True Love / Talk No.6「ビッチ上等」

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Issue 10 – True Love / Talk No.6「ビッチ上等」

TALK N°.6「ビッチ上等」

ここは、ニューヨーク。恋もセックスも、自由だー。そんな誰かの迷言を信じて、今日も女たちにおバカなアプローチを仕掛け続ける男たち。その愛と精気に満ちた挑戦を、ガールズトークの餌食にして楽しむ女たち。だけど本当は、みんな真実の愛を探してる?今夜も街は騒がしい。懲りない男女は、今日もどこかで出逢っている。

彼らのちょっとおかしな恋愛事情、ここに解禁!

 今回は「女」について。私はこれまで「ニューヨークは男にとってパラダイス」だって言ってきたけど、果たして本当にそうなのか。だってニューヨークの女たちはちょっと特別。私の女友達なんかは「あら、思いがけない栄養補給」といった感じで、会ったばかりの男と躊躇なくセックスするだろうし。この街で生き抜くために、もうほとんど「タフガイ」といっていいような精神力を持っているのがニューヨークの女ってもの。仕事場でもプライベートでも、常に。そうでなきゃやっていけない。世界のどの街よりも速いスピードで移り変わるし、どこに行っても必ずクレイジーな人に出くわすのもニューヨーク。この街に引っ越してこようと考えている女性たちに私が贈る最大のアドバイスは「何があっても驚くことなかれ」。「恋人が実は犯罪者だった」とか、「去年よりも家賃が急に1000ドル近くも跳ね上がって急遽クイーンズに引っ越さなきゃ」なんてこと、この街では大いにあり得る。

 フェミニズムの台頭が女性にもたらした恩恵は計り知れない。女とは何かを考えることに伴って「だったら男ってなんなの?」という興味深い問いが発生したのだ。ニューヨークは私がこれまで住んだどの街よりも「ゲイレーダー(ゲイかどうかを見抜く勘)が働かない街」だ。「ニューヨークにはゲイの男性が数え切れない程いる」という周知の事実に加え、「ゲイっぽい」ストレートも同じくらい多い。ただの遊び友達だと思っていた(ゲイレーダーでの判断)男が、私を「デート」に誘ってくると「えっ!これから一緒に買い物して、一緒に男について談義する仲になるんだと思ってたのに!」なんて面食らってしまうことも多々ある。つまり、フェミニズムは女性だけでなく、頭脳明晰でクリエイティブな男性陣にも刺激になって、都会的男性の新たなライフスタイル、メトロセクシャルをも生んだってわけ。そんな男性が増えたからこそ、ビヨンセみたいに「たくましくて強い女性」が街のあちこちにいるという現状には何の不思議もない。

 フェミニズムのおかげで、もともと備わっていた「女という性」を取り戻したわけでもある。どれだけばらまいても底がつきない精子があっていくらだってセックスできる男とは対照的に、女には1ヶ月に1度、たった一つの貴重な卵子しかなかった。でも、解放された女には使い回せる“道具”が二つある。まずは生まれたときから備えているアソコ。そして、満足のためにセックスがしたくて仕方がない男たち。以前、「つき合うには忙しすぎる」男とつき合っていた時期があった。私といえば、「わかってる」というスタンスでいたんだけど、ある週末、いいタイミングで昔の恋人からディナーに誘われてしまった。暇だからもちろん行って、ついつい飲み過ぎてヤってしまった。どういうわけか他の男が私に群がってるときに限って、つき合ってる男はそれを感知したかのように(なんていうか、ペニスは他のペニスの気配を感じとれるっていうか)、求めてくるようにできているらしい。忙しすぎるはずの彼もその時ばかりはなぜだかものすごく私を求めてきたのだ。そうなると、「彼は私をこんなに求めてくれてるのに、自分ときたらタクシーの後ろの座席で他の男とセックスしたなんて!最低!」といった具合に自分がイヤになる。そんな自己嫌悪に陥ることって珍しくない。現に私の友達も同じような状況にいることがある。彼女は何年もつき合ってる恋人に全然構ってもらえてないことに嫌気がさしていた。ある日クラブに遊びに行ってセクシーなラティーノを見つけて「ちょっとだけ」やったらしい。「先っちょだけ」だったのだからセックスにはカウントされないというのが彼女の主張。ここで何が言いたいのかっていうと、ニューヨークの女たちはきちんと気にかけてもらえさえしていれば、恋人にかなり忠実だってこと。つまりは、女性は常に気にかけて欲しいと思ってるというだけ。別にセックスしまくりたいって願望があるわけじゃない。

 もちろん楽しむのだって大好物。ちょうどこの間、友達から聞いた面白い話を少々。私の友達が何人かと連れ立って車でミュージックフェスに行ったときのこと。グループのうちの一人が急にいなくなったので、私の友達は煙草を吸いがてら探しにいったら、バンがギッシギッシ揺れているのを発見。「あー楽しんでるな」となっておしまいってのがよくある話なんだけど、その揺れと共に変な音が聞こえたらしい。耳をすませると、どうやらその友達が、もう腹の底からできる限り声高に「ワフ!ゥワフ!ワフ!ワフ!」と犬のように吠えている…。あまりの衝撃だったので、戻ってきたその友人に一体何があったのか聞いた。彼の“自白”によると、一人の女の子がバーから出てきてその友達にアプローチをかけ、セックスしないかと誘ってきたらしい。そしてその条件は「犬のように吠えないとダメ」だった。これとないセックスのチャンスを絶対に逃したくなかった彼は、どうにかやってのけたのだという。それはもう従順な子犬のように。どっちが犬の格好をして突かれてたのかっていうのが気になるところだけど…。

 それから、セックスが大好きで、まるで野獣のような私の女友達の話。その夜は簡単に餌食を見つけたらしい。でも、その男はとんでもなく酔っていて不快になる程にやかましかった。次第に彼女もイライラしてきたので、その彼にこう言い放った。「もし私と一緒に帰ってセックスしたいなら、隅っこに座って黙って待て」と。そしたら彼は急におとなしくなって、彼女がバーを出る準備が出来るまで一言もしゃべらなかったという。

 男性が女性のために(というよりはセックスのために)、お金を使ったり、男らしく振る舞ってみせたり、時には犬のように吠えてみせるなんてことまで、そんなにバラエティに富んだことができるなんて驚きだ。「男はセックスのこととなると超シンプル思考」ということだろう。彼らは私たち女というビッチを、その献身さから受け入れるというよりは、おっぱいのために受け入れているのだ。おっぱいを手に入れるために、男は女の感情の起伏にも寛大でいなきゃならないし、時々はチョコレートを買って彼女の生理前のイライラにも耐えてあげなきゃならない。でもそれと同時に、女だって男たちのしょうもなさを受け入れなきゃならない。傷つきやすい男という生き物たちが傷つく度、女はケアしてあげているのだ。そうでなければ、人間という生き物は絶滅してしまうだろう。つまるところ、男性、女性のどちらが有利になろうが関係なく、男は女なしじゃだめだし、女も男なしじゃだめってことなのかも。

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