スタバの人魚、マックのアーチを“ちょっと手直し”するデザイナー「地球に40パーセント優しいロゴの作りかた」
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ファストファッションブランドH&Mの古着回収サービスや、スターバックスのマイタンブラー割引サービス。昨今、世界規模で展開する大衆ブランドが環境への取り組みを積極的に行っていることは周知の事実だ。だが、実はブランドの“はじめの一歩”の部分で削減できる無駄遣いがある。紙カップやレジ袋、商品の包み紙…至る場所に印刷されまくるフルでインクを使用した、彼らの顔「ロゴ」だ。

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どうせ捨てられるのに「ロゴにそんなインク使うの?」思い切って40パーセント削減

 赤と黄色のアーチとくれば、マクドナルド。緑と白の人魚はスターバックス、銀のリンゴはアップル。ニューヨークのタイムズスクエアでも東京の駅近でも、ドバイの高級ショッピングモールでもエジプトの道端でも。一瞥で認識できるユニバーサルランゲージ「ブランドロゴ」だが、ロゴのタッチや配色までデザインの細部まで詳細に覚えている自信は…、ない。たとえば、カリフォルニアのある大学が行った実験で100人の生徒にアップルのロゴをなにも見せないで描かせたところ、ほぼ正確に描けたのはたった一人だった、という結果もある。日々至るところで目にするロゴを見ているようで見ていないのだ。

 ならば(?)と人の“目の慣れ”を活用し、インク使用量をどどっと削減。エコロジカル&エコノミカルなロゴにリデザインしたのが、仏デザイナーのシルヴァイン・ボワイエが率いるプロジェクト「Ecobranding(エコブランディング)」だ。具体的なリデザインは以下に見る通り、マクドナルドのアーチやFedEx(米宅配便会社)のアルファベット、ナイキのスウッシュを白抜き。んん、正直、思いのほか違和感は感じない(ナイキファンは許せないかもしれないが)。H&Mは少しカスれたブラシ風の筆跡で「あれ、いつもより薄いような?」感があったが、白と緑が反転したスタバ人魚に至っては違いが見抜けなかった…。間違い探しのように楽しめるリデザインロゴだが、もちろんたんなる遊びではない。あれ、いつもと同じ? ちょっと違う? 程度のリデザインで、インク使用量は10パーセントから最大40パーセントまで削減可能になるというのだ

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「インク代バカにならない」で気づいた“デザイナーの宿命”

「もともとのロゴがもつ視覚的なインパクトや世間からの認識を保ったまま、環境への影響を抑えたブランドロゴです」

既存ロゴにちょっと手を加えて、インクの無駄づかいをなくす。シンプルだがいまだかつてない斬新なアイデアを思いついたきっかけは、「数年前、色をふんだんにつかって娘の誕生報告カードをデザインし印刷屋へ。渡されたレシートを見て、驚愕」。カラーインク代、高すぎ。単純な理由から色を減らしてデザインお直し。「経済的でもっとグリーンな」カードをつくったことで、気づいた。

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いちデザイナーが大企業のためにロゴを作成するということは、そのロゴが数百万、数十億回にわたって繰り返し複製され印字されることになる。環境や経済へのインパクトは計り知れない

 一個のアップル、一人の人魚、一つのアーチのインクが環境に及ぼす影響は取るに足らないかもしれないが、それが何万箱、何億枚にプリントされることになったらワケが違う。インクには、石油系の溶剤として揮発性有機化合物(VOC)が含まれており、これが大気汚染の原因物質だといわれている。デザイナーの生み出す線やフォルム、色づかい一つが、環境への負担を左右する。個人的につくったカードをきっかけに、リデザインの対象が「大衆ブランドロゴ」へ変わった。

スタバの人魚も描き直し。ブランドDNAを引き継ぐリデザイン過程

 はじめてリデザインしたのは「毎日何万回もカップにプリントされる」スターバックスのロゴだった。「たんに緑と白を反転させただけ、と思うかもしれませんが、実際これが一番複雑で難しかったです。白の背景(オリジナルロゴの背景は緑)でも、サイレーン(人魚)がきちんと浮かびあがってくるように、描き直さなければなりませんでしたから」

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 すでに世界中の大衆の脳内に植えつけられたロゴやブランドに対するイメージや認識を壊さずに、エコブランディングが提唱する3つのパフォーマンス(「visual(ヴィジュアル)」「ecological(エコロジカル)」「economical(エコノミカル)」)を同時に実現する。「エコロゴ制作は、けっしてアルゴリズムではありません。人の手や目によるアナログなプロセスです。そのブランドにとってロゴの“色”が重要なのか、“形”、それとも“フォント”が肝なのか。ブランドの“DNA”をきちんと特定し意識したうえで、エコな方向転換にリデザインします

 これまででデザイナー自身が一番好きなエコロゴは、マクドナルド。ヨーロッパのマックはロゴの背景が緑なので、エコロゴにした際に、ロゴの白抜き部分が緑になり草のように見えることから、「環境への取り組みに積極的なマクドナルドの戦略にロゴが呼応し、ロゴだけで“新しいストーリー”を語ることができます」。エコロゴは、環境へのダメージを軽減する以外に「ブランディング戦略」にもなるという。「製品には、“オーガニック”、“リサイクル品”、“サステナブル”といったラベルがありますよね。エコブランディングは、消費者に『我々のブランドはエコフレンドリーですよ』と伝える新たなラベルだと考えてみてください」。メッセージを伝えつつ、さらに前ロゴよりも存在自体が確実に環境に優しいわけだから、ロゴ一つとってここまで一貫性を持てるものもなかなかない。

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 まだ初期段階であるプロジェクト、これからデザインプロセスをもっと発達させていきたいという。エコロゴをデザインした大手ブランドからまだ反応はないらしいが、すでにフランスのリサイクル団体を顧客にし、エコブランディングデザインを手がけた。「最近の流行りはもっぱらフラットデザイン*。将来はトレンドが、フラットデザインから、エコブランディングの理念にかなったエコフレンドリーデザインにシフトしてくれることを願います」。色塗りつぶしの1ミリが環境ダメージへの“もう1ミリ”に繋がる、奥深きデザインと環境の関係だ。

*奥行きや装飾となる影やハイライト、テクスチャなどの詳細を表現しない平らなデザイン。

Interview with Sylvain Boyer of Ecobranding

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All images via Sylvain Boyer
Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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