あの角のカフェがいつの間にかなくなったかと思えば、そちらの角にあら、また一軒新しいのができている。そんなカフェ激戦区のニューヨークだが、どこのご近所にも、ローカルピープルに愛されている居心地のいい「地域密着型カフェ」がある。
舌にあった味とお気に入りの席がきっと見つかるようなネイバーフッド型カフェ。今回は、人の出入りが激しいマンハッタンから少し離れ、地元色の強いクイーンズとブルックリンから4軒、ピックアップしてみた。
深夜まで開いている安心感
The Queens Kickshaw (ザ・クイーンズ・キックショー)
まずは、昨年米有名旅行雑誌の“国内外で最も訪れたい場所”にも選出された注目エリア、クイーンズのアストリアから。
8年前にクイーンズに移り住んできたオーナー夫妻が「ご近所愛」からはじめたコミュニティのためのカフェ、The Queens Kickshaw (ザ・クイーンズ・キックショー)だ。
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© Lauren DeCicca
コミュニティに寄り添ってるなあと感じるのは、その営業時間。平日は朝7時30分から深夜まで、土日は朝9時から午前1時までオープン。これなら、どんなライフスタイルでも立ち寄れる時間帯がある。
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© Lauren DeCicca
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© Lauren DeCicca
メニューもコーヒーやエスプレッソに限らず、ビールやワイン、デザート、マカロニチーズと種類も豊富。ミルクやパン、チョコレートなどの食材はできるだけニューヨーク市内や州近郊など地元から調達しているところも、さすが「ネイバーフッド型」だ。
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© Lauren DeCicca
店のサイズはそれほど大きくはないものの、くつろぐには丁度いい広さで、月に数回フリーライブも開催。
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© Zoran Jelenic
でもなんといっても、夕方を過ぎてもあかりの灯るカフェがご近所にあるという安心感がやっぱりいいのだ。
ナチュラル空間でくつろぎの時間
Devoción(デボシオン)
お次はトレンド・カルチャーの発信地ブルックリンはウィリアムズバーグにあるDevoción(デボシオン)。
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Image via Devoción
コーヒースノッブが多いこのエリアで地元のブルックリナイツも唸らせるのは、ずばりコーヒーの質。コーヒーキングの国コロンビアで摘んだ豆を10日間以内に直送しているというから、新鮮じゃないわけがない。
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Image via Devoción
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Image via Devoción
そんな手間を省かない本格的なコーヒーをかしこまらず、“開放的に”嗜むことができるのが、デボシオン。おおきな天窓に木目調のテーブル、そしてプラントが植えられた壁に包まれて、ナチュラルな光や色とともに特別なコーヒーを啜るのがなんとも乙。
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Image via Devoción
こんなカフェが近所にあったら、毎日通いたくなりますな。
パソコンは家に置いていこう
Strangeways(ストレンジウェイズ)
ブルックリンのブシュウィック。ヒップなレストランやバーが立ち並ぶジェファソン駅周辺にあるのが、カフェ「Strangeways(ストレンジウェイズ)」。オーナーは、ブルックリンのカフェ/ロースター「Oslo(オスロ)」の元マネジャーのコーヒーエキスパートだ。
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Photo by Katharina Poblotzki
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Photo by Katharina Poblotzki
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Photo by Katharina Poblotzki
奥にあるのが、ココナッツにダブルエスプレッソとココナッツミルクを加えた「コーヒーココナッツ」。手前が炭酸水にエスプレッソを合わせた「エスプレッソトニック」。どちらも夏にぴったりの新作ドリンクだ。
3年ほど前にオープンしたカフェ、いまだにWi-Fiがない“アナログ派”。ひとまずパソコンは家に置いて、ふらりと行ってみたくなるご近所感だ。
気さくなオーナーがしてくれるコーヒー話に耳を傾けたり、いつもならパソコンの画面とにらめっこな人でも自然と隣に座るご近所さんと会話が始まる。そんな日常の小さな発見や喜びが見つかりそうなストレンジウェイズ。
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Photo by Katharina Poblotzki
また昨年、地元のロースター「Lofted Coffee(ロフテッド・コーヒー)」と一緒に、コーヒーの飲み比べ会を開催。
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Image via Strangeways
淹れたてのコーヒーの甘味や酸味、苦味、あとに続く余韻などといった味や香りを判断する「カッピング」方法を地元民に無料で伝授するなど、ローカルで作られるコーヒーとコミュニティの距離を近づけようとする姿勢が等身大な一軒だ。
地域民と一緒に作り上げていく
Propeller Coffee (プロペラコーヒー)
「ここが私の居場所」ー故郷カナダからブルックリン・グリーンポイントにたどり着いたオーナーのこの直感で生まれたのが、ちょっと変わった名前のPropeller Coffee(プロペラコーヒー)。
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Photo by Kohei Kawashima
プロペラ、というのもオーナーの母がフライトアテンダントだったことから命名。旅をテーマにした50・60年代の古き良きレトロなアメリカの匂いが漂う店内は、どことなくおじいちゃんの家にいるような落ち着いた気持ちになれる。
「第二の故郷」となった地元グリーンポイントで、少しでも多くの地元民と知り合い、コミュニティーの一部に溶け込んでいきたいオーナーのプロペラ・コーヒー。まさに常連さんとオーナーが互いに支えあうネイバーフッドカフェの原型だ。気さくなスタッフと美味しいコーヒー、そしてもちろんフリーのWiFiで、好きなだけくつろぐことができる。
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Photo by Kohei Kawashima
[nlink url=”https://heapsmag.com/?p=11981″ title=”大都市の地下。19世紀の洞窟トンネルから生まれる「Made In Brooklyn」のチーズ。”]
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Text by HEAPS, Editorial Assistant: Satoru Yoshimura