リカちゃん、バービーはダメ?「わたしの人形は“わたし似”」が当たり前になる日

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世界中の子どもたちが、自分の外見と似た人形で遊ぶ日ようになる日が、もうそこまで来ている。リカちゃん、バービーなどのいわゆる「理想の人形」よりも、自分に似ている人形の方が良い理由がある。

2000万円で、女児の心を救う

 ある日、ソフィアは泣きながら、両親にこう訴えた。

「わたしはかわいくない。全然かわいくない。こんな髪の毛いやだ。ブロンドのストレートヘアが欲しい!!!」

 ソフィアの髪は縮毛だ。幼い娘が、自分の褐色の肌やふっくらした鼻や唇まで、生まれ持った外見を嫌がっていることを知り、両親は愕然とした。彼女は、人形と自分を比較して「自分はかわいくない」という結論に達したのだ。

 ソフィアの母、アンジェリカはこう話す。「そのブロンドヘアの人形を買いあたえたのは母親である私です。責任を感じました。そこで、ソフィアに似た可愛い人形を買おうと、必死に探しました。しかし、ソフィアのような縮毛で褐色肌の人形がどこにも見つからなかったのです」。 

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 2015年、アンジェリカは夫ジェイソンと「ナチュラリー・パーフェクト・ドールス(Naturally Perfect Dolls)」を創設。最近では、1月に放映された米テレビ番組『シャーク・タンク(Shark Tank)』(昔、日本で大ヒットした『マネーの虎』をモデルにした、夢を抱いた挑戦者たちが起業家たちを前にプレゼンを行い出資を願い出る投資番組)で、200,000ドル(約2000万円)の資金集めに成功した。彼らは肌や髪の色、体型の異なる4種の人形を販売し、将来的には「アジア系やヒスパニック系の人形も生産していきたい」と話す。

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アンジェリカと夫ジェイソン

ポイントは肌の色より「髪の毛」

 ダークスキンの人形ならこれまでにもあった。バービー人形で知られる米大手玩具会社マテルは、過去に黒人のバービーだけでなく、アジア系バービーなども仲間入りさせてきた。ただ、問題は髪の毛、だった。「どれも、黒人セレブ女性のような、縮毛矯正でストレートにしたものや、人工毛をつけるウィーヴ(日本でいうエクステのようなもの。ただしつけ方が異なる)スタイル。わたしたちが生まれ持ったカーリー&キンキー(縮毛の)ヘアじゃない」

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 ミレニアル世代のアンジェリカ自身、生まれ持った肌の色や髪の毛など「自分らしい美しさに自信を持てるようになったのは20代後半になってから」。それまでは、メディアや世間が提示する「美の基準」や社会の固定観念に振りまわされていたという。

「固定概念から、もっと早くに解放されていたら、どれだけ良かったか…」。そんな気持ちから、娘だけでなく、多くの少女たちの力になりたいと立ち上がった。世界中のカーリー&キンキー(縮毛の)ヘアの子どもたちに、「この人形に自分との共通点を見つけて、自分らしい美しさを知ってほしい」と語る。

 子どもが自分とそっくりの人形を愛でる。その行為を通して「自分はかわいい」という意識を目覚めさせる。日本でいったら子どもに、リカちゃんでもプリキュアでも、アナ雪でもなく、つるりとした和風顏の「市松人形を与えてみる」ような試みか。なかなか面白い情操教育だ。

All Images from Naturally Perfect Dolls

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Naturally Perfect Dolls

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Text by Chiyo Yamauchi

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