女性のための、女性によるチョコレート
「チョコレートって、女性が愛して止まないtreat(ご褒美)でしょ? なのに『男性ばかりが提供側にいる』ってこと、知ってた?」
まったく気にしたことはなかったが、確かに、ニューヨークで人気のブランド、Fine & Raw(ファイン・アンド・ロウ)、Mast Brothers(マスト・ブラザーズ)、2年ほど前に年日本にも上陸したMax Brenner(マックス・ブレナー、これはイスラエル発だが)すべて男性によるものだ。
「ニューヨークでは(多分)初の女性によるチョコレートよ」と、Haute Chocolate(オート・チョコレート)ブランドの創始者であり作り手の、Beryl Fine(ベリル・ファイン)。
チョコレートを作る女性はいたし、もちろんいまもいるだろうけど、オフィシャルなブランドでここまで女性をアピールしたものはこれまでにないと思うわ、とプロダクトを見せてくれた。
フレーバーは、セミ・スイートのスタンダードから、トーステッド・アーモンド、エスプレッソ、シナモン・チトポトレとユニークに揃う。
タグラインは#virtuoushedonism、“高潔な享楽”。「食べたあとの脂肪について」なんて余計なことを考えずに、思う存分チョコレートに浸ってほしい。
それを叶えるため、材料はすべてオーガニック、ビーガン。白砂糖ではなく、摂取自体が体に良いとされる「ココナッツ・メープル・シュガー」を使用。さらに丸々一枚チョコレートを食べ切っても、含有量は13gのみだ。
薄いスクエア型のもある。非常に可愛い。
「女性をあんなに気分をよくしてくれる食べ物ってないじゃない?まさに、食べる快楽なの、チョコレコートって。女性の気持ちと好みはやっぱり女性が一番知ってるでしょ」。始動から半年にして、女性のリピーターがかなり多い。
取り扱い店舗はブルックリンを自ら歩いて探していったそうで、あるセレクトショップを“オトした”話をしてくれた。
その日もサンプルを持って訪ね歩いていたのだが、その店では「チョコレートはなるべく食べないようにしてるの。私の店のお客様も食べないと思うから持って返って」と門前払い同様突っ返された。それでベリル、「じゃあ、一応置いてくだけ置いてくから、好きにしてよ」と。
次の日、「誘惑に負けて齧ったんだけど、このチョコレートなら欲しい。持ってきて!」と電話がきたそうだ。
そうやって、誘惑に負け続けてもいい。それが、ベリルによるHaute Chocolateなのだ。
チョコレート・ファクトリーを見てみたい、とちらっと言うと、「自宅のキッチンで作ってるのよ」。しかも、ベリルたったひとりで…。
最初のフレーバーであり定番のセミ・スウィートを生み出すのに、8ヶ月ひたすらキッチンでチョコレートを作り続けたそうだ。恋人に味見をさせまくり(おかげで彼、もうチョコレート見ただけで嫌な顔するわよ)、美と健康に口うるさい友人に配ってフィードバックをもらい、納得のプロダクトにたどり着いた。
テンパリングが最難関で、それだけカリナリー・スクールで学んだそう。
コンセプトは、「サードウェーブ・フェミニズム」から
パッケージはドキッとする女性の写真。セクシーでいて、いやらしくないデザインだ。こういったコンセプトは「サードウェーブ・フェミニズムから」。
サードウェーブ・フェミニズム、つまり第三次フェミニズムは第一、第二ほど確立されておらず、諸説乱立している。が、ベリルの言葉を借りて平たくいえば「女性の独立と女性らしさの同居」だそうだ。
1960-70年代の第二次フェミニズム、つまりセカンドウェーブでは、男性と同等の地位を求めることから「女っぽさ」「女らしさ」は表に出さず(女性っぽさを助長するファッションを排除すべきという主張もあったほど)「社会で男性同様、活躍する強い女性はこうだ!」という一括りの女性像が進行していった。セックス・アピールがあることこそ、社会におけるいわゆる「女性の役割」を助長している、という考えがあったからだ。
Haute Chocolateのパッケージはすべて、元フォトグラファーのベリルが撮影。
それに対して90年代に起こりを見せたサードウェーブは、男にアピールするセクシーさ、女っぽさがありながら、強い女性でいられるはずだ、と考える。独立する強かさのために、社会で活躍するために、女の性を閉じ込めなきゃいけないなんてことはない、ということだそうだ。
このサードウェーブ・フェミニズムでは「自分をフェミニストと公言しない」という人も多い。それも第二次で確立された「女性とは」という一括りに反して、女性であるという自分の存在を愛し尊重するが、「自分らしくいる」ことをもっとも大切にするというのが核心だからだ。
女性らしさは人それぞれ、各個人それぞれが大切にするフェミニズムがある、ということ。
デザインで女性らしさを前面に出し、商品のクオリティを徹底。素材のオーガニック、ビーガンという素朴さとエロティックが共存していて、いい。主婦からキャリアウーマンまで、あらゆる女性のためのチョコレートなの、とベリル。
新しいフレーバー、「Lady Grey(レディ・グレイ)」ともう一種(これはまだ非公開にしてね、とのことなので悪しからず)を控えてさらに多忙な彼女だが、もちろんチョコレートを食べて乗り切る予定だ。
あーあ、でもニューヨークかあ、と思ったみなさん、日本進出ももちろん考えているそうですよ。ベリルさん、「日本からのラブ・コール待ってるわ!」と投げキッスして去って行きましたから。
[nlink url=”https://heapsmag.com/?p=9638″ title=”「バナナ・パンケーキの会」と称して集まるママたち。 実態は「月1のエロ会」”]
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All images Via Beryl Fine
Text by Tetora Poe