編集部が選ぶ今月のZINE3冊。テーマは〈生理とポジティビティ〉感情の激しさ、波ある心、おもたい生理痛、全部ひっくるめて肯定的にいられたら(いいのに)

「毎月辛いなと思うけど、生理と向き合いながら、いつも通り勉強したり、仕事に行ったり、家事をしたりしてるんだから、最高にイケてると思う」
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夏休みの宿題、もしいま小学生に戻ったら自由研究でジン作りたいなあ。世界一敷居の低い文芸で、ルールが存在しない世界一自由な文芸「ジン(ZINE)」。
今月紹介するのは「生理」がテーマの3冊。生理中の気分の浮き沈み、おもたすぎる生理痛、すべてのジェンダーに贈る生理の本。うち一人の作者の元には「生理中なのをどうバレないようにしたらいいか」という相談がよくくるんだって。

***

イライラ期、肌荒れ期、病み期。
6日間の生理痛と、激しい浮き沈み
Period Monthly

作った人:Hannah Lau-Walker(ハンナ・ラウウォーカー)

Image via Hannah Lau-Walker

生理中はどうしても情緒不安定になってしまうもの。生理中のココロとカラダに起きる変化を段階別でイラストと共に綴じたのが『Period Monthly(ピリオド・マンスリー)』。イライラ、肌荒れ、病み期など、生理中のことをキュートなイラストとともに。何度でも頷いちゃう内容になってます、はい。

———生理中は「その1、すべてのことにイライラ」「その2、肌が荒れる」、そして「その3、自分の存在意義に疑問を持つほど病みモードに陥る」。どれもこれも、わかるなあ。

そうだよね、生理中に情緒が不安定になっていくのは、みんなにとって、いたって普通なこと。だから生理中の自分を恥じたり責めたりする必要なんてないんだよって、知ってもらいたくて。

———ハンナさん自身、生理痛はひどい方?

私の場合は毎月毎月“違う生理”がくる。何事もないように終わることもあれば、あまりの辛さにうずくまってしまうことがあったり。とにかく気分の浮き沈みが激しくなってしまう。そのせいでいつもより涙腺が緩くなったり、恋人と喧嘩したり。

———わかる。

私の友人に、生理がはじまると吐き気がするようになったという子がいて。最近はレモンの皮の匂いを嗅いで和らげてるといってた。

———レモンの皮にはリラックス効果があるって聞いたことがある。ハンナさんの生理対策は何かある?

私はイブプロフェン(鎮痛薬)に頼っちゃう。自然由来の治癒法が理想的なんだけどね。

———鎮痛薬は即効性抜群ですからねぇ。

不公平な話だよね、毎月こんな辛い思いをしないといけないなんて。まぁでも、女性は生理と向き合いながら、いつも通り勉強したり、仕事に行ったり、家事をしたりしてるんだから、最高にイケてると思う。

———生理中ってろくなことないけど、そのぶん自分の体と心と向き合ったり乗り越えてたりしていくぶん、しなやかにたくましくなっているはず。

おもたすぎる生理痛について。
「いつもの生理痛かと我慢してたら、盲腸だった」なんてことも。
Period Pains: in body, in brain

作った人: InkAndPaperOriginal(インクアンドペイパーオリジナル)

Image via InkAndPaperOriginal(インクアンドペイパーオリジナル)

月1の激痛に涙を流し、失神した経験もある。重たい生理と毎月つき合う作者の『Period Pains: in body, in brain(ピリオド・ペインズ:イン・ボディー、イン・ブレイン)』は、そんな彼女がスコットランド旅行中に生理の予兆、あまりの痛みに観光を断念し、部屋にこもってベッドの上で書きなぐったジン。

———で、生理だと思って観光を断念したら、実は盲腸だったと?

