クラフトビール、クラフトコーヒーに続く、新たな「クラフト」トレンドといえば、ミルク。
ビール、ピザ、ハンバーガーなど幼き、若き頃のコンフォート・フードを「ハイクオリティ」で再現するという方程式があるクラフト・フード。
そのクラフトの最新情報。最近、ヒップスターを中心にアツい視線が注がれているのは、牛乳らしい。
小規模経営で職人が精魂込めて造る、近年流行りのクラフトは、「作り手の顔がみたい」「自分の体に入れるものがどうやって造られているか知りたい」人たちに人気のスタイル。
流行の兆しをみせる「クラフト・ミルク」ブーム前夜を、解剖しちゃいます。
Rebecca Siegel
街にミルクマンが戻ってきた!
先月英テレグラフ紙が報じたニュースでは、なにやらロンドンではいま、地元の牛乳屋さんが忙しくなってきているらしい。
イーストロンドンのミルクマン(牛乳配達)によるとここ最近で瓶牛乳の宅配を頼む人が増えているというのだ。お客さんは、ミレニアル世代のヒップスター。「自分の飲むミルクがどこから来ているのか」を知りたがる彼らは、オーガニックミルクや小さな酪農家で作られたミルクの宅配サービスに興味を示した。
従来の“牛乳”に加え、豆乳やアーモンドミルク、ライスミルク、ヘーゼルナッツミルクなど“non dairy milk(ミルク乳製品でないミルク)”(「牛乳がダメな人でも大丈夫」なミルク)も取り揃え、ヘルスコンシャスなヒップスターの需要にぴったりと当てはまった選択肢を用意していることが特徴だ。
Meg Nicol
イギリスの酪農サプライチェーン事業団体「Dairy UK」の調べによると、今年は牛乳のドアステップデリバリー(宅配)数がここ20年で初めて増えると予想されている。また閉業間近であったあるロンドン郊外の牛乳屋さんは、新しいお客が最近増えてきたことで営業を再開したそうだ。
またここニューヨークでも人気なのが、小さな牛乳宅配サービス会社「Manhattan Milk(マンハッタンミルク)」。近隣のコネチカット州の農家で搾れた“グラスフェッド(grass-fed。牧草飼育された乳牛から搾れた)ミルク”を、青い制服を着た爽やかなお兄さんたちが青いかごに入れ担いで、自宅の軒先まで届けてくれるのだ。
SNSでも牛乳エンジョイ・ポスト
ときに中身よりも外見やスタイルにもこだわりたいヒップスターたち。それはミルクでも同じで、彼らは“ビン”のミルクであることにこだわる。
昨今のレコードブーム然り、カセットテープリバイバル然り、理由はずばり「レトロだから」。牛乳瓶を懐かしく思うのは、万国共通だ。
そしてさすがSNS世代の彼ら、自宅の玄関先にミルクマンが届けてくれた牛乳瓶をスマホでパシャり、インスタグラムでその一枚をシェアする。「ドアに届く新鮮な牛乳と迎える朝」や「シンプルな地産地消スタイル、いいね」といったコメントも忘れずに。
Craig Clark
マイクロ・ブリュワリー(醸造)ならぬマイクロ・デイリー(酪農)
クラフトビールが生まれる“小規模なビール工房”、「マイクロブリュワリー」。大きなスペースを取らないことから、都心でもビールを手造りでき、人々は都会で造られる“地元の味”を楽しむことができるようになった。
そんなマイクロブリュワリーに倣ってウィスコンシン州のとある酪農家は、自らのことを「マイクロデイリー(酪農場)」と呼ぶ。彼らをはじめとするマイクロデイリーは、自らの手で牛乳をビン詰めし、消費者に直接売ることができるライセンスを持っている。
「1871 Dairy」という乳製品ブランドを持つこの酪農家は、オーガニックミルクの製造オペレーションの拠点を地方にある農場ではなく、近隣の都市シカゴに近々移したいと目論む。そしてシカゴの街中を自転車で周り、牛乳配達することも考えているみたいだ。
そんなミルク人気を裏付けるかのように、ナチュラル・オーガニック志向の人御用達の米スーパーマーケットチェーン「Whole Foods(ホールフーズ)」は今年グラスフェッドミルクの売れ行きが上がると予想している。
近年のオーガニックブームに加え、ミレニアル世代のヒップスターによるレトロブーム。
小学校の給食以来ご無沙汰な「牛乳瓶」に入ったオーガニックなグラスフェッドミルクが「クラフト・ミルク」として「クラフト」の新顔になるのも時間の問題だ。
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Text by Risa Akita