「違うよ、今夜はチャイニーズフード・ナイトだよ」遊びに行くより、箱入り中華のテイクアウト。A級ドラマのおいC、B級フード

シティの真ん中からこんにちは。ニュース、エンタメ、SNS、行き交う人から漏れるイキな英ボキャを知らせるHEAPS(ヒープス)のAZボキャブラリーズ。
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シリーズ「A級ドラマのおいC、B級フード」。人気海外テレビドラマの劇中に登場するB級フード(おやつも含む)と、それにまつわる英語を全4回にわたって紹介する。

小津安二郎監督の名作『秋刀魚の味』のトンカツや、マフィア映画『グッドフェローズ』のミートボールトマトソース煮込みなど、映画に登場する“映画飯”というものはたびたび紹介される。今回のシリーズでは、ちょっと変化球で、映画の代わりに「テレビドラマ」、飯の代わりに「B級フード(か、おやつ)」。“ドラマB級食”について、ときにシリアスに、ときにコミカルに、ときに愛をこめて言及する登場人物たちのセリフをかじってみたい。

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お皿に移すのではなく。お惣菜はプラスチック容器から、ケンタッキーフライドチキンはバケツから食べるのが美味しい。それと同じように、一度はやってみたい「中華料理のテイクアウトを箱から食べる」。海外ドラマや映画で見たことのある“あれ”だ。お家のソファでも、ベッドの上でも、オフィスのデスクでも、みんな一様に、白い四角い箱から伸びるチャオメン(中華焼きそば)を箸でつまみ、フライドライス(チャーハン)、ダンプリング(餃子)を、スプーンやフォークで口に運ぶ。

この米国特有の“チャイニーズテイクアウトの白い箱”の歴史を遡ってみると、なかなか興味深いものだった。日本の折り紙にインスピレーションを受けたともいわれているこの箱の起源は、19世紀後半、シカゴの投資家が特許を申請した「防水加工が施された紙の容器」らしい。当時、西海岸では、ゴールドラッシュの影響を受け、多くの中国人移民が自分たちの食や文化を携え米国へと押し寄せた。そして戦後、人々が郊外へと生活基盤を移すなか、中国系移民たちがテイクアウトのお店を次々とはじめ、この容器が使われるようになったという。そして70年代に、とあるグラフィックデザイナーが、赤字で「Thank you」という文字と仏塔を描き、“チャイニーズテイクアウトの白い箱”ができたというわけだ。

完璧、メイド・イン・アメリカな箱なゆえに、中国でも日本でもお目見えしない…のだが、ダイソーやアマゾンでも買えるらしい。雰囲気を味わうため、ペヤングや特製の中華料理をわざわざ箱に移して移して箱から食べる猛者たちの報告もネットにいくつか見かけた。

話はここまでにして。ドラマの主人公たちの“チャイニーズテイクアウト英語”を、冷めないうちに味わってください(冷めたら冷めたでおいしいんだけどね)。

1、『ギルモア・ガールズ』のティーンたちの本音「No men. Just lots and lots of Chinese food.(男はナシ。大量のチャイニーズフードはアリ)」

『フレンズ』や『ER』ほど知名度はないけど、マイペースに続きマイペースに愛されたのが、『ギルモア・ガールズ』。2000年〜2007年まで放映された、母と娘を描いたファミリードラマだ。舞台は、米コネチカット州の架空の町スターズ・ホロー。シングルマザーのローレライ・ギルモアと優等生の娘ローリー、母と仲の悪い祖母エミリーを中心に、ご近所の人たちも巻き込んで、人生や日常のさまざまなことを経験していく。2017年には、ネットフリックスで復活し新作がストリーミングされたり、今年は20周年を迎え、ドラマを回顧する声が聞こえてくるなど、いまでも静かに人気がある。

主人公の母親ローレライと娘のローリーは、友だちのように仲が良い。16歳で出産し手塩にかけて女手一つで育ててきたからこそ、結束はかたい。ローリーが名門高校に入学できることになったため学費を工面しようとがんばったり、娘の反抗期に手を焼いたりと、親子が直面するあんなことやこんなことも盛りだくさん。視聴者のあいだでは、ローリーのボーイフレンドとなる3人の男がかっこいい、や、ローレライのマシンガントークがウザいなど、さまざまな声が飛び交うが、それだけ意見が出るほどみんな見入ってしまうわけだ。

さて、ギルモア・ガールズにもチャイニーズのテイクアウトの箱が出てくるシーンが。それも1箱ではなく、すべて空になった6箱くらい。ローリーと友だちのパリスがパリスのアパートのソファで、チャイニーズを食べながら、なにやら、二人で一緒に住んだら…という話をしている。「壁を塗り替えようよ」と盛り上がっている。「ねえ、いいじゃん、このアイデア」とパリス。