うん。私の生理痛は、身体的にも精神的にもいつもひどくって、あのときの激痛も「わ、生理きた!」って早合点しちゃった。そしたら実は盲腸で、緊急手術に。

———生理痛と盲腸の激痛を間違えるなんて、よっぽどおもいんですね。

だいぶ。あまりの痛みに電車のなかで失神してしまったり、PMS(月経前症候群)の影響でなぜだか死にたくなってしまったり…。こういった時に壁になるのが「病院で正しいヘルプをしてもらうこと」だと思う。病院に行ってもドクターに真剣に受け止めてもらえないことも多い。「大袈裟だなあ」って。

———え、ひどい。でもたしかに、生理のない人にはなかなか理解しがたい痛みですよね。

説明するとしたら「お腹の中が燃えてるみたいにじりじり痛む。プラス、お腹と背中をナイフでグサグサとなんども刺されている感覚」。

———そんな痛みへの対処法、教えてください。

処方された薬を飲むこと、湯たんぽで身体を温めること、カフェインを飲まないこと。それでもだめなら、床に横たわってひたすら泣く。
10代前半の頃は生理痛で学校を休んだり、ベッドから出れない日もあった。実は年を重ねるごとに、生理痛がひどくなっていて。この先うん十年、まだまだ生理に苦しめられるかと思うとこわい。生理が終わるのを心待ちにしている気持ちもあるんだ。

「“生理中なのをどう隠すか”よりもしたい話」
すべてのジェンダーに贈る
Do-It-Yourself Menstrual Zine!

作った人:Pleasure Pie(プレジャー・パイ)

Image via Pleasure Pie(プレジャー・パイ)

「生理が恥ずかしいものでなくなりますように」という想いが込められたジン『Do-It-Yourself Menstrual Zine!(ドゥー・イット・ユアセルフ・メンスチュアル・ジン!)』。PMSの説明や生理用品の紹介、生理痛のことや生理中のセルフケアなどがDIY感満載に記されている。そしてこれは、生理がくるすべてのジェンダーに向けられたもの。生理のポジティビティ、ここに掲ぐっ!

———2012年から、生理をテーマにブログをやっているんですね。

そうなの。ブログをはじめて3年くらいして、セックスポジティブ(セックスの不のイメージを払拭しようという考え方)やボディ・ポジティブ(ありのままの自分の体を愛そうという考え方)に関するジンを作るアーティスト、ニコール・マズィーオと出会ったのね。ジンなら、さらにたくさんの人に届けられて、繋がれるいい方法なんじゃないかと思って。

———あら偶然!ニコールちゃんのジン『イチモツ自撮りの美学』や『10代の頃の自分に教えたかったセックスのこと』などは、これまでヒープスでも紹介してきました。ブログのみならず、ジン作りへ。

ブログをやっていてよくもらう質問が「生理中であることを隠す方法」なの。たとえば「学校のトイレでタンポンをあける音が聞こえちゃったら恥ずかしい」とか。小学校とかで身体の成長について学ぶと、“生理について話すときは気をつけよう”とも学ぶから、話すには恥ずかしいってイメージがある。だから改めていま、生理について自由に話せるようになればいいなと思うの。

———とくに男性の前で生理の話をするのはタブーみたいになっていたり。

実はそんな簡単なことでもないよね。世の中にはシスジェンダー(自身が認識する性と身体的な性・戸籍の姓が一致している人)だけでなく、トランスジェンダー(自身が認識する性と身体的な性・戸籍の姓が異なる人)、Xジェンダー(男女のいずれか一方に限定しない人)など、自分が生まれ持った性別に疑問を持っている人もいる

———生理のある人=女性、男性=生理がない、ではない。

そう。だから生理の話って、誰とでも(どのジェンダーの人とでも)話せる話題であるべきなんだよね。そういうことを届けたいと思ってる。

———生理あるすべてのジェンダーに向けたアドバイス、生理との上手なつき合い方は?

1、生理中はココロとカラダ両方のセルフケアを入念にすること。不快感やストレスを感じたとしても、自分を追い詰めてはダメ。ネガティブな感情をしっかり受け入れ、気持ちに余裕を持つこと。

2、生理によって起こる身体の変化を記録してみましょう。記録して把握することによって改善できることも多い。生理中は鉄分不足になりがちだから、食事を変えよう、とか。

3、クリエイティブなことに挑戦するのがおすすめ。アーティストやダンサー、作家やミュージシャンじゃなかったとしても、恥ずかしがらずに思いのままに表現するといい。

———生理中は気分の浮き沈みが激しくなりがち。その感情を表現してみるのは、グッドアイデアです。

Eye Catch Image via Hannah Lau-Walker
Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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