「砂漠に遺灰。墓は手掘り」葬式まで“体験型”に革命したがるミレニアル葬儀人たちの新・葬式ビジネス

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場合によっていは流行りにのった(だけ)感がいなめない「エコ」「サステナブル」「クラフト」「アルチザナル(職人技の)」「ビスポーク(カスタマイズ)」。“こう謳っとけば世間受けもいいし若者も食いつくだろう”、若者たちは若者たちで“これが時代の主流でしょ”って、ドーナツもビールもクラフト、トーストだってアルチザナル、服も家も村もロゴもサステナブル…のご時世。とうとうこんなものまでそこに加わってしまった。故人を弔う「葬式(フューネラル)」だ。

商業化・形式化した葬式ビジネスを“生き返らせる”「ミレニアル葬儀屋」

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Photo via Mallory Johndrow

 今回は、いろいろと議論のやり場になりそうな「次世代の葬式」と、それからその流れを生み出す「ミレニアルズの葬儀屋」について話そう。近年、米国では若い葬儀屋が台頭し、20世紀の間ずっと変わらなかった従来の葬儀ビジネスやスタイルに変革をもたらそうとしている。「ずっと変わってなかったものに変革」はこの世代のフレーズだが…とうとうこんなところまで来たか。環境に配慮した「グリーン埋葬」や、親族と死者との距離を近づける“体験型葬儀”などがあり、商業主義や形式的なレールで安全走行の葬式スタイルに新しい風を吹かせている、と主張する。うーん、たんにエコ、クラフトブームに便乗しちゃってるんじゃ…?、感が否めない。

 日本は昔から、僧侶を招いての“自宅葬”や遺体に白装束を着せる“納棺の儀”など、故人と近い葬儀を行なっていた国。一方の米国のお葬式については「土葬?ゾンビ?」なイメージかもしれないのでここで少し説明を。

 映画や海外ドラマでもよく見るように、米国の一般的な埋葬法は土葬だ。化学薬品で防腐処理を施した遺体を棺に保管し地下に埋めるスタイルで、過去150年ものあいだ変わっていない。葬式前のプロセスもどこか機械的で「永眠したら、葬儀社を呼ぶ。遺体は引き取られ、次回面会したときは“棺の中で顔にはうっすら化粧、スーツ姿”」。これじゃあ、なんだか無機質で人間味ないじゃない…という話らしい。

 また、父から息子への家業・男性主導の葬儀ビジネス体制にも変化が。全米葬儀社協会によると、現在米国内で葬式学(mortuary science)を選考する生徒の6割は女性と、“女性の葬儀人”が増加傾向にある。と、それら事実があったとしても、この次世代葬儀ムーブメント、クラフトにサステナブルときて、ははん、フェミニズムね、時代のニーズ全クリアかあ、とまだ構えたくなる。

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Photo via Glauco Zuccaccia

親族、手掘りで墓掘り。砂漠に遺灰、教会に愛車を

 にわかブームだと食ってかかっていても仕方がないので、どんな新葬式スタイルが誕生しているのか覗いてみよう。例にあげるのは、次世代葬儀ムーブメントのパイオニア的存在、ロサンゼルスの葬儀屋「Undertaking LA(アンダー・テーキングLA)」。ミレニアル女子ふたりがはじめたスタートアップ葬儀屋で、人呼んで“革新的なフューネラルパーラー”“真新しいタイプの葬儀屋”。彼女たちが提供するプランはこんな感じだ。

1、死後は自分もサステナブル。グリーンなフューネラルを!

人間を土に帰らせ命の循環を促す—真のサステナブル埋葬法が「グリーン埋葬(green burial)」だ。土葬の際、天然の防腐剤で処理し、遺体をお棺に入れないことがポイントオーガニック・無漂白のリネンやコットンで包む、または生分解できる棺桶に入れ、スタートアップと提携している記念公園(砂漠にあるジョシュアツリー国立公園隣)に葬る。

2、体験する葬式。墓手掘り、火葬炉でスイッチはあなたたちでON!

自宅での通夜や納棺の儀があり死後に故人と過ごす時間のある日本と違い、米国では「葬儀屋が運んだら最後、次回の再会はお棺の中」が一般的。そこで、遺体が墓場や火葬場に運ばれる前に2、3日家で故人と過ごす「home funeral(ホームフューネラル)」をコーディネート。親族たちが故人の体を清め、服を着させてあげ、故人と最後の交流を経験する。これまでだとブルトーザーで一気に掘っていた墓場を、親族たちが自ら掘るというプランも用意。さらに、火葬*の場合は、親族たちの手で故人を火葬炉に投入。スイッチONも親族の手でオーケーだ。

*近年の米国では、伝統的な土葬よりも「安いから」と火葬が急増している。

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Photo via Nicola Fioravanti

 一連の“経験”にこだわるこの葬式ムーブメント。墓場で蝶々開放(ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズ追悼コンサートを思いだす)、故人の愛車(ハーレー)を教会正面玄関に鎮座などの演出をする葬儀屋や、故人の好きだったご飯で食事会を仕掛ける葬儀人も。
 日本をみてみると、故人の好きな音楽を流して弔う音楽葬があったり、専用キーで骨壷を保管できるロッカー式のお墓などがすでにあった。比べて一歩進んでいるかも?

「死・葬式=タブー」の除去作業

 エコ、アルチザナルな葬式とは名ばかりじゃないの、と勘ぐっていたが、確かにエコロジカルで経験に重きをおいた内容ではあった(需要がどれほどあるかはわからないが)。“次世代の葬式革命”、背後には「デス・ポジティブムーブメント」という怪しき動きがあるらしい。デス・ポジティブ、つまり死を肯定的に捉えましょう、と。死に肯定的ってやばいんじゃ、と思うかもだが、このマインドセットは「生にポジティブになるため、死に対して怖がらずポジティブでいよう」。死を怖がりすぎたり、タブー視しすぎる(意識しすぎる)ことで、生にネガティブな影響をあたえるのはやめましょう、ということだろう。そこで、葬儀屋も一役買いながら、死や葬式=怖いもの・ネガティブ・タブー、という世間のステレオタイプを壊そうとしている。

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Photo via Annie Spratt

 最近では若い女性葬儀屋や学者、アーティストなどが集うコレクティブ「The Order of the Good Death(訳すとなれば、“善の死からの命令”?)」も形成されている。ブルックリンの「死の博物館」でミートアップし、死に関する個人経験や次世代の埋葬法についてクッキーを頬張りながら談義しているのだとか。うーん、なんとなく数年前からおこったオカルト・魔女ブームの延長、ダークでゴシックなファッションや音楽、ライフスタイル好きなヒップスターの集まり、という気もしてきてしまうのだが…。

 最後までちょっと辛口目線でみてきた、ミレニアルズによる新世代の葬式ムーブメント。数年後には最後を迎え葬られているだろうか、それとも不死鳥のように爛々と燃えたぎっているだろうか。是非、死ぬ前にその顛末を見届けたいと思う。

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Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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