いまどき「アンニュイ氷河ガール」

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アンニュイな表情によく合う冷たいブルー、

誰よりもクールに「エコ」を発信するフツーの女の子

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「環境保護活動」と聞いて、何が思い浮かぶだろう。プラカードをもってデモをやる、チャリティーイベントの開催、ゴミ拾いなどボランティア。「一人でも多くの人に環境保護の大切さを伝えたい」。その気持ちはどれも一緒。ただ、「どういった手法を選ぶか」というところに、彼女のセンスが光る。

「別にポップスターじゃなくたって、いまの時代、誰もが発信することや、影響力をもつことができる思う」

 そう話すのは、ロンドン在住、自らを「ビジュアル環境活動家/普通の女の子」と表現する19歳のエリザベス・ファレル。SNSを使って彼女が発信する環境保護活動「Remember The Glaciers(氷河を忘れないで)」からは、どこかメインストリームとは違う“サブカル臭”が漂う。ブロンドの髪をアイスブルーに染め、D.I.Y.な手作りTシャツを纏う。カメラ目線でも、ここ一番の目を見開いた“キメ顔”ではなく、ぼんやり無表情。ときには眉毛もない。絶妙に、アンニュイ。
 彼女と同世代、10-20代が持つデフォルトの感性をカタチにしたら「こうなった」ということか。とにかく、それが「クールでいい感じ」という感覚。だから、刺さる人には、深く刺さる。

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“エコグリーン”はクールじゃない?「私は『青』でうったえる」

 InstagramとTumblrを使って、環境保護を目的とした自主プロジェクト「Remember The Glaciers(氷河を忘れないで)」を行うエリザベス。そのインスピレーションとなったのは、「SNS上でみたフェミニズム運動」だという。

 オンライン上を中心とした“第4の波”といわれる「フェミニズム運動」は、周知の通りより多くの“一般人”を巻き込むことに成功している。また、「過激派の」「狂気的な」といった従来の活動につきまとっていたスティグマを払拭した功績は大きい。

 SNSを使いこなす19歳のエリザベセスも「それまでにも、ソーシャル・ジャスティス(社会正義)指向のポストは何度も見かけたけれど、あんなに影響力のあるものははじめてみました」と、その衝撃を振り返る。彼女は、環境保護活動にも「同じスティグマを感じる」という。環境保護活動、それ自体は大切なことなのに、シーシェパードのような過激派のイメージや「いい人だと思われたいだけでしょ?」という偏見が、同世代の若者が参加することへの足かせになっていると指摘する。では、どう打ち出せば、同世代に響くのか。

「だから私は、あえて定番のエコグリーンではなく『青』で環境保護をうったえることにしました」

 なるほど。それで、髪の毛もアイスブルーなのか。よく見たら、眉毛も消えてるのではなく、アイスブルー。ちなみに、彼女のプロジェクトには、地球温暖化を警告する際にお約束の「シロクマ」もでてこない。いろんな意味で「クール」じゃないか。

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16歳。氷河という自然美に魅了された女子高生

 高校2年生の頃から授業のアートプロジェクトの一貫で、大量消費と資本主義社会、環境問題の関係性を学んできたという。「Remember The Glaciers(氷河を忘れないで)」は、その延長ではじめたそうだ。開始したのは、2014年の6月。同プロジェクトで奨学金を獲得した彼女は、大学入学までのギャップイヤー中にニュージーランドやアイスランドの冷寒地帯を訪問。念願の「氷河」とのご対面も果たした。しかし、なぜ「glaciers(氷河)」だったのか?

「高校での地理学がきっかけ」という。彼女が「地理学」に初めて触れたのは16歳のとき。最初のトピックは冷寒地帯についてだった。「先生が素晴らしかった。地理学を通して教えてくれた“自然の神秘”に私は虜になった」。その中でも最も興味をそそられたのが「氷河」だった。「解けゆく氷河は、私たち人間の生活が、いかに自然をかえりみずエゴイスティックであるかを示す揺るがぬ証拠だから」と。奇しくも、氷河は美しい。人間の虚栄心が、その自然美を破壊しているという事実、「それをビジュアルで表現したくて」と動機を話す。

 彼女の作品の醸す、儚げでいまにも消えてしまいそうな雰囲気。それは、地球規模の温暖化の影響で融解の危機に瀕(ひん)する氷河に、見事に重なる。

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SNSで“同世代に伝える”キーは、D.I.Y.

 ただ、地球の北と南の端っこにしか存在しない「氷河」は、多くの人々にとって、なかなか身近には感じにくい。その距離感を縮めるのに一役かっているのが、廃材や古着をリメイクした洋服や小道具たちだろう。あえての手頃な小洒落感が、「気候変動」というやや堅苦しい響きに親近感を生みしている。さらに、このD.I.Y.感こそが、「同世代のコミュニティとつながるキーポイント」だという。

「作品を通して伝えたいのは、環境保護活動の大切さと、もう一つ、それはたとえお金や権力がなくても、誰もが自分たちのやり方で、いますぐにできるということ。自撮りをSNSに投稿したり、友達や家族と話しあってみるのでもいい。どんな革命も、まずはより多くの人が『気付き、気にかけること』ことから動き出すのだと思います。いまの時代、別にポップスターじゃなくたって、誰もがメッセージを発信して影響力を持つことはできるはず」

 彼女の力強い言葉を、いまの日本に重ねてみた。いま、日本には積極的に安保法案への反対運動に取り組んでいる若者たちがいると聞く。彼らは、既存の抗議デモのスタイル枠にはとどまらず、コールに盛り込むメッセージやプラカードのデザインにこだわり、自分たちが「カッコイイ」と思える感覚を盛り込んでいるそうではないか。

 それに対し、一部の人が「横文字なんか使って気取ってんじゃねー。ダセー」と、くだを巻いているらしいが、このSNS時代に「カッコイイ」の感覚を可視化して何がダメなのか。ダサいかどうかはさておき、同世代のコミュニティを巻き込むことを目的としてやっているのであれば、効果的な方法だと思う。この記事だって、「なんかイイ感じ」な写真に惹かれてクリックした人、少なくないのでは。「そういえば、氷河ってどのくらヤバいの?」。その気づきが、はじめの一歩。

instagram.com/glacier996girl

Writer: chiyo yamauchi

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