Back to the Beach。毎夏、僕と君の特別で秘密の場所。

Share
Tweet

僕と君の毎夏。ひと夏の恋のように消えていくギャラリー「Topless」

_DSC7741_flat

サンセット、おしり、サーファー、ビキニ、こんがり焼けた小麦肌、熱しやすくも淡く脆い恋。もう肌寒い冬のはじまりに少し憂鬱になって、恋しくなってくるのはあの夏のこと。そうだ、夏といえばビーチ。New Yorkerのマイ・ビーチといえば、Rockaway Beach(ロカウェイ・ビーチ)だろう。その真っ青で賑やかなビーチからふと街に足を進めていくとたどり着くのは、壊れて空っぽの建物があちこちにある場所。そこには、夏の日差しとともに現れて、夏の終わりとともに消えていくギャラリーがあった。夏が過ぎればもうそこには行けない。「Topless」、ひと夏の恋のようにロマンティックな秘密の場所だ。

半壊と“ひと夏”の、トップレス

 未だなお半数以上の建物が空っぽのままに残る区がある、ロカウェイ・ビーチ。3年前、ニューヨークを直撃した巨大ハリケーン「サンディ」により、JFK国際空港も目と鼻の先、ビーチの点在するここロカウェイ半島は大打撃を受けた。ハリケーンによる倒壊被害に加えとて、潮による浸水被害がひどく一階はすべて浸水。当然、そこで営まれる店は撤退を余儀なくされ、多くのビジネスがロカウェイから遠ざかってしまった。

shutterstock_119470483 (1)

 そこの空っぽの建物を一つ選んでギャラリーへと変えるのが「Topless(トップレス)」だ。毎夏、手を変え場所を変え。2年前の初となる「Season 1」で使用したのはハリケーンサンディ以前は、落ちぶれた歯科医院だったそうだ。「Season 2」では7年もの間、内装工事もされずそのまま残っていたスペースをギャラリーへと変貌させた。安易にスタンダードな“White-cube(全面が白)”の “ザ・ギャラリー”というものを想像するのはお門違い。残骸の木材や釘は変なところから飛び出し、浸水の際の水位を物語る無数の痕はそのまま残っている。トップレスのように、“むき出し”の様を「このスペースが歴史によって彩られた証。とっても美しく、それこそがここを唯一の場所にしているんだよ」と話すのは、Brent(ブレント)で、このギャラリーをはじめた人物の一人。

_DSC7785_flat

 彼と出会ったのは、取材日の昨夜のお酒が抜けぬ日曜の昼さがり。ゆっくり歩きながらロカウェイ・ビーチへと降り立つと突然、歩道に横付けしてきた一台の車。挨拶もままならず言われるままに車へと飛び乗り、まるで西海岸を想起させるようなサイケデリックなBGMと共に砂浜が広がるビーチへと向かう。車の中でやっと、彼らと言葉を交わした。“彼ら”とは、前述のブレントこと、Brent Birnbaum(ブレント・バーンバウム)とToplessを運営するもう一人、Jenni Crain(ジェ二・クレイン)だ。

「Topless」というプロジェクトを始めたのは2年前の夏。意気投合した二人だが、それぞれのバックグラウンドに共通点はあまりない。ジェ二はというと、マンハッタンはローワー・イーストサイド、90年代のストリートアートムーブメントの聖地であったその街で、若くしてギャラリーオーナーとして働いていた。一方、ブレントはダラスに生まれ各都市を転々とし、2004年にロカウェイに“不時着”。様相はまるでヒッピー、サーフィンをこよなく愛する男だ。生まれも育った環境も全く別の二人がやることに意味があるのだとジェ二は言う。

_DSC7783_flat

「Topless galleryは私たちの情熱そのもの。そして、まるで生き物のように変わり続けていく。というのも、私たちの純粋な好奇心で溢れているから、毎夏住みかを変え、新たなスペースとして生まれ変わるの。とってもユニークでしょ。だからこそロカウェイ・コミュニティにおいても“たったひとつ”であり続けることが出来る」と。
ロカウェイ・ビーチの海開きとともに騒がしい夏を2度過ごし、1シーズン3ヶ月の期間で総勢26名ものアーティストをフィーチャーした。そのアーティストたちはもとより、Toplessを訪れる人、地元の人々を温かな気持ちで迎え、その喜びを分かち合うコミュニティを作り上げた。

View 1 Anna Glantz Anna Glantz: Horse in the Road by Anna Glantz at Topless (Season 2)

View 3 Anna Glantz Anna Glantz: Horse in the Road by Anna Glantz at Topless (Season 2)

View 1 Quite Fairly Ratherのコピー Quite Fairly Rather: Quite Fairly Rather, with works by Lauren Clay, Carey Denniston, Hanne Lippard at Topless (Season 2)

View 1 Sam Davis Sam Davis: 0.5 Mommy Man by Sam Davis at Topless (Season 2)

View 2 Sam Davis Sam Davis: 0.5 Mommy Man by Sam Davis at Topless (Season 2)

View 22 Timbuktu Timbuktu: Timbuktu, with works by Colby Bird, Hector M. Flores, Anthony Iacono, Annette Kelm, and Ralph Pugay at Topless (Season 2)

 彼らには、自分たちがギャラリーとして作り上げたスペースを、また新たな空間として利用してほしいとの願いもあるseason1のギャラリースペースは、夏の終わりと共にヴィンテージショップと姿を変え、season2でのスペースはレストランへと遷移された。
「Toplessをロカウェイでやること、ロカウェイのコミュニティの一部として存在すること。それはロカウェイ・コミュニティに支えられているからこそ」と二人は話す。

空虚と興隆、相反する二つのものが隣り合わせに立ち並ぶ街の雰囲気は異様で美しい。マンハッタンにはない景色がそこには広がっている。
「なぜtoplessをやり続けるの」と聞けば、「ただ楽しいからよ」。そう笑顔で答える彼らは、ロカウェイ・ビーチから差し込む冬のはじまりの日差しに照らされて、潔くきれいだ。

_DSC7824_flat


Photographer: Adam Kremer
Text: Shimpei Nakagawa, Edited by HEAPS

Share
Tweet
default
 
 
 
 
 

Latest

All articles loaded
No more articles to load