編集部が選ぶ今月のZINE3冊。テーマは〈僕らの甘露甘露〉マレーシア喫茶店飯、ウクライナほっこり飯、串に刺さったおいしいヤツ

マレーシアのコーヒーショップ「コピティアム」では、マレーシアならではの飲み物や料理を味わうのが醍醐味。だからスタバみたいなコーヒーショップとは、一味も二味も違うらしい。
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2017年、シンガーソングライターのFKAツイッグスが、ジン『アバントガーデン』を発表し、ちょいと話題になった。というのも、インスタグラム上のみでの配信だったから。これまで全5号、「ブラックヘアー」や「ファッション」などテーマに沿った10枚のビジュアルで、彼女ならではの独特な世界観を発信してきた。なかでも印象的だったのが、アニメーションを駆使したストーリー仕立ての第3号。しかも本人の音読付き。動くジンとは、なんとも斬新な発想だ。

ホッチキスで綴じなくなっていい。世界一敷居の低い文芸で、ルールが存在しない世界一自由な文芸「ジン(ZINE)」。今月は「僕らの甘露甘露」がテーマの3冊。甘くておいしいもの、なぜだか妙においしく感じるもの、いい味したおいしいもの—「ああ、甘露(かんろ)」を紹介する。マレーシアのコーヒーショップ「コピティアム」では、スコーンやマフィンではなく、ご飯や麺類のガッツリ飯で腹を満たせるらしいぞ。

***

昔ながらの喫茶店派?いま風の洒落たカフェ派?
マレーシアの古今「コピティアム」を比較
Malaysian Kopitiam Zine

作った人: Jack Yin(ジャック・イェン)


Image via Jack Yin

「コピティアム」とは、マレーシアにあるコーヒーや朝食を提供する店のこと。『Malaysian Kopitiam Zine(マレーシアン・コピティアム・ジン)』では、古き良きコピティアムと現代的なコピティアムをイラストで比較。日本でいうところの、喫茶店とカフェって感じだな。

———そもそも、マレーシアでコーヒー文化ってどれくらい浸透してるんでしょう?

か〜なり浸透してる。みんな、体に血ではなくコーヒーが流れてるんじゃないかってくらいに(笑)。だからね、コピティアムはマレーシアのいたるところにある。

———スタバみたいな感じ?

コピティアムでは、マレーシアならではの飲み物や料理を味わうのが醍醐味。だからスタバみたいなコーヒーショップとは、一味も二味も違う。

———ほう。メニューが知りたい。

飲み物の定番といえば、砂糖とコンデンスミルク入りアイスコーヒー「コピ・ペン」や、同じく砂糖とコンデンスミルク入りアイスミルクティー「テー・ペン」。朝食の定番は、バターとカヤ・ジャム(マレーシアの国民的ジャム)を塗ったトーストに、コショウと醤油で味付けされた半熟卵を添えたセットとか。あとは、マレーシアといえば、なご飯類や麺類なんかも。

———コーヒーショップなのに、ご飯類や麺類までっ。

昔ながらのコピティアムでは、ポーク・ヌードルや腸粉(ちょうふん)といった“マレーシアの中華料理”が主流。で、いま風コピティアムでは、チキン・フォー・ファン(ライスヌードルを使ったスープ)やナシレマッ(ココナッツミルクや薬草で炊いたご飯)などの“マレーシアのハラール料理”が主流。

———結構ガッツリ系だ。スコーンやマフィンじゃないんですね。

いま風コピティアムにはそういったペイストリーもあるけど、昔ながらのコピティアムには、ほぼない。

———ふたつのコピティアムの、メニュー以外での大きな違いって?

昔ながらのコピティアムは、老夫婦が切り盛りしていて家族や老人客で賑わってる印象。一方いま風コピティアムで働く店員は若く、お客も若い会社員なんかが多い。フランチャイズ化されてて、ショッピングモールでよく見る感じだね。僕は、昔ながらのコピティアムの方が、雰囲気があって好き。

———同感です。前にね、お母さんが1人で営む、浅草の(小汚い)喫茶店に入ったんですよ。注文したドリアが格別だったわけじゃないんですけど、雰囲気がよかったもんで、結局リピートしちゃいました。

祖母に習った故郷の味。
ウクライナのほっこり飯
Comfort Food Cookbook Zine

作った人: Arinn Westendorf(アリン・ウェスタンドゥーフ)


Image via Arinn Westendorf

おばあちゃんが作ったおにぎりって、どうしてあんなにおいしいんだろう。と思うのは筆者だけではないはず。「ああ〜、この味。あの時の」とホッと心に染みる、懐かしのおばあちゃんレシピを記録したのが「Comfort Food Cookbook Zine(コンフォート・フード・ジン)」なんです。

———ジンに載ってるレシピは、全部おばあちゃん直伝?

