「女性の美の奴隷」といえば、谷崎潤一郎だろう。
明治後期から、大正、昭和中期を代表する日本の純文学作家で、「尽くすも欺かれ捨てられ、平手打ちをくらって、財産を費やされ」、それでも女性の美に抗えない主人公の多くは谷崎自身がモデルだ。大正ロマンと耽美が香る、彼の物語に生きる女性たちにはある共通点がある。
それは(お察しの通り)、その時代にはあまりに奔放で強烈な個性を放っていたこと。そして、彼女たちは皆美しい着物を纏っていたこと。
谷崎生誕130年を記念して、今回その着物を再現する「谷崎潤一郎文学の着物を見る」展 ~アンティーク着物と挿絵の饗宴~を、東京都文京区の弥生美術館にて開催する。
谷崎が思い描いたその着物たちの手掛かりは、谷崎の文章や、小説のモデルとなった女性の写真だ。
「時代の枠組みにおさまりきらなかった谷崎の強烈な個性を、若い世代にも知っていただきたい」という同美術館の思いから、『細雪』『痴人の愛』『春琴抄』『猫と庄造と二人のをんな』『秘密』などの代表作をはじめとする20話余りの物語を、約30点の着物と約100点の挿絵、谷崎潤一郎自身の写真などを用いて紹介、ビジュアルに訴えかける内容に。
作中の女性たちのモデルやインスピレーション源となった谷崎自身の妻、松子が着ていた斜め格子の着物も展示する。
物語だけではなく、その背景となった大正~昭和初期の風俗についても紹介。
ミステリー仕立ての短編小説『友田と松永の話』でも登場する、当時開花した「カフェー文化」を取り上げ、銘仙(平織りの絹織物)にエプロンをかけた、カフェーの女給さんの姿を再現する。
谷崎愛読者やアンティーク着物の愛好家、はたまた大正ロマン好きが時間を忘れる空間になることは間違いない。さらに詳しくは、Makuakeのページにて。
【展覧会情報】
開催期間:3月31日(木)〜6月26日(日)
所在地:弥生美術館
〒113-0032 東京都文京区弥生2-4-3
TEL:03-3812-0012
開館時間:午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、展示替え期間中
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Text by Risa Akita