情報も経験も、写真もオフィスもなんでもシェアしたがるザ・ミレニアルズ。じゃあ、住まいもシェアしたいって言っても、そう驚くことはないだろう。
自分だけの個室はあって、少人数でリビングルームやキッチン、バスルームを共用する「シェアハウス」という住み方は日本でもだいぶ浸透してきた。が、いま欧米では「アパート丸ごとシェア」の、大人数・大規模共同生活スタイルが「co-living(コリビング)」として注目を集めている。
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プライバシーはあるの? 帰宅してまで他の住人と交流しなきゃいけないなんてストレスじゃない? と決めるのはまだ早いかも。
今回紹介するロンドンとニューヨークの最新コリビングスペースはこれだ。
ロンドンのヤングプロフェッショナルは、賢くこう住む
今年5月、ウエストロンドンのウィルスデン地区に11階建ての大きな総合住宅が登場した。
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市内でもカムデンやノッティングヒル、ハイドパークなどの地区にシェアアパートを展開する英不動産会社「The Collective(ザ・コレクティブ)」が開発した「The Collective Old Oak(ザ・コレクティブ・オールド・オーク)」という名のアパート。
部屋数550室を誇る、世界最大級のコリビング・スペースだ。
ターゲット層はずばり21歳から35歳の“働く独身ミレニアルズ”。
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この部屋のほとんどは、「Twodio(トゥーディオ)」と呼ばれる部屋プランであるのが特徴。「Studio(スタジオ。欧米ではワンルームのこと)」をもじった名称、どんなものかというと6畳ほどの個室に専用のバスルームがあり、一続きになったもう一つの個室の住人とキッチンをシェアする形だ。
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他には、バスルームもキッチンもプライベート仕様のワンルームやリビングもプライベートなワンベッドルームなどの部屋プランがある。
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各階には30から70人が住んでおり、大きなキッチンやダイニングテーブル、ラウンジなどを共用。
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家賃はトゥーディオで月1,000ポンド(約13万8,000円)と高めだが、ロンドン市街地の1ベッドルームの家賃平均がおよそ月1,670ポンド(約23万円)であること、しかも1,000ポンドには、ガス・水道・電気の光熱費と固定資産税、さらにネット代(WiFi)も含まれていると聞けば納得の値段かも?
一人でアパートを借りたらすべて自分でやらなければならない光熱費やケーブルの契約をする手間も省けるし、ベッドも机などの家具付きだから今日からスーツケース1個でお引越し、なんてのも可能なのだ。
かゆいところに手が届いた環境づくり
そして面倒くさがりなミレニアルズに嬉しいのが、2週間に1度入るお掃除サービス。仕事に交友に忙しく、掃除をついついやることリストの後ろに回しがちな人も、清潔で気持ち良い空間で過ごせる。
またシーツ交換サービスや24時間セキュリティガード常駐、フルタイムのコミュニティーマネージャーに困った時には相談できたりと至れり尽くせり。
ミニシアターやスポーツバー、ジムにスパ、図書館にゲームルーム、屋上にはテラスだってある。
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共同スペースではバーベキューや映画上映会、ネットワーキングイベントなど、他の住人と友だちになる機会が常備されている。
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みんなの悩みの種、お洗濯もラク。建物内にランドリー室があるため、わざわざ重い洗濯カゴをコインランドリーまで担いでいく手間ともおさらば。
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契約期間は9ヶ月から12ヶ月、と長期滞在向けだが、初期費用としてお財布に痛いデポジット(敷金。通常1ヶ月分の家賃を入居時に払い、退去時に返却される保証金のようなもの)の支払いも無用。
学生寮をよりプライバシー重視にし、サービスもつけ、デザインも洗練したアップグレード版といったところか。
これなら、自分のプライベートな部屋は欲しいけど、一人暮らしは味気ないという価値観にはちょうどいい住まいだろう。
コーヒーもヨガクラスもタダ? ニューヨーカーたちの共同生活
場所は変わってニューヨーク。ロンドンに負けず劣らず家賃も人口密度も高い大都市に生きるミレニアルズの共同住まい事情はどうだろう。
