True Love / Talk No.11 「心傷めるすべての人へ」

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Issue 15 – True Love / Talk No.11 「心傷めるすべての人へ」

真実の愛は、散々な数々の嵐の果てに、待っているのかもしれない。

別れはいつだって、様々な形でやってくる。「今自分が知っている人」が「かつて知っていた人」になっていく、胸がきゅっとする切なさが残る別れ。人生にとてつもない影響を与える、「この人がいなきゃ生きていけない」ほど愛した人との別れ。「別れ」が訪れる理由は、世間にはごまんとある。

「やまない口論」

とにかくひたすら口論をしている。とんでもなく疲れるし、どんどん自尊心をなくしていく。いいことなんかない。

「心身ともに魅力を感じなくなっていく」

恋人があなたを相手にしなくなったら別れ時。誰にだって愛される資格があるのだから、大事にしてくれない相手とつき合っていく必要はない。

「今じゃない」

仕事の都合だったり、辛いことがあったりと、「今ではない」と誰しもが一人になって自分の人生を見つめ直したくなるときはある。いつかまた、必ず誰かと出会うだろうし、もしくは妥協してその関係を続けていくかはあなた次第。

「浮気」

最悪な別れ方。一度信頼を失ったら、また以前のような関係を築くのはすごく難しい。いつでも疑うようになるし、いつまでも責め続ける。私に言わせたらもうこれは話し合いの余地なし。

「遊びのつき合い」

一方は遊びでつき合っていたつもりでも、もう一方は本気になっていた場合。こういった遊びのつき合いでは、とにかく面倒ごとは避けて通ることができる。確かなコミュニケーションや繋がりがなければすぐに消えていく儚い関係。

別れに対しての対処も、「どうでもいいや」を越えた場合に7つのステージがある。

1. 拒絶
2. 怒り
3. 話し合い
4. 絶望
5. 受け入れ
6. 復讐
7. アルコールの大量摂取

 ニューヨーカーは気が変わりやすく、忙しいし、お酒も大好き。破天荒なこの街では、ステージ2の「怒り」が、一番興味深いかもしれない。この街で誰かが怒っているなんてことは日常茶飯事だから、誰もわざわざ気にもとめない。早まって横断歩道に入ってしまった車のボンネットを殴ったり、混雑時のどさくさに紛れて、誰かが呼んだタクシーを乗っとろうとする若者グループに、当の本人であるおばさんが、「くそったれ!」なんて叫んでいたり、そんなのがそこら中にいる。エレベーターのドアを開けてあげられなかっただけで、「このビッチが!」と隣人に罵られる毎日。そんな怒りっぽいニューヨーカーがどうやって「2. 怒り」をやり過ごしているか、想像できる?

6. 憎悪の末の「復讐」劇

 私の初めての彼氏は50回くらい浮気した。もしかしたらもっとかも。とにかくいろんな女と。彼は最悪の中の最悪の男だった。他の女とセックスしながら、私をいかに愛しているか、会いたくてたまらないから家に来てもらえばよかったなど、いけしゃあしゃあと言ってのけるようなクズだった。世の中のシングル男性諸君、シングルなら自由、何をしたって構わない。“穴を持つ”生き物すべてと関係を持つ資格がある。だけど、もしもあなたに特別な誰かがいるなら。あなたはその人といつも一緒なんだって腹をくくって欲しい。

 とんでもなく長い「拒絶」ステージから遂に脱してきちんと事実に向き合ったとき、私はやってのけた。自尊心のある女性なら誰しもがするだろうこと。そう、その“クズ”の親友と寝てやったのだ。ただの親友じゃなく、幼稚園からの幼なじみで、両親同士も「超」仲良し。しかも、共通の友人だらけ。ちょっとお酒を飲めば意思に構わずアソコが勃ち上がるんだから、男と関係を持つのなんて何てことはない。「アソコが勃っちゃうんだから仕方ない」といって浮気しまくる男には、この上ない復讐だったと思う。その親友の「アソコが勃っちゃってた」からセックスしただけに過ぎない。家族ぐるみの友情をぶち壊してまでやった復讐に対して罪悪感を持っているかと聞かれたら、答えはノー。なぜなら、その後、本当にその親友のことを好きになって、結果半年ほどつき合うことになったからだ。なんで別れたかというと、どことなくゲイっぽさを漂わせていた彼と、恋人というより親友のような関係に心地良くなっていたと気がついたから。ちなみに彼は5年後にゲイだとカミングアウト。やっぱり私は正しかった。

 正直、若くて、愚かで、向こう見ずだったと自分自身で思う。でも、誰だって人生にこんなエピソードの一つくらい、持っていてもいいと思う。顧みて、学ぶことができるから。それ以来、私は一度も浮気をしていないし(自分の覚えている限りでは)、されていない。浮気がどれだけの崩壊をもたらすかも、浮気する自分のことをどれだけ軽蔑するかも、学んだからだ。