You and me and a freshly painted apartment, no men. Just lots and lots of Chinese food.(あんたと私と、ペンキ塗りたてのアパート。男はナシ。大量のチャイニーズフードはアリ)

まあ、チャイニーズフードは裏切りませんからね、一部の男たちと違って。

2、『ビッグバン・セオリー』の金曜夜は「it’s Chinese food night.(チャイニーズフード・ナイトだよ)」

映画でも音楽でもドラマでも邦題というのは、トリッキーだ。原題よりもかっこいい風になった例(『Almost Famous』を『あの頃ペニー・レインと』に)もあれば、よくわからなくなってしまった例もある(『Groundhog Day』を『恋はデジャ・ブ』に)。副題というのも、際どい。原題にプラスする形で『アントラージュ☆オレたちのハリウッド』や『ハウス・オブ・カード 野望の階段』などがある。今回紹介するドラマにも副題がある。『ビッグバン・セオリー☆ギークなボクらの恋愛法則』。どう評価するかは、アップ・トゥー・ユー。

副題はともあれ、米国ではみんなが知っているドラマ、ビッグバン・セオリー。アメリカ人お得意のシットコムで、オタク男4人と美女3人が繰り広げるラブ・コメディだ。『フレンズ』以来の、男女たちのシットコム×ラブコメとして、爆発的な人気を得た。オタクといっても、千差万別だが、ビッグバン・セオリーに出てくるオタクは、理系オタクたち。レナードとシェルドンはカリフォルニア工科大学の物理学者で、ハワードは応用物理学のエンジニア、ラジェッシュは素粒子論的宇宙論を専門としていると、IQレベルが一流だ。そんな彼らの毎日に、向かいに住んでいるウェイトレスのペニー、ペニーの同僚バーナデット、エイミーがくわわる。

ある日、レナードはペニーに尋ねる。「なに食べた?」「フードトラックでサンドイッチ」。ここでシェルドンが「待って…。今晩は、金曜だ。これがどんな意味かは、わかるよね?」。ペニーは答える。「どこかでハジけちゃうって?」。シェルドンは、否定する。

No, that means it’s Chinese food night.(違うよ、今夜はチャイニーズフード・ナイトだよ)

金曜の夜は、ゆっくりお家でチャイニーズの出前をとって、箱から食べる光景がありありと目に浮かぶ。今週の金曜から、我が宅でもチャイニーズフード・ナイト、始めてみよう。

3、学者と捜査官の夜食も中華デリバリー。「If you keep bringing Chinese food in the middle of the night we’re both going to get fat.(真夜中にいつもチャイニーズ持ってきたら、太るよ)」

法人類学者ブレナン(愛称“ボーンズ”)を主人公に、事件現場の「骨」から証拠を掘り下げ、事件解決をする異色の犯罪捜査ドラマ『ボーンズ』。変死体や白骨遺体、身元確認ができないほど損傷の激しい遺体などが発見されると、FBIから要請を受けて、ブレナンが現場へ向かい、骨のかけらから被害者のこと(人種や年齢、性別、病歴など)を分析し、事件を紐解く。

ブレナンの相棒関係にあたるのが、FBIの殺人捜査班の特別捜査官ブース。やがて恋仲にもなっていく二人だが、まだそんなそぶりもない第一シーズンの22話では、こんなブースの“優しさ”が。
真夜中、ブースはブレナンのアパートを訪ねた。扉を開けたブレナンは「もう深夜過ぎなんだけど」。ブースは「通りがかったらまだ明かりが見えたから。ウォン・フー、どう?」と、中華テイクアウトのボックスを差し出す。ウォン・フーとは、ボーンズの劇中に出てくる中華料理屋で、ブースのお気に入りのお店。こ、これは…。すでにブレナンに気があるのではないか…。

それから、事件解決へと捜査は続き。別の夜、ブースはブレナンのアパートをノック。また手にはチャイニーズフードを持って。これにはブレナンも、

If you keep bringing Chinese food in the middle of the night we’re both going to get fat.(真夜中にいつもチャイニーズ持ってきたら、私たち太るじゃない)

そう言いつつも、箱を空にする二人。中華は、学者と捜査官の深夜の腹も満たします。

次回のシリーズは…
と発表したいところなのだが、実はまだ考案中。
もし、金曜夜のチャイニーズフードほどのいいアイデアがあったら、ぜひ教えてください。

Eye Catch Illustration by Kana Motojima
Chinese Takeout Box Collage by Midori Hongo
Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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