日本でもすっかりお馴染みのニューヨークはブルックリン、ウィリアムズバーグ地区。いまやその面影はすっかりナリを潜めたが、20年余前はだいぶアブなかった。犯罪多発地帯でギャングか捨て身の行商人(と物好き)以外、誰も好んで住もうとは思わない街。
それが、1990年代後半から2000年代初頭、アーティストや若者、企業が移動し「クリエイティビティ&ものづくり」も西・マンハッタンから東・ブルックリンに大移動、そのおかげですっかりと変貌を遂げた。
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クリエイティビティの“東への移動”による街の変化はいま、東京にも見られるようだ。いわゆる下町といわれてきた日本橋や蔵前などの「East Tokyo(イースト・トウキョウ)」エリアにここ数年で現代のクリエイティブ人材が流入、アトリエやクラフト系ショップが続々とできている。蔵前にいたってはすでに“東京のブルックリン”と呼ばれているとか。
昨年10月、日本橋の馬喰町(ばくろちょう)に誕生した「馬喰町FACTORY」も好例。ここ、アートからビジネスシーンまで幅広い用途で利用できるシェアビルだ。
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築50年の元スカーフ問屋だった建物をリノベーションした3階建ての複合施設で、1階はアートスペース、2階はシェアオフィス、3階はミーティングスペースとフロア毎に異なる機能を持つ。
入居者には、国際色豊かなクリエイティブ集団Konel(コネル)や大阪発のミックスメディア・プロダクションCOSMIC LAB(コズミック・ラボ)、ドローンによる空撮のプロ集団Heliographie(ヘリオグラフィー)など賑やか。
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新たなハブとして好調な馬喰町FACTORYだが、次の課題は「最高の屋上を作る」こと。更地のままで活用しきれていない屋上をテラス化し、疲れた時や行き詰った時にホッと一息・気分転換でもっと快適にものづくりに取り組める環境にしたいという。
近辺には一泊2000円代で泊まれるドミトリーもあり、近隣施設とのコラボレーションも進め、企業が“東京”で合宿できる場を作る計画だ。
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古くから卸問屋や職人が多く存在、日本のものづくりを支えてきた下町「イースト・トウキョウ」。馬喰町FACTORYのような新しいものづくり拠点が誕生するすぐ隣では、下町らしい昔ながらの風景も健在。屋上で新旧の「ものづくり」が共存するエリアを眺めながら、クリエティビティの捻出でオーバーヒートしてしまった頭をクールダウン、なんてのもいいんじゃないだろうか。
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Text by Shimpei Nakagawa, Edited by HEAPS