さて、できたての「ポイズン(毒)ボトル」を売る新しすぎる土産屋を紹介したところでもう一つ。ブルックリンのゴワナス地区まではるばる来たのなら、その土産やさんから歩いて10分ちょっとの「Gowanus Printing Lab」に行って欲しい。
ここは、“素人さんも歓迎”のシルクスクリーンプリント・スタジオだ。
キャンベル・スープやマリリン・モンローのポートレイトなどを手掛けたアンディ・ウォーホルの代名詞として知られる「シルクスクリーン技法」。Tシャツ制作から商業ポスター制作にまで、アメリカでは日常的に活用されている。特殊な機材を必要とするシルクスクリーン技法なのだが、ここでは「個人で気軽に楽しめる」のだ。
小さなドアから2階に上がると、インクの香りに包まれた巨大なスタジオがお目見え。ゴワナス地区を見渡すことができるこの共有スペースはコミュニティの集いの場でもあり、たくさんのアート作品と大きなソファーが置かれている。
スタジオでは、それぞれのアーティストがTシャツを制作したり、メッシュフレームを洗浄したり、黙々と自身のプロジェクトを進めていたりと過ごし方は多様。
「お金を払ってスタジオを使う人もいれば、ギャラリーや企業から雇われて仕事をしている人もいる。素人からアーティストまでいろんな人が出入りするから楽しい」との声は多い。
オープンは2010年、当時のオーナーや初期スタッフで「がらくただらけで本当に何もなかった」スペースに壁を造り、大規模なコマーシャルプリント装置やコンピューター設備を配置。完成まで4ヶ月を要した。
肉体労働者が多い工場地帯の、エネルギッシュな雰囲気がラボのスタイルに合うという。“いわゆるヒップスター”とはちょっと違う、純粋に「ものづくり」が好きな人々が集まるエリアだ。
以前、ブルックリンのブッシュウィック地区に、同業ともいえる巨大なアートスペース「3rd Ward」があった。D.I.Y.(Do It Yourself)を楽しむ若者から絶大な人気を集めたが、経営不振に陥り惜しまれながら閉館。個人客がメインとなる運営の大変さや、未開発地での運営は、Gowanus Printing Labにとっても悩みの種だ。しかし、シルクスクリーンを専門にし、ギャラリーや大きな商業企業と取引をするなど、マーケットをしぼり特化することで経営を安定させているとのこと。
「アーティストとコミュニティにとって何をすべきか見極めていく、それがすべきこと」とラボの方針は変わらずシンプルを貫いている。
通常、クラスは、5〜10人の少人数制。幅広い知識を持ったスタッフが、素人からプロのニーズに対応してくれる。初心者に人気の入門クラスは3時間で120ドル(約1万4,400円)。
Tシャツへのプリンティングクラスもあり、自分で好きな一枚を持っていって染めることができる。このクラスは80ドル(約9,600円)。また、ポスターのプリンティングクラスもあり、これなら自分だけの「オリジナルポスター」なんてものも作れてしまう。D.I.Y.好きの食指がビクリ(ただし、ちょっとお高めの180ドル!)。
滑りの良いインクから、色落ちが激しく味の出るインク、耐久性のあるインクなど種類も様々。「こんなものを作りたい」とラフ画を持ち込めば、スタッフがアイデアを形にする手伝いをしてくれる。もちろん、「スタジオを見学するだけでもwelcome」とのこと。ひとたび空間に入れば、たちまち制作意欲にかられること間違いなし。
Gowanus Printing Lab
54 2nd Ave.
(between 7th St. and 8th St.)
TEL: 718-788-3930
gowanusprintlab.com
—
Photos by Kuo-Heng Huang
Text by Yoko Sawai edited by HEAPS
—