だから、フォロワーゼロ、もしくは鍵をかけて本当に少数のみに向けて公開している場合、削除されないはず。

H:なるほど…。てことは「自信満々の行き過ぎたセルフィー」が人を不快にさせやすいということが言えるかも。女性って、男性よりもやっぱりセルフィーするの好きですよね?

M:そう思う。女性って男性に比べて、自撮りに抵抗を感じないよね。ただ、女性がちょっと露出の多いものを載せるとエロ、と思われることが多いと思うんだよね。意識されやすいっていうか。

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H:確かに、女子のセルフィーの方が“裏を読まれがち”な感じがします。たとえば、子どもやペットとのツーショットなんかを載せてると「自己アピールでしょ」と取られたり。男子の方がそういった同じような写真を載せても捉えられ方がスムーズというか。セルフィーが悪目立ちするんですかね。なんで女子ってSNSにセルフィーをポストしたがるんでしょう。

M:フェミニズムを主張するための人もいれば、アートだという人もいる。それからもちろん、おもしろ半分とかただの自己満の人も。結局、人それぞれだと思う。だけど、「自信がつく」というのはあると思う。私にしてもクールを肯定されていると感じられるし。

H:いいねの数が多ければ、自信がつくし、逆にいいねが少ないと「え、このわたしダメだった?」なんて思うこともあります。

M:そうね。インスタのいいねの数って、「自分について」の新しい評価基準みたいなものになっていると思う。ただ、オンライン上でいくら良質コメントやイイネを貰ったって、あなたのコンプレックスは変わらないし、なくならない、ということを忘れたくないな、と思う。私の友だちでもいるけど、「オンライン上ではHOTに写るけど、普段とのギャップがいやで実際のデートには行きたくない」とか言う子、いるし。

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H:ほうほう。なんか、オンライン上でより良いアイデンティティを見せているような感じもあるのかな…。

M:オンライン上の自分ならいくらでもコントロールできるからネット上で自分のアイデンティティを楽しむことができる。私の場合は割と自然体に見えるけど、それだって別にナチュラルなわけではない。ナチュラルなポストなんてもはやこの世にないでしょ。

H:ナチュラルポストですら、ナチュラルに見せるって行為ですもんね。

M:わたしだって「見られる」ということを意識する。完全に現実とネットを使いわけている子もいるでしょ。オンライン上の決まりきった角度の自分を過大評価しすぎて、画面の向こう側のオンライン上の自分と、こちら側のリアルな自分とのギャップに戸惑う子もいる。

H:普通のセルフィーを通り越して、エロポストしちゃうのはなんでなんでしょう。これも、自信がつくんですかね?

M:これってさ、これまでの社会のあり方とも関係していると思っていて。というのも、近代美術から「女性のヌード」は一つの題材として広く取り扱われてきたじゃない、美の象徴として。だから、女性の見た目というのは男性のそれ以上に、その人の価値基準、判断基準を左右するものとして無意識にも根付いていると思うのね。やっぱり、昔から女子の方が鏡見て育つじゃない。
だからセルフィーで自分を発信するのって、それに対しての女子たちの反応だと思う。自己アピールしている人もいれば、それに反するように「女子っぽくない」写真で対抗している人もいるし。一種の反応なのかも、って。

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H:なるほど。

M:わたしの場合、乳も出すしヌードもあるけど「自分がエロいポストをしている」って自覚、ないのよね。どっちかっていうと「こんなことしちゃってる」自分を見て欲しいというか。ちょっと過激で恥ずかしくなるような私も見てほしいんだよね。ただ過激ではなくって、見ている人が「あるある」って思えるような。

H:ビジュアルそのものよりも「行為」を見て欲しい、ってことですね。お腹の毛とかちっちゃいパンツからはみ出しちゃった陰毛とか、女の子は超「あるある」です。モリーちゃんは、削除されようとこれからも自分のスタイルでセルフィーをポストし続ける?

M:どんな画像が削除されるかは大体わかる。サイト側の「ポリシー」だって理解できる。だから削除されても驚かないし、怒りなんてもちろん感じない。作品やアイデア、表現の場としてアクセスしやすいから、使い続けているだけだから。欠点は多いし、脆弱ツールだと思うけど、これからもセルフィーはポストし続けるわ。「私」を発信するためにね。

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Molly Soda

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Photos by Sako Hirano
Text by HEAPS, Editorial Assistant: Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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