1万年前から“秘密裏”で伝わる「開眼修行」へ潜入
第三の目。別名「サードアイ」。眉間に眠るもう一つの「目」を開眼できる修行があるという。この目を開眼すると「世界を見通すことができる」らしい。
「先住民マオリ」たちが多く住むニュージーランド北島で“指圧マッサージ”を受けていた筆者、ひょんなことから「開眼修行」へ潜入し、現代にまで息づく先住民のマオリ世界の深淵をのぞくことに…。
顔を入れ墨に覆われた男からの伝言
筆者は大男の指圧に悶絶していた。ニュージーランド北島にあるマラエ(先住民マオリの集会所、日本でいう寺のような存在)で、マオリの伝統的なマッサージを受けていたのだが、マッサージ師の男は常にピンポイントで凝っている部位を攻めてくる。痛いのだが、体の芯からほぐされていくのがわかる。
「なぜ、わかるのだろう?」。自分からは「こことここを、グッとお願いします」など一言もいっていないのだ。何気なく理由を聞くと、顔全体をトライバルなポリネシアンタトゥーに覆われた男は、何とも怪しげなことを口にした。
「私は第三の目を開眼したからね。君の内面を見ているから、手に取るようにわかるよ」
うん?第三の目?マオリ流ジョークかと思ったが、彼は真顔…。
「マオリ文化にも“第三の目”の概念はあるよ。修行も開かれているぜ。紹介してやろうか?」
久々に手に入れた怪しい情報に心躍った。是非とも紹介してほしい。
にやにや、と口元に意味深な笑みを浮かべながら、紙に主催者のアドレスを書いて渡してくれた。彼の全身からうさんくささが漂うが…。
近所のおばちゃん、ムショ帰り、ヒッピーカップルが集まる修行場
開催場所は、ニュージーランドの北東とだけ記しておこう。というのも、修行の会を開いているくせに、その方法は門外不出らしく、あまり拡散したくはないらしい。納得がいかないが、彼らの意向を汲み取ることにする。
指定されたのは、深閑とした山間にぽつんと建っている、古色を帯びた小さな集会所「マラエ」。早朝7時から始まるというので、霧深い山道を車で走りそこに向かった。どんな修行が行われるのだろうか?とんでもない苦行の可能性もある…。
おそるおそる扉を開けると、中年から初老にかけた先住民マオリの男女10人が談笑しながら、円を描くように設置された机の周りに座っていた。小窓から差す光が、机をぼんやり照らしている。
中心に鎮座しているただ者ではない出で立ちの男が、第三の目の開眼へ導いてくれるマオリシャーマンであるらしい。齢40歳くらいだろうか、褐色の肌にロン毛、トライバルタトゥー、目の鋭さが一際目立つなかなかのハンサム。少々のことでは動じそうにないたたずまいから、会って間もないが思わず「師匠」と呼びたくなる。
参加者は近所に住んでいる普通のおばちゃん、“ムショ帰り”だという男、ヒッピー系カップルなど個性に偏りがない。ふむ、スピリチュアル系マオリなだけあって、みなフレンドリーだ。
第三の目こそ、他人の“不調”を見抜く?
師匠曰く、マオリの第三の目の概念は古から伝わっているものらしい。その力はatua(アトゥア)というマオリの神にデザインされたもの。それを授かった「トフンガ」というシャーマンのような役目の人々が先祖から粛々と受け継いでいっているのだ、と師匠はいう。
第三の目が開くと無意識と意識を繋がれ、潜在能力が解放される。マオリスピリチュアル界では、この世は12の次元に分けられているらしく、各次元にある己と他人の「不調」を見つけることができるようになる、と。
なるほど、だからあのマッサージ師は容易くピンポイントを指圧してみせたのか…。
また、かつてアニミズムを信仰していたマオリは、第三の目を駆使して、月、太陽、火、土地、などとコネクトして受け取ったメッセージをベースに、政も行っていたという。
Whatumanawa is Neutral and All Potentialities Exist Within.ー第三の目は中立だ。可能性のすべてがそこに内在するー
これが開眼のための基本精神となるそうだ。ちょっとわけがわからないが、師匠は続ける。
「きみも第三の目を開けるだろう。私も開いてるし」。うん、と自らの発言に頷きながら、師匠はこちらを真っすぐ見据えていう。が、実際にはもちろん彼の眉間に第三の目は見えない。
修行がやっとはじまったのは、その1時間後だった。
Writer: D.Daizo