近年ではマンハッタンより家賃が高い物件も多くなってきたブルックリンで立ち上がったのが、コリビングスタートアップの「Common(コモン)」。
現在、ブルックリンのクラウンハイツに2軒、ウィリアムズバーグに1軒のシェアアパートメントを展開。昨年10月にオープンしてから5,000人以上の応募が殺到している、かなり人気のアパートだ。
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一番小さな物件では19の、大きな物件では51の完全個室のベッドルームがあり、2人で1つのバスルームを、3人から4人でキッチンをシェアする造りになっている。
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ロンドンの大型物件に比べると、アットホームでこじんまりとした空間、といった雰囲気のコリビングスペース。特にクラウンハイツの物件は、ブルックリン独特の伝統的なレンガ造りのブラウンストーンなのだとか。
最安家賃は月$1,340(約13万6,000円)で、光熱費、ネット代、毎週のお掃除、トイレットペーパーやキッチンペーパーなどの消耗品も含まれている。
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そしてコーヒーやお茶は飲み放題。2ドル、3ドルでも毎日だと出費もかさむ朝のコーヒー代も浮く。
また建物内にあるフィットネスルームではヨガ、ピラティス、メディテーションクラスも実施。わざわざ外のクラスに申し込んで高い月謝を払って…なんて無用だ。
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コモンスペースでは日曜日のポトラック(持ち寄り)パーティーや読書会なども開催、アパート全体が一つのコミュニティとして交流する。
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そしてなにより嬉しいのが、アパートをしっかり管理してくれるスタッフたち。コモンのスタッフでアパートにも居住しているホームリーダーの他に、メンテナンスを担当するプロパティマネージャーも生活をしっかりサポート。通常のアパートだとメンテナンスは管理会社が仲介していることが多くトラブルがあっても対応が遅いこともあったり…。そんな気苦労もなし。
住人たちは、チャットアプリ「Slack(スラック)」を使って、住人同士で「お砂糖誰か貸してくれる?」といったお願いごとから、リーダーに生活面でのトラブル相談までコミュニケーションも楽に。
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今年末までにコモンは、サンフランシスコとワシントンD.C.にも新たなコリビングスペースを建設予定だ。
またニューヨークを拠点に、全米、ヨーロッパ、アジアなど世界30都市に109のコワーキングスペース(シェアオフィス)を展開するスタートアップ「WeWork(ウィーワーク)」も今年から、コリビングアパートメントの「WeLive(ウィーリブ)」をウォール街にオープン。
20階建てビルディングの一部を部屋にリノベーションし、いま80人のウィーワークメンバーと従業員が試験的に住んでいる。
ここでもコーヒーやお茶、そしてビール(!)が飲み放題だったり、フィットネスルームでのヨガクラスやバレエ(ピラティスとヨガとダンスの要素を取り入れたエクササイズ)クラスなどが無料。コリビングムーブメント、着実に全米に侵攻中だ。
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疲れて帰ってきて一人になりたいのに、また人と交流しなきゃいけないのか…なんて一昔前の世代の気苦労も、シェアというものにハードルを感じないミレニアルズにとってはどこ吹く風。SNSでつぶやく「ナウ」が隣の人につぶやくのに変わるだけだ。今回は、同じシェア住まいでも大規模であるというのにやはり注目したい。SNSでの発信が気軽なのは、不特定多数・つまりは大多数に向けてであるからというように、特定の人と近い距離で住み続けるシェアハウスと違って、それこそちょうどいい距離感を保てるのがこの大規模住まいなのではないか。
いつでも何かをシェアしたいけど、ちょうどいい距離がいい。そんな彼らにとっては、大規模シェアは魅力的な住まいかもしれない。
[nlink url=”https://heapsmag.com/?p=10632″ title=”アメリカの「ゆとり」「さとり」はSNSでここまで“自分たち世代”をこきおろす!若者による、若者風刺 「Millennials of New York(ミレニアルズ・オブ・ニューヨーク)」”]
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Text by Risa Akita