7.「アルコールの大量摂取」がもたらす、狂気の沙汰

  一番最近の別れは突然にやってきた。突然すぎて、私は「拒絶」ステージすら踏めなかった。本当に、ただただショックだったんだろう。その別れの理由が、もう映画のように劇的で信じ難く、しばらくは何も感じないし、何もしたくなかった。

 先に言っておきたいが、私はテキーラの量をコントロールすることができない。「テキーラが体に与える影響は他のアルコールと大差ない」と研究員たちは言うが、私に言わせればそれは「間違っている」。人生で二回、バスタブで目覚めたことがあるが、どちらもテキーラのせいなのだ。最初のときは5センチ程度の水の中だったが、二回目ときたら狂気の沙汰だった。

 その別れの後、とにかくたくさんの友達と暇さえあればバーに繰り出した。ある日、バーで一人の男が私にテキーラのショットを与え始めた。テキーラは一度目のバスタブで目覚めた経験以来、13年ほど飲んでいなかったが、別れたばかりで自分を失っていたから、「くそったれ!」と威勢良くショットを次々にあけてやった。結果、泥酔。瞬間的ないくつかのシーンを覚えている。とにかくひたすらその男とその時の同僚の女友達と、三人で飲みまくった挙句、三人でヤった。その後は、つまずきながらも自分で家にたどり着いた記憶がある。黒くて長いブーツを履いていたはず。そこで記憶は途絶えていて、翌朝目覚めたら水でいっぱいのバスタブにいた。しかもちゃんと裸で。水はバスタブのふちぎりぎりで、あごのところまできていた。なんでかは聞かないで欲しいが、昏睡状態で無意識の中、朝まで溺れずにいたようだ。

 目覚めた瞬間、とにかく衝撃で、肺が許す限り思いっきり息を吸い込んだ。どうやって裸になって入ったか覚えてないバスタブで目覚めるなんて、想定外すぎる。それからまず、自分の肝臓があるか必死で探した。どこぞのマフィアに薬を飲まされて肝臓をブラックマーケットに売り飛ばされたのかと思ったから。肝臓はちゃんとお腹の中にあった。ひとまず安心したので、タオルを探すことに。しかし、クローゼットの中にもタオルかけにもタオルは見当たらない。仕方ないので探し出せた限りで一番「タオルっぽい」ベッドシーツにひとまずくるまって、よろけながらベッドにたどり着いて、午後1時まで爆睡した。ルームメイトが私の部屋のドアを叩きながら叫んでいる声が聞こえるまで。最悪の二日酔いの中、よろよろと歩いてドアを開けた。

「昨日の夜、一体何があったの?!」

  何のことを言っているのかさっぱりわからない。話を聞くとこうだ。今朝早く、私たちの部屋の下の住人がアパートのドアを壊れんばかりに叩きまくった。「天井から水漏れしている」と。そして、ルームメイトはなぜかびしょ濡れのタオルの山をリビングで見つけたらしい。つまり、バスタブから水が溢れているのを見つけた私は、ありったけのタオルで浴室の水を拭き、タオルをリビングに戻して「またバスタブに戻った」ということだ。まったくなんてこと…。幸いその夜、急性アルコール中毒にならず、バスタブで溺れ死ぬこともなかったので、それだけが救いだ。

 別れの際にどのステージを踏んでいくかはそれぞれだが、一つだけ確かに言えることは、「必ず乗り越えられる」ということだ。失っていくこともあれば、同じように何かを得ていくこともある。それが人生なのだろう。もっとも難しいのは、「受け入れ」のステージだ。でも、そこに一度でもたどり着けたら、あなたはもう大丈夫。そして、自分の人生に関わっていく人やもの、すべてに何かしらの理由があるんだと気づけるはず。それらは何かしらの影響をあなたに与えるだろうし、あなたも与えている。どんなに小さくても。すべてが必然なのだ。バスタブにも溺れずに生きている限りは、いつだって過去を振り返り、「後悔などない」と言える。「間違いだった」と思うことがあっても、それはあなたの人生の教えとなり、さらには人生の彩りとなっていく。

 いつだって私たちにはいくつもの選択がある。そして、正しい道に導く何かがあるのもまた確かだ。その証拠に、私たちは生き延びている。絶対に立ち直り不可能と思うほどの辛い「別れ」でも、どんなに時間がかかっても、結局は乗り越えてきた。人は、自分が思うよりも強い。ただ、嵐が去るのを辛抱強く座って待てばいい。そのとんでもない嵐はいつか、あなたの人生の一部となっていくだろうし、その嵐こそがあなたに、とっておきのことを教え、あなたを変える。変わっていくことは簡単でも心地いいものでもないが、物事の終りが来たならば、いつなのかわからないものの、また幸せが始まると信じていけばいい。山あり谷ありの人生に、乾杯!

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