自己流レシピもチラホラあるけど、ほとんどはウクライナ系カナダ人のおばあちゃんに教わったもの。

———一番好きなおばあちゃんの味ってなんでしょう?

ポートランドで食べた、おばあちゃんお手製ピエロギ(東ヨーロッパ流の餃子)。あと、ビーツのピクルスも格別。

———ビーツのピクルスって、あんまり馴染みがないな。どうやって作るんです?

1、同じサイズのビーツを6~8個、丸ごと40~60分くらい、皮が剥けてくるまで茹でる。茹で上がったら冷ます。

2、ピクルスの素:小さじ1.5、砂糖:1カップ、お酢:0.75カップ、水:1.5カップを混ぜる。

3、混ぜ合わせた調味料を瓶に注いで、その中に茹でた野菜を入れる(調味料が余ったら、他の野菜で作るのもグッド!)。

4、蓋を閉めて常温で8~10時間ほど放置。で、完成!

———ちなみにおばあちゃんの味以外で、アリンさんが思わずほっこりしてしまう食べ物ってある?

マカロニチーズとピザ。ザ・アメリカンだよね。炭水化物とチーズの組み合わせが大好きで。

———ジャンキー(笑)そういやレシピには、自己流メキシコ料理もありましたね。

とてつもなくメキシコ料理が食べたいときに考案した「マリー・ミー・タコス(タコス、私と結婚して)」。家にあった食材を適当にトルティーヤに挟んで、仕上げにコーンを散りばめただけの即興レシピ。でも超絶おいしかったよ!

団子、焼き鳥、りんご飴。
“串(棒)に刺さったおいしいもの”
イラスト集『Foods on Sticks

作った人: Kailene Falls(ケイリーン・フォールズ)


Image via Kailene Falls

団子、焼き鳥、りんご飴。イワナ、アイス、胡瓜の一本漬け。言い切ってしましたい、日本は世界に誇る、串(棒)に刺さった料理大国だと。そんな串物に魅せらせたは、アメリカ人のケイリーンちゃん。図書館に通い研究を重ね綴じたのが、ド直球に『Foods on Sticks(串(棒)刺し料理)』。

———どれも食欲をそそる、完成度の高いイラストだ。素人ではないと見た。

4年間、東京のデザイン事務所でデザイナー兼イラストレーターとして勤務したんだけど、昨年からフリーランスとして水彩画で食べ物のイラストを描いてるんだ。なかでも三色団子のイラストが気に入って、それを機に日本の串(棒)刺し料理を研究しだしたんだ。

———全串(棒)刺し料理には、歴史・味の評価・どこで食べられるかなどの説明が、英語と日本語で綴られている。

そうそう。歴史については図書館に通ったり、ネットで記事を読んだりして研究。食べられるお店については、インスタを活用。

———にしても、日本語が達者すぎやしませんか?

在日5年。大学では日本語を専攻してたし、日本に来てからは日本語のみの環境で働いてたおかげかな。ジンの文章も自分で書いたんだけど、翻訳は難しかったから日本人の友人に添削してもらったよ。

———ズバリ、日本の串(棒)刺し料理の魅力を教えてくださいっ。

何といってもその種類の豊富さ!大きくわけて“甘い系”と“しょっぱい系”があるけど、両方とも手軽に食べれて、どこか「昔ながら感」があるところが◎。日本人にとっては馴染み深い食べ物かもしれないけど、私たち外国人にとってはものすごくユニーク。

———ケイリーンちゃんの、思い出深いイラストは?

三色団子とイワナの塩焼き。三色団子は、私の初・水彩画作品だから。イワナの塩焼きは、描き手にとって挑戦的な食べ物だったから。見た目、グロいじゃん?(笑)

———ちなみに私の推しは、ロー◯ンのおでんの具「つぶ貝串」。第2号の参考までに。

Eye Catch Image via
Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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