民泊新法が施行されて、およそ2年。簡単な手続きで、一般の空き家や空き部屋を個人が合法で民泊を行えるようになった。以来、“ミンパク”という聞き慣れなかった言葉は日常会話のなかに。日本で「我が家も民泊ビジネスをやりたい」と名乗りでた数は、法施行日から約6.7倍(2019年3月)に。着実に増加中だ。しかし、部屋を貸すだけでラクして稼げると思ったら大間違い。宿泊ゲストとのやり取りや鍵の管理、ベッドメイキングからゲストへの現地情報提供と、やることが多いったら。
そこで、“民泊のめんどう”を取っぱらってくれる助っ人が降臨した。部屋を貸したいホストと借りたいゲストの中間で活躍する、新しい役職〈部屋の管理人〉だ。
連絡・鍵渡し・シーツ替え。民泊アプリにいる、ホスト・ゲスト間の“世話係”
「旅行中、どうせなら空き部屋貸して小銭でも稼ぐか」。こう思う人、少なくないんじゃないかな。米国のある調査では、82パーセントの人が「空き部屋の民泊化は、効率の良い稼ぎ方」と回答。業界最大手Airbnb(エアビーアンドビー)の統計(2019年)によると、世界191ヶ国以上で65万人以上がホストとして部屋を貸しだしているという。
たしかに、放ったらかしの空室を有効活用するのは賢い稼ぎ方。しかしだ。信頼できる友人ならまだしも、宿泊するのは赤の他人。プロフィール写真とネット上での数回のやり取りだけで信頼できるか判断するには、正直なところ懸念が残る。それに、それなりの努力だって必要だ。ホストとして低評価に繋がらぬよう、ゲストからの連絡には迅速・丁寧に返信するのが基本のキ。外国人を招く場合は、言語の壁にぶち当たることもめずらしくない。ネットが不安定だと対応が必要だし、ゲストが入れかわるごとにシーツの交換は必須。働いている人は特に、鍵の受け渡しが予定通りにいかないこともあるだろう。ゲストによる行為が近隣トラブルに繋がる可能性もあれば、部屋を汚されたり、持ち物が壊されたりするリスクも(筆者の友人は、なぜか全身鏡を盗まれた)。こうしたトラブル対応や予想外のアクシデントに翻弄されると思うと、空き部屋を貸すことになかなか踏みきれない“ホスト志願者”も多いだろう。
と、ここで、今度はホスト・ゲスト間のめんどうを解決してくれる“世話係”が登場したと聞きつけた。パリ発・旅行スタートアップ「Leavy.co(リービー・ドット・コー)」が開発した民泊アプリは、部屋を貸したいホストと借りたいゲストを繋げるプラットフォーム。ここまでは、エアビーや他の民泊サービスと同様だが…。違いは、ホストとゲストのあいだにゲストをお世話する現地在住のローカル民「ホスト・オンデマンド(“部屋の管理人”)」が介入していること。ホストは空き部屋を貸しに出すだけ。予約が入れば、そのあとのことは全部このローカル民「お部屋の管理人」におまかせ。
部屋管理人は、ゲストとのやり取りや鍵の管理、ベッドメイキングから部屋への案内、ゲストへのローカル情報提供までのすべてを代行してくれる。ゲストたちから寄せられる、街に関する質問に答えるのも彼らの役目だ。ホストがやることといえば、アプリに空き部屋を登録するくらい。部屋の管理人が、煩雑な、しかしゲストにとっては不可欠な世話を請けおってくれるから、ホストはいっさいの手間をかけずに部屋を貸しだせる。旅行するから不在のホストだけではなく「空き部屋を貸したいけど、仕事で日中動けないし、ゲストのお世話ができない!」というホストにも重宝されること間違いなしだ。
また、アプリ内には独自のコインが存在。旅情報共有や写真投稿、友達を招待することで報酬としてコインがあたえられ、
アプリ内にリストされている宿泊場所や飛行機のチケットなどの購入にあてることができる。
ギグエコノミー時代、〈部屋の管理人〉という新しい職
ホストにとっては「自分の地元で部屋を守ってくれる頼れる番人」。ゲストにとっては「お部屋を管理してくれて、新しい街を紹介してくれるアンバサダー」。ホストからもゲストからもありがたく思われる部屋の管理人。彼らはボランティア制…ではなく、きちんと賃金をもらっている(いくらなのかは未公表)。
察するに、部屋の管理人の勤務スケジュールは、基本的にゲストの到着日・出発日にあわせて。トラブルがあった際には駆けつけなければいけない。よって、フルタイムの仕事をしている人は物理的に難しいとみた。アプリを開発したリービー・ドット・コーも「9時5時の仕事をするかわりに、あなたの日々の活動にあわせるように、もっとフレキシブルなスケジュールで働けます」という。旅行者数が右肩上がりの時世に、オンラインを介して単発での仕事を得るギグエコノミー時代のいま。フリーランスやパートタイマーの副業として、新しい職業となる可能性もあったりして。
—————
Eyecatch Image by Midori Hongo
All images via Leavy.co